石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

BPエネルギー統計レポート2014年版解説シリーズ:石油+天然ガス篇2 埋蔵量(2)

2014-09-09 | その他

(2)国別の石油・天然ガス合計埋蔵量(続き)
(埋蔵量を増やし上り調子の米国に対しじり貧のロシアとマレーシア!)
(2-2)2012年と2013年の国別埋蔵量の比較
(表http://members3.jcom.home.ne.jp/maedaa/3-1-T02.pdf 参照)
 通常埋蔵量は1年間で大きく変化することはなく、2012年末と2013年末を比較した場合もほとんどの国は横ばい状態である。大きな変化があるとすればそれは(a)年間生産量を上回る新規油田またはガス田が発見された場合(埋蔵量の増加)、もしくは(b)新規発見が少ないかあるいは全くなく年間生産量が新規発見または追加を上回る場合(埋蔵量の減少)のいずれかとなる。

 世界全体では2012年末の埋蔵量2兆8,470億バレル(石油換算、以下同じ)に対し2013年末の埋蔵量は2兆8,559億バレルであり、89億バレル、0.3%の微増である。2013年は同年の生産量に見合う追加埋蔵量があったことを示している。合計埋蔵量が世界1位のイランと2位のベネズエラは世界全体と同じ傾向を示している。

 しかし中には埋蔵量を増やしている国も散見される。その代表例は米国であり米国の場合埋蔵量が145億バレル増加し、増加率は16.4%である。145億バレルと言えばインドあるいはメキシコ1カ国の埋蔵量に匹敵する。これは言うまでもなく米国内でシェール・ガスあるいはシェール・オイルが次々と発見開発されているためである。シェール(頁岩)層は当初ガスの開発から始まったが現在では石油の開発が主流になりつつあり、米国では当分の間シェール・ブームが続くものとみられる。シェールガス(またはオイル)は米国以外でも試掘等により多数発見されているが、各国とも未だ全容が把握されておらずBP統計でも埋蔵量に加算していない。また中国、カザフスタンなどもそれぞれ埋蔵量が19億バレル(+5.0%)、15億バレル(+3.8%)増加している。

 これに対してロシアの埋蔵量は2012年の2,943億バレルから2013年には2,896億バレルへと47億バレル減少している。のちに述べるように2013年のロシアの石油・天然ガスの合計生産量は2,085万B/Dであり、同国はこの生産量をカバーするだけの埋蔵量を追加できなかったことを意味している。埋蔵量世界27位のマレーシアの場合はさらに深刻であり、同国の埋蔵量は2012年末の121億バレルから2013年末には105億バレルへと12.7%も減少している。新興工業国のマレーシアは今後も増大するエネルギー消費量をまかなうために国内生産を増加する必要があることは間違いなく、領海内の深海における新たな油・ガス田の発見・開発等これまでとは異なった技術的ブレークスルーがなければ埋蔵量の減少は避けられないであろう。

(続く)

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 前田 高行 〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601
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