ITSを疑う

ITS(高度道路交通システム)やカーマルチメディア、スマホ、中国関連を中心に書き綴っています。

最新北米テレマティクス白書

2011年02月26日 | ITS
UKの自動車産業向けコンサルティングファームIHS Automotiveが北米市場のテレマティクス白書2010年版をリリースした。
要旨は次の通り。

カーメーカー各社は10年以上車を通信でつなぐという夢を追いかけてきたが、たいていの試みは失敗に終わっている。
うまくいったケースではユーザーの囲い込みに有効だったが、いずれにしてもビジネスとしては(GMのオンスターを除いては)成功したとは言えない。実際2003年から2008年の間は、業界に新しい動きはあまりなく、むしろいくつかのカーメーカーはテレマティクスから撤退した。

しかしここにきて環境が変わってきている。車でいえばブルートゥースがほとんどの上級車両に標準装備となり、携帯電話の普及は99%、かつ通信も3Gになった。そして最大の変化がスマートフォンの普及だ。
スマートフォンの出現で、テレマティクスの流れは「車両埋め込みの通信デバイス」から「スマートフォンの接続」に変わってきた。
スマートフォンを使ったテレマティクスは、新しいソフトウェア(とサービス)のダウンロードで最新のサービスを使うことができるが、カーメーカー提供のテレマティクスは車両購入時にサービスが固定されてしまう。

その点に注目したのがフォードのSYNCで、これはユーザーのスマートフォンを活用し車両にはインターフェースとディスプレイを設置するというものだ。他社もこの方向を目指していく一方で、GMはオンスターで従来型のサービスの継続を進めるだろう。

問題は、いかに車とスマートフォンを連携させるか、そしてその情報をいかに安全にドライバーに表示するか、ということになる。

そもそもテレマティクスやナビで問題となっていたことだが、運転妨害が改めて脚光を浴びる。
放っておけばユーザーは運転中にツイートやらFACEBOOKのメッセージを確認し、場合によっては返信する、あるいは何千曲も入っている音楽ファイルの検索をするだろう。すでにアメリカでは連邦の法律でこれを規制しようとしている。

従来のカーメーカーによる対応はスイッチ形状などによるインターフェース改善にとどまっていたが、今後はユーザーの運転状況(スピード、加速、レーン変更など)に応じて受信や操作制限を行うというような方法が考えられる。(注:日本では、停止時以外だめという考え方だろうが、ハイウェイ移動中心のアメリカでは車はほとんど止まらない)

カーメーカーは車両操作系の情報をモバイルアプリベンダーに提供し、自社インターフェースに対応しかつ安全なインカーエンターテイメントのソフトを承認するという動きにでている。(接続した場合は車両の安全なコントロールスイッチ以外では音楽選曲ができない、等)

テレマティクスは、家電・モバイル機器との連携に大きくシフトするだろう。
しかし、運転安全性と使い勝手のバランスは非常に難しく、今後の成功はカーメーカーが消費者に魅力を感じさせる商品・サービスが提供できるか否かにかかっている。