石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(論評)石油・天然ガスの確保で孤独な戦いを強いられる日本(2)

2012-10-29 | その他

 

(注)本レポートは「マイライブラリー(前田高行論稿集)で一括ご覧いただけます。

 

http://members3.jcom.home.ne.jp/3632asdm/0249OilGasSupplyInJapan.pdf

 

 

2.消費量は世界第4位でも自給率がほぼゼロの日本
(1)石油と天然ガスの合計消費量は米国、中国、ロシアに次ぐ世界第4位
 日本の石油消費量は日量換算で442万B/D、天然ガスの消費量は年間1,055億立法メートルである(BP統計2012年版による。以下データは特に断りの無い場合以外は全てBP統計による)。これを他国と比較すると石油の消費量は米国、中国に次ぐ世界第3位であり、天然ガスは米国、ロシア、イラン、中国に次いで世界第5位の消費量である。

 石油と天然ガスを合計した日本の消費量は石油換算で624万B/Dとなる。この消費量は米国(3,073万B/D)、中国(1,201万B/D)、ロシア(1,028万B/D)に次ぐ世界第4位であり、世界全体の消費量の4.3%を占めており、日本は世界有数のエネルギー消費国であることがわかる。

*表「石油・天然ガス合計消費量Top20(2011年)」参照。
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-3-T01.pdf 

(2)米国、中国、ロシアは石油・天然ガスの巨大な生産国。対する日本は?
 問題はこのような莫大な消費量を各国がどのようにまかなっているかである。米国、中国、ロシアは日本より消費量が多いが、実はこれら3カ国は自国内でかなりの石油或いは天然ガスを生産しているのである。ロシアは言うまでもなく世界的な石油とガスの生産国でありヨーロッパ諸国や日本に輸出しているほどである。米国と中国は国内でもかなりの量の石油或いは天然ガスを生産している。米国の場合、石油の生産量は784万B/Dに達しサウジアラビア、ロシアに次いで世界第3位の生産国なのである。また天然ガスの生産量は世界一を誇っている。また中国も石油生産量は世界第5位、天然ガスの生産量も世界第6位のである。このように両国がエネルギーの一大生産国であることを忘れてはならない。

*表「石油・天然ガス合計生産量Top20(2011年)」参照。
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-2-T01.pdf 

(3)微々たる日本の自給率
 これに対して日本は石油、天然ガス共に国内生産量は微々たるものであり、2011年度エネルギー白書によれば石油の自給率は0.4%であり、99.6%を海外からの輸入に依存している。天然ガスの自給率は3.3%と石油よりも少し高いが、それでも輸入依存は96.7%に達する。石油と天然ガスを合わせた自給率は98%前後と推定される。日本は実質的に自給率ゼロと言えるのである。

 それでは米国及び中国の自給率はどうであろうか。上記(1)及び(2)の両国の消費量と生産量をベースに試算すると米国は62%、中国は49%となる。米国は6割以上が自国産のエネルギーであり、中国は必要量のほぼ半分を自国で賄っている。ほぼ100%を輸入に頼る日本との格差は余りにも大きい。

 さらに最近の自給率の変化を見ると深刻な問題が浮き彫りになってくる。日本は過去10年間常に自給率は全く改善されていない。ところが米国は2000年から2007年の間こそ自給率が低下したものの2007年の55%を底に近年は改善が著しく上記のとおり2011年は62%に改善されている。よく知られている通りこれは米国内でシェールガスとシェールオイルの生産が急増しているためである。米国は近い将来石油・天然ガスを完全自給できる時代が来ると言われている。今回の大統領選挙でもオバマ現大統領はシェールガス開発により雇用が増え、中東など不安定な外国に対するエネルギー依存度が低下することを誇らしく語っている。

 石油・天然ガスの消費量が米国に次いで世界2位の中国は米国と逆に自給率が年々低下している。同国の2000年の自給率は72%であり米国の55%を大きく上回っていたが、その後大幅に低下し、2009年には54%と米国より悪化し、2011年にはついに50%を割っている。
*表「主要国の石油・天然ガスの合計生産量と消費量(2011年)」参照。
http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/3-3-G05.pdf 

 これら米国と中国のデータは今後の日本に重要な二つの問題を突きつけている。一つは(1)自給率を高めた米国は例えばホルムズ海峡封鎖が現実問題となった時に日本のエネルギー安全保障に本気で配慮してくれるか、と言うことであり、二番目の問題は(2)大国の中国と世界中で石油・天然ガスの争奪戦を戦わなければならなくなる、と言う問題である。いずれも日本にとっては極めて重い課題である。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

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