石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

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2011-06-29 | 今日のニュース

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BPエネルギー統計レポート2011年版解説シリーズ:天然ガス篇(2)

2011-06-29 | その他

 

(注)本稿は「マイ・ライブラリー(前田高行論稿集)」の下記URLで一括ご覧いただけます。

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0189BpGas2011.pdf

 

 

2.世界の天然ガスの生産量
(1) 地域別・国別生産量
 2010年の世界の天然ガス生産量は3兆1,933億立方メートル(以下㎥)であった。前年はBPが統計を公表した1970年以来初めて生産量が前年を下回ったが、2010年は史上最高の生産量を示した。生産量を地域別でみると欧州・ユーラシアが1兆431億㎥と最も多く全体の33%を占めている。これに次ぐのが北米(8,261億㎥、26%)であり、これら2地域だけで世界の6割に達する。その他の地域はアジア・大洋州4,932億㎥(15%)、中東4,607億㎥(14%)、アフリカ2,090億㎥(7%)、中南米1,612億㎥(5%)であった。(図「地域別天然ガスの年間生産量」http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-94aGasProductionByRegion2010.pdf参照)

 各地域の生産量と埋蔵量(前章参照)を比較すると、中東は埋蔵量では世界の40%を占めているが生産量では14%に過ぎない。これに対し北米は埋蔵量シェアが世界全体の5%にとどまるのに対して、生産量のシェアは26%に達しており、埋蔵量と生産量のギャップが大きい。このことから地域別に見て天然ガスの生産を拡大できるポテンシャルを持っているのは中東であると言えよう。

 次に国別に見ると、天然ガス生産国第1位は米国の6,110億㎥、第2位はロシア(5,889億㎥)であり、この2カ国の生産量が飛び抜けて多い。ロシアは02年以降08年までは米国をしのぐ世界一の天然ガス生産国であったが、09年は前年比12%と大幅に落ち込み米国に首位の座を明け渡し今年も僅差ではあるが米国が第1位である(詳しくは下記3項参照)。米国はここ数年シェールガスの開発及び生産が顕著であり、生産量とともに埋蔵量も大幅に増加している(前章「天然ガスの埋蔵量」参照)。

この2カ国に続くのがカナダ(1,598億㎥)、イラン(1,385億㎥)、カタール(1,167億㎥)である。特にカタールはLNGプラントの相次ぐ完成により前年の893億㎥から一挙に1千億㎥台に増加している。6位から10位にはノルウェー(1,064億㎥)、中国(968億㎥)、サウジアラビア(839億億㎥)、インドネシア(820億㎥)及びアルジェリア(804億㎥)が名を連ねている。(表「国別天然ガス生産量ベスト20」http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/1-D-3-94GasProductionByCountry2010.pdf  参照)
 
(2) 地域別生産量の推移(1970~2010年)
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-94cGasProductionByRegion1970-2010.pdf 参照)
 1970年に1兆㎥を超えた天然ガスの生産量はその後2008年まで毎年前年を上回り、2008年には3倍の3兆㎥を超えた。2009年は史上初めて対前年比マイナスとなったが、2010年は史上最高の3兆2千億㎥弱を記録した。石油の場合は第二次オイルショック後に需要が前年を下回り続けオイルショック前の水準に戻るまで10年以上の歳月を要している(前章石油篇「生産量推移」参照)。これに対して天然ガスは一昨年初めて前年を下回ったことを除けば一貫して生産が増加しており、石油と大きく異なっている。

 地域毎の生産量の推移にはいくつかの大きな特徴が見られる。1970年の世界の天然ガス生産は北米と欧州・ユーラシアの二つの地域で全世界の94%を占めており、残る6%をアジア・大洋州、中東、中南米及びアフリカで分け合っていた。1970年に6,630億㎥であった北米の生産量はその後微増にとどまり、世界に占めるシェアも66%(1970年)から26%(2010年)に低下している。欧州・ユーラシア地域の生産量は1970年の2,819億㎥から急速に伸び、1982年には北米を追い抜き、1980年代後半には全世界の生産量の半分を占めるまでになった。しかし同地域の生産量も90年代以降伸び悩んでおり、2010年の世界シェアは33%にとどまっている。
 
