新年あけましておめでとうございます。
2009年波乱の幕開けとはうらはらな、穏やかなお正月となった。
しかし、この先の自動車業界を考えるととても素直に新年を祝う気持ちにはなれないというのが正直な感想だ。
国内はクルマの日用品化が進んでしまい、2009年は自家用車の買い替えはほとんど望めない。
今までの不況では、日本がだめならアメリカ、先進国がだめならBRICS、自家用車がだめでも商業者というような逃げ道があったが、今回はすべての市場がダウンしている。さらにアフターマーケットも恐ろしく冷え込んでいる。
正確な統計はないと思うが、感覚的にはモータースポーツや改造車といった市場は一時の1/3以下に縮小したように感じる。巣ごもり消費の影響で走行距離が伸びず、整備需要も伸びない。
日経の元日版恒例となったIT特集では、ユビキタスやクラウドコンピューティング、SNS、スマートフォンなどが生活を変えるという内容になっているが、車と通信の融合については全く触れられていない。
このブログも、今年あたりから内容的に方向転換を余儀なくされるかもしれない。
IT特集でいちばんに取り上げられていたユビキタスについて考えてみよう。
未だにユビキタス社会の実現は既定路線的に語られているが、どうなのだろう。
オフィスと家庭にパソコンがあり、通勤途上も携帯でつながっている現在の社会で、これ以上のユビキタスって本当に必要なのだろうか?
ある程度の改善、進化(ケータイの広い意味でのスマートフォン化など)はあっても、革新的なマーケット創造の余地はもはやないと思うのだが。
実際、オープンカフェでノートブックを広げるとか、出張先で急に調べものといったオケージョンって、実はそんなにない。
このマーケットが存在するなら、WiFiのホットスポットビジネスはもっと普及しているはずだが、たいした進展がない、というのが本当のところだ。
結局、ITは生活を便利にして、消費者が外に出なくてもよくなってしまったのだ。昔は家の中の娯楽は地上波TVしかなかったから、車でどっかいこうぜ、というのが普通の休日パターンだった。
今、インターネットがあれば暇がつぶせる。動画、ネットショッピング、ブログ、SNS、ゲームなど、いくらでもやることはある。
少し前までは家にこもってインターネットをするのは特殊な人種とおもわれていたが、今やだれでもそうだ。
巣ごもり消費を牽引しているのはITなのだ。ITが生活を変える、という言葉はいままで一貫して肯定的に使われてきた。
しかし、モビリティを必要としない巣ごもり消費は明らかに景気の回復力を鈍らせる。
日経記事とは裏腹に、ITの進化はユビキタス不要の方向に進んでいるのかもしれない。
これは実は結構深刻な問題だと思う。
正月早々長文で失礼