石油と中東

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(ニュース解説)暗礁に乗り上げたOPEC事務局長の後任選び

2012-10-26 | OPECの動向

 今年末に任期満了を迎えるAl-Badri OPEC事務局長の後任選びが難航している。サウジアラビア、イラン、イラク及びエクアドルの各国から推薦された4名の候補者について2日間にわたって協議が行われたが各国とも譲る気配は無く未だ候補者は絞り込まれていない 。次期事務局長は12月12日ウィーンで開催予定のOPEC総会で承認される手はずであるが一本化の協議は完全に暗礁に乗り上げた状態である。

 候補者の顔ぶれはサウジアラビアのDr. Majed Al-Moneef(現サウジ諮問評議会議員、元キング・サウド大学副学長、経済学博士 )、イランのHossein Nozari前石油相、イラクのThamir Ghadhban(首相顧問)及びエクアドルのWilson Pastor石油相の4人である。衆目の一致するところサウジアラビアのDr.Al-Moneefが最有力候補であるが、イランはこれに強硬に反対していると言われる。OPEC加盟12ヶ国の中で生産量が1位と2位の両者が激しくぶつかりあっている。

 ペルシャ湾をはさむサウジアラビア、イランの両国はイスラム教スンニ派対シーア派、アラブ民族対ペルシャ民族という宗教的・民族的な対立構造を孕んでおり元来水と油の関係であるが、OPEC内部においてもサウジアラビアが国際協調を重視する穏健派であるのに対して、イランは常に高価格を目指す強硬派として総会で激しい応酬を繰り返している。さらに最近では核開発疑惑により先進各国がイラン産原油を市場から締め出したことに対し、サウジアラビアがその不足分を補うかのように過去最大の増産を行っていることが減産による歳入不足に直面しているイランを刺激している。またエネルギーとは直接関係ないがシリアの内戦はアサド政権を支援するイランと反政府軍を支援するサウジアラビアとの代理戦争とまで言われ、サウジアラビアとイランの対立はかつてないほど先鋭化している。OPEC事務局長の選任にこのような両国の対立が色濃く出ているのである。

 実はOPEC事務局長の選任がもめたのは今回が初めてではない。前回の2007年にはサウジアラビアとイランとクウェイトが争って内部調整がつかず、結局妥協策としてリビアのAl-Badriに落ち着いたと言う経緯がある。サウジアラビアとイランの争いは前回の因縁試合の再現であり、OPEC場外を含めた両国の根深い対立の縮図とも言える。加盟国の中にはAl-Badri再任を模索する動きも出ている。

(完)

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