石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

全社好決算、利益トップはExxonMobil:2023年1-3月期五大国際石油企業決算速報 (6)

2023-05-17 | 海外・国内石油企業の業績

I. 五社の業績比較

ここでは五社の当期利益、売上高、売上高利益率、キャッシュ・フロー及び設備投資を比較する。

 

(各社50億ドル以上の利益を計上!)

1.  純利益[1](図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-52.pdf 参照)

国際石油企業の中で1-3月期利益が最も多かったのはExxonMobilの114億ドルであり、5社の中で唯一100億ドルを超えている。これに次ぐのがShell 87億ドル、bp 82億ドルであり、第4位はChevron(66億ドル)、5位TotalEnergies (56億ドル)である。各社とも50億ドル以上の利益を上げる好調な決算となっている。

 

前期(2022年10-12月)と比較すると、ExxonMobil、Shell及びbpは減益、TotalEnergiesは増益、Chevronは横ばいである。また前年同期(2022年1-3月)比ではExxonMobilが3倍を超え、またbpは前年同期のロシア関連プロジェクト清算による大幅な欠損から回復するなど各社とも利益が改善している。

 

(原油価格は下落したが需要回復で売上堅調!)

2.当期売上高[2] (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-51.pdf 参照)

2022年1-3月期のBrent原油平均価格は81.17ドル/バレルであり、前期(88.87ドル)或いは前年同期(102.23ドル)に比べかなり下落している。しかし新型コロナの終息により需要が回復したこともあり、各社とも売上の大幅な減少は見られなかった。

 

5社の売上高はShell (870億ドル)、ExxonMobil (866億ドル)が並んでおり、これに続くのがTotalEnergiesの626億ドルである。bp、Chevronの売上高はそれぞれ570億ドル及び488億ドルであった。

 

Shell、ExxonMobilの売上高を100とした場合、TotalEnergies 72、bp 66、Chevron 56であり、Chevronの売上高はShell、ExxonMobilの6割弱にとどまる。前項で触れた通り利益面ではExxonMobil、Shell、bp、Chevron、TotalEnergiesの順であり、ExxonMobilは売上及び利益の両面でトップ企業の貫録を示している。

 

(TotalEnergies以外はすべて二桁台の利益率!)

3.当期売上高利益率 (図:http://menadabase.maeda1.jp/2-D-4-53.pdf 参照)

IOC5社の今期売上高利益率はbpが14.4%と最も高く、続いてChevron 13.5%、ExxonMobil 13.2%、Shell 10%、TotalEnergies 8.9%であり、TotalEnergies以外は10%以上の利益率を示している。これを前期(2022年10-12月期)或いは前年同期(2022年1-3月期)と比較すると、前期と同様TotalEnergies 以外は10%以上の利益率であったが、1年前の前年同期はChevron1社だけが12%の利益率であり、ExxonMobil、Shell及びTotalEnergies は6-8%の利益率にとどまり、bpは▲40%の大幅な欠損率でであった。

 

(続く)

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maedat@r6.dion.ne.jp

 

 

[1] 「純利益」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil:Net income attributable to ExxonMobil (U.S. GAAP)

Shell:Incom/loss attributabel to shareholders

bp:Profit (loss) for the period; Attributable to BP shareholders

TotalEnergies:Netincome (TotalEnergies share)

Chevron:Net income

[2] 「売上高」は各社資料から下記項目を抽出した。

ExxonMobil:Total revenues and other income

Shell:Revenue

bp:Total revenue and other income

TotalEnergies:Sales

Chevron:Sales and other operating revenues

 

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(写真は語る)激変する中東外交とその顔(3完)

2023-05-17 | 中東諸国の動向

(注)本稿は「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0576MeDiplomacy2023JanMay.pdf

 

 中東外交は2国間外交だけではない。関係する国々が一堂に会する活発な多国間外交が行われ、或いは国際的な連盟組織も問題解決に一役を買った。

 

4月14日にはサウジアラビアのジェッダにGCC6カ国のほか、エジプト、イラク、シリア及びヨルダン9カ国の外相が集まった。主要議題はシリアのアラブ連盟復帰とイエメン内戦終結である。シリアの連盟復帰についてはすでにサウジアラビア、エジプト、イラクなど主要なアラブ国家はこれまでの個別会談で同意している。

 

今回の会合は言わば翌月リヤドで開催されるアラブ連盟首脳会議(サミット)の露払いである。しかし参加国の中で唯一シリアの連盟復帰に難色を示した国があった。GCC構成国の一つカタールである。かつてのGCCはサウジアラビアが有無を言わせず他の5カ国を従わせてきた。しかしサウジアラビアの指導力も最近めっきり落ちてきたのである。

 

 5月7日、カイロでアラブ連盟外相会議が開催され、シリアの連盟復帰が賛成多数で採択された。こうしてシリアは十数年ぶりにアラブ連盟に復帰することとなった。

 

2011年の『アラブの春』でシリアのアサド大統領は国内民主派を徹底的に弾圧したため、アラブ連盟を除名された。同時に過激派『イスラム国(IS)』が台頭し、シリア国内は四分五裂、アサド大統領の運命は風前の灯火となった。

 

 しかし世界はイスラム過激派ISにアサド以上の脅威を抱いた。その結果、シリア国内民主勢力を後押しする西欧諸国と、ロシアとイランが後押しするアサド政権は一方で対立しつつ、他方では共同してIS掃討に当たる奇妙な構図となった。そしてIS勢力が駆逐される頃にはアサド政権は民主勢力を圧倒して国内を掌握したのである。こうして西側が嫌う強権政府がまた一つアラブ連盟に復帰した訳である。

 

 もちろん連盟加盟国すべてがシリアの復帰を歓迎した訳ではない。先に書いた通りカタールはこの会議を欠席した。会議で全会一致で採択されたのはイスラエルのパレスチナ弾圧に対する非難決議である。アラブのイスラエル批判は毎度のことであり、彼らは最近の国際会議で使われる常套句『最も強い言葉』でイスラエルを非難した。但しいずれの国も自ら行動を起こす気は毛頭ない。イスラエルを本気で怒らせれば、自分に跳ね返ってくることが解っているからだ。アラブのイスラエル非難は常に言葉だけある。

 5月10日、ロシア外相はモスクワにイラン、イラク及びトルコ外相を招き、トルコとシリアの関係改善を協議した。トルコはクルド勢力をテロ組織と決めつけている。トルコクルド人の一部武装勢力は反政府テロ活動に走り、政府軍が反撃すると隣国シリアに逃げ込んでいる。このためトルコはシリアに越境、国境地帯を事実上占拠している。一方でトルコ国内には内戦を逃れた多数のシリア難民キャンプがありトルコ政府の頭痛の種になっている。トルコ軍の撤退とシリア難民の帰国促進は両国の緊急課題である。

 

ロシアとイランはアサド政権を支えている。ロシアはシリアの地中海沿岸に軍港を借り受け、イランはイスラエルをかく乱するためシリア国内のシーア派軍事組織ヒズボッラーに軍事訓練を行い、武器弾薬を補給している。4カ国はシリア内戦終結に大きな利害関係を持っている。上記写真の4カ国外相はそれぞれの国旗を背に同床異夢である。

 

(完)

 

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行    〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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