 一方、1970年には生産量200億㎥以下でシェアがわずか2%しかなかったアジア・大洋州或いは中東は、90年以降生産量が急速に増大しており、特にここ数年加速された感がある。その理由としては生活水準の向上により発電用或いは家庭用燃料としての天然ガスの地域内の需要が増加したことに加え、これまで先進外国市場から遠いため困難であった輸出が、近年では液化天然ガス(LNG)として市場を拡大しつつあることをあげることができる。

世界的にみると天然ガスの対前年増加率は3~4%前後と石油生産の伸び率を上回っており、石油から天然ガスへのシフトが進んでいる。天然ガスは石油よりもCO2の排出量が少なく地球温暖化対策に適うものと言えよう。この点では今後々クリーンエネルギーである原子力或いは再生エネルギーとの競合が厳しくなると考えられる。但し原子力は福島原発事故問題を抱え、再生エネルギーもコストと安定供給が弱点である。天然ガスの将来がどのようになるか注視する必要がある。

(3) 生産量が増加している国、減少している国(2000~2010年)
 2000年以降の世界全体の天然ガス生産量は漸増傾向を示しているが、その中には生産量が顕著に増加或いは減少している国がある。ここでは二大生産国である米国及びロシアに加えカタール、英国、カザフスタンの5カ国について過去10年間の生産量の推移を見てみよう。(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-3-94bNaturalGasProdByMajorCountry2000-10.pdf 参照)
 
 2000年の米国とロシアの生産量は前者が5,432億㎥、後者が5,285㎥で拮抗していた。その後、米国の生産量は漸減し、一方ロシアは漸増した結果、2002年にはついにロシアが米国を追い抜き世界一の天然ガス生産国となった。両者の差は次第に広がり2006年の生産量はロシアが5,952億㎥、米国は5,240億㎥となった。しかし米国の生産量は2005年を底として上昇傾向に転じ、2009年には再び世界一の生産国となった。2010年の生産量は6,110億㎥ に達し2005年の1.2倍に増加している。2005年以降の米国の生産量が急速に増加したのはシェールガスの生産が商業ベースに乗ったことが大きな理由である。これに対してロシアは新しいガス田の開発により生産量を着実に伸ばしている。その背景には主要な需要家である西ヨーロッパ諸国の消費が年々増えていることがあげられる。しかし2008年のリーマンショックで西ヨーロッパ諸国の景気が冷え込むと2009年のロシアの生産量は前年比13%と大幅な減少となった。ロシアの天然ガスはパイプラインで西ヨーロッパに送られており、備蓄が効かないパイプライン輸送は末端の需要に左右されやすいと言える。一方需要側の西ヨーロッパ諸国にとってはエネルギー安全保障の観点からロシア依存の脱却及び調達ルートの多角化が喫緊の課題となっている。

 北海の天然ガス生産も先細りであり、西ヨーロッパ諸国はユーラシア大陸を横断する新たなパイプラインを敷設してロシア以外の中央アジア諸国から天然ガスを輸入することを模索し、或いは中東からの液化天然ガス(LNG)の輸入に踏み切ろうとしている。2000年に1,084億㎥であった英国の天然ガス生産量は2010年には半減しており(571億㎥)、同国はLNG受け入れ基地を建設しカタールから輸入を開始した。

カタールは英国の他にも新たなLNG顧客を熱心に開拓しており、昨年末には年間生産能力7,700万トン体制を築いた。こうして同国の生産量は2000年の237億㎥から2006年には507億㎥、そして2010年には1,167億㎥に急増している。また中央アジアのカザフスタンも2010年の生産量は336億㎥に達し、10年前の3倍以上となっている。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642
   E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

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