石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

(写真は語る)激動する中東外交とその顔(1)

2023-05-11 | その他

(注)本稿は「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0576MeDiplomacy2023JanMay.pdf

 

 中東の外交が激しく動いている。サウジアラビアとイランの和解、シリアのアラブ連盟復帰、エジプトとトルコの雪解け、イランの近隣諸国への接近等々、その例は枚挙にいとまがない。背景にあるのは米国の中東離れ、或いはロシアとウクライナの戦争など中東をめぐる国際政治の動きであり、欧米先進国に対抗するグローバルサウスの動きであろう。そこに石油・天然ガスのエネルギー問題が絡む。

 

 最近の外交の特色は各国首脳が相手国を訪問したり、サミットで直接言葉を交わすようになったことであろう。新型コロナウィルスが終息しつつあるためである。

 

 以下の写真は今年1-5月にかけて各国のトップあるいは外務大臣が外国を訪問した際の報道写真である。これによって激しく変化する中東外交の姿が垣間見ることができる。

 1月4日、UAEのアブダッラー外相(大統領実弟)がシリアを訪問、アサド大統領と会談した。シリアはアラブ連盟から除名され、米国から経済制裁を受けるなど国際社会から孤立していたが、国内ではロシアとイランの後押しでIS(イスラム国)を討伐し、また米国やサウジアラビアの支援を受ける反政府勢力を実力で抑え込みほぼ全土を掌握している。シリアは国際的な地位の回復を目指して昨年から動き始めた。

 

かたやUAEはイスラエルと国交を回復、自信を持った同国はGCCの先陣を切ってシリアとの関係改善に乗り出した。同国は西側(イスラエルー米国)あるいは東側(シリアーロシア)のいずれか一方だけに与することなく、またGCCの盟主を自認するサウジアラビアとも一定の距離を保ち、地域の外交問題に積極的に関与しつつある。グローバルサウス陣営の中東における先導者を目指しているようである。

 10日後の1月14日、イラン外相がシリアを訪問、アサド大統領と会談した。両国の経済は西側の制裁を受けて苦境にある。イランは米国の核協議離脱により外交面でも苦しく、また宗教面では宗派(シーア派対スンニ派)でアラブ諸国と対立、さらには女性のスカーフ着用問題で欧米市民の反感を買っている。

 

 しかしイランが世界から孤立しているかと言えば決してそのようなことはない。イラン首脳はアラブ諸国の反イスラエル(反ネタニヤフ)感情を掻き立て一定の外交的成果をあげている。

 一方で、自他共にアラブ及びアフリカの盟主とされるエジプトは1月31日、外相がロシアを訪問した。ウクライナとの戦争でロシアは日本を含む欧米先進国から制裁を受け苦境にある。しかし国際的に孤立無援という訳でもない。国連制裁決議には中国、インド、エジプト、アフリカ諸国などいわゆるグローバルサウス各国は賛成票を投じていない。そしてロシアはエネルギー大国であり、また食糧・肥料の輸出大国である。ロシアは自国が開発途上国の死活を握っていることを承知している。

 

 これに対してエジプトはロシアに石油及び食料の安全保障を期待している。と同時に、戦争で余裕のないロシアに代わってシリア、リビア、スーダン各国の問題を解決し、アラブ諸国に対して引き続き盟主であり続けようとしている。盟主の地位を狙うトルコやサウジアラビアの台頭を許すわけにはいかないのである。

 

(続く)

 

 

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     前田 高行    〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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