石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

イラクの石油生産と輸出の現状

2014-03-05 | OPECの動向

  イラク・エネルギー省のフセイン・アルシャハリスタニ副大臣は記者会見で同国の2月の原油輸出量は日量平均で280万バーレル(以下B/D)に達したと述べている 。 このうち250万B/Dは南部のペルシャ湾に面したバスラ港からの輸出であり、残る30万B/Dは北部クルド人居住区のキルクーク油田からパイプラインでトルコに輸出されている。この他にもトラック輸送による1.2万B/D程度のヨルダン向け輸出ルートがあるが、西部アンバル県は紛争地帯であり、現在はストップしている。因みに北部のパイプラインルートもクルド人の反政府活動により度々送油が停止、かならずしも操業は安定していない。イラクは今年の輸出目標を340万B/D(内40万B/Dは北部クルド地区経由)としている。

 一方生産については国内消費分を含め今年の目標量は4百万B/Dとしており、これに対する2月の生産量は350万B/Dである。目標量を下回っていることに対してシャハリスタニ副大臣はクルド地区の生産減が原因であると述べている。

 湾岸戦争直前の1989年に284万B/Dあったイラクの原油生産は戦争後の経済制裁により1990年代前半は一挙に50万B/Dに落ち込んでいる。その後国連による「Oil for Food(食料輸入のための原油生産)」が認められ2000年には261万B/Dまで回復したが、2003年のイラク戦争の結果再び200万B/D以下に下落、フセイン政権崩壊後も長期間にわたり生産量は低迷した。

 イラクの原油生産が本格的に回復したのは2010年以降であり2010年、11年及び12年の生産量はそれぞれ249万B/D、280万B/D、312万B/Dに急伸、2012年には湾岸戦争前の1989年の水準を超えた(以上数値はいずれもBP統計)。
(図http://members3.jcom.home.ne.jp/maeda1/2-D-2-01.pdf参照)

上記に触れた2月の生産量350万B/Dは1979年(第二次オイルショック時)と並ぶ過去最高の水準であり、経済制裁のため石油輸出が低迷するイランを尻目に同国は今やサウジアラビアに次ぐOPEC第2位の石油輸出国となっている。将来の生産についてもイラクは強気の見通しであり、ルアイビ石油相は目標生産量を2017年に700万B/Dとし、さらに最終的には1,200万B/Dを目指す、と述べている。欧米の専門家は目標値1,200万B/Dに対しては懐疑的であるが、700万B/Dはあながち不可能ではないと思われる。このようにイラクの石油の生産と輸出は急激に伸び過去最高の数値を塗り替えつつある。

以上

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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