解説: 綾瀬はるかと松坂桃李が共演を果たし、松岡圭祐原作のベストセラーミステリー「万能鑑定士Q」シリーズを映画化した本格ミステリー。「万能鑑定士Qの事件簿IX」を基に、天才的な鑑定眼を持つヒロインが世界的傑作絵画モナ・リザに隠された謎に迫る姿を描く。『ノルウェイの森』『ミツコ感覚』などの初音映莉子や、『くじけないで』などの橋本じゅんらが共演。邦画初となるルーヴル美術館での撮影映像はもとより、衝撃の展開に圧倒される。(シネマトゥデイより)
あらすじ: 名画モナ・リザの40年ぶりとなる再来日が決定し、万能鑑定士Qの店主凜田莉子(綾瀬はるか)が臨時学芸員に抜てきされる。莉子は、彼女の密着取材を続行中の雑誌記者小笠原悠斗(松坂桃李)と共にパリへと赴き、ルーヴル美術館で実施された採用テストに無事パスする。莉子は同様にテストに受かった美沙(初音映莉子)と一緒に特別講義に出席するが……。(シネマトゥデイより)
あまり期待はしていなかったのだが、「万能鑑定士Q」シリーズの初映画化作品なので、一度は見ておかねばと思い、何とか時間を作って見てきた。結論から言えば、やはり今一つだったというしかない。一番の要因は、キャストのイメージがどうしても原作から入った者にとっては違和感がありすぎて馴染むことが出来なかったことだ。綾瀬はるかも松坂桃李も、旬の俳優であるかもしれないが、歳が20代後半の俳優さんでありトウが立ちすぎている。原作では、20歳前半の若い女の子が、抜群の記憶力と論理的な判断でいろんな物を鑑定していくというところに魅力を感じていたわけで、ミスキャストとしか思えない。
一番良かったのは、前半のパリロケのシーンである。凱旋門やオペラ座前、芸術橋、ポンヌフ橋などの美しい映像は、さすが芸術の都パリだと唸らせる。そして、圧巻なのはルーヴル美術館内部にもカメラが入り込み、その広さと収蔵されている美術品の展示状況には目を見張らされた。モナ・リザが展示されているのは、他の作品とは別の特別な場所にあるというのも、いかに特別扱いされている絵画であるというのが良く分かる。パリロケシーンを見て、ものすごくパリに行きたくなったのは事実だ。前からルーヴル美術館には行ってみたいと思っていたが、この映画を見てその思いは、かなり強くなったといえる。
この「モナ・リザの瞳」の件は、万能鑑定士Qシリーズでは9作目に当たり、凜田莉子と小笠原との関係は徐々に深まっていったわけで、本作で初めて出会ったわけではないのだ。映画では、二人が出会って一気にパリまで一緒に行くような展開になっているのが、如何にも唐突という感じが否めない。この作品を映画化するなら、何故高校までは万年学年最下位だった天然の美少女・凜田莉子が、抜群の記憶力と高度な「ロジカル・シンキング(論理的思考)」を駆使し、何でも鑑定できるようになったかといった辺りから映画化して欲しかったものだ。
ストーリーとしては、ほぼ原作通りだといっていいが、日本に戻ってから、モナ・リザが盗難にあって、犯人が捕まるまでの過程が、ちょっと雑であったような気がする。モナ・リザがいとも簡単に盗み出されるのも、どうかと思うし、高層ビルから煙が出ているのもどうかと思えるシーンだ。しかも、警察は莉子頼みで何だか頼りなく、後半はテレビドラマ並の仕上がりであった。また、パリのシーンは、思ったほど少なく物足らなくもあった。やはり、原作を超える映画化作品はめったにない。