石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2011年版解説シリーズ:石油篇(4)

2011-06-22 | その他

 

(注)本稿は「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」の下記URLで一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0187BpOil2011.pdf

 

 

4.世界の石油消費量()

(4) 四大石油消費国(米、中、日、印)の消費量の推移

 2010年の四大石油消費国は米国、中国、日本及びインドである。これら4カ国の1965年以降の消費量の推移には各国の特徴が表われている。

(http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-2-96dOilConsumByBigFour.pdf参照)

世界最大の石油消費国である米国は1970年まで石油の消費が大きく伸びた後、第一次オイルショック(1973)以降緩やかなカーブに転じ、第二次オイルショックを経て1980年代前半は需要がマイナスに落ち込んでいる。しかし1985(1,573B/D)以降再び消費量は大きく増加、2005年には2,080B/Dに達した。その後再び急激に減少し2010年は1,915B/Dであった。

 

日本については1965年の消費量は170B/Dで米国の7分の1に過ぎなかったが、それでもインド(25B/D)、中国(22B/D)など他のアジア・大洋州諸国に比べて際立った石油消費国であった。その後第一次オイルショックまで急成長し1975年には3倍近い490B/Dに膨れ上がった。しかしオイルショックを契機に石油消費の伸びは低くなり、1995年以降は毎年前年割れとなっている。

 

これに対して中国及びインドは一貫して伸びており、特に中国の石油消費量は1990年以降急激に増加、2003年に日本を追い抜き米国に次ぐ世界第二の石油消費国となっている。インドの伸びは中国ほどの勢いはないが、それでも1988年に100B/Dを超すと10年毎に100B/D単位で増加、2010年には332B/Dに達した。この趨勢が続けば今後数年で日本を追い越し世界3位の石油消費国になる勢いである。日本が省エネ技術により石油消費を抑えたのに対し、中国及びインドはエネルギー多消費型の経済開発により高度成長を遂げつつあることが解る。

 

(5)低下する石油自給率及び輸出余力

(図「主要国の消費量と生産量の差」

http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-2-96eOilProdVsConsumpByMajorCountry.pdf

参照)

 石油を多く生産する国の中でも人口が多く一定以上の産業規模を有する国は同時に多くの石油を消費する。例えば米国と中国はそれぞれ世界3位と5位の産油国であるが、米国は1965年以前から既に石油の輸入国であり、中国は1990年代前半に輸入国に転落している。米国の場合2010年は生産量751B/Dに対して消費量1,915B/Dであり、差し引き1,164B/Dの需要超過で石油自給率は39%となる。1965年に78%であった米国の石油自給率は年々低下し1990年代には50%を切り、そして2000年代には40%を割るなどほぼ一貫して低下している。但し同国の自給率は2007年の33%を底に回復しつつあり、2010年は39%にまで上昇していることは注目に値する。

 

中国の場合、1992年までは生産量が消費量を上回り自給率100%であったが、その後純輸入国に転じている。しかも生産と消費の不均衡は年々拡大し、2000年に151B/Dであった需給ギャップは2010年には499B/Dになっている。2000年には63%であった自給率も急速に低下しており、2007年に50%を割り、2010年は45%となっている。

 

サウジアラビア、ロシア、イラン、ブラジルは人口の多い有力産油国であるが、国内消費が少ないため石油の輸出国となっている。但しこれらの国の中には人口の増加、産業の発展、生活の高度化等によりエネルギーの国内消費量が増え、輸出に回す量が減る国が見られる。サウジアラビア、イランなど国内での新油田の発見が難しい伝統的な産油国にその傾向が強く、2005年と2010年を比べた場合、サウジアラビアは輸出余力が911B/Dから719B/Dに縮小、イランも同様に259B/D245B/Dに縮小している。ロシアは需給ギャップを改善している数少ない国であるが、これは同国の産業が石油天然ガス依存体質から脱却できず石油消費が増えないこと、及び外貨獲得のため国内のエネルギーを石油から天然ガスに転換し、石油を優先的に輸出に回しているためと考えられる。

 

このように米国や中国は今後さらに石油の輸入量が増加すると考えられ、またサウジアラビア、イランなども国内消費の増加により輸出量が減少傾向をたどることは避けられないであろう。

 

(続く)

 

以上

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        前田 高行        183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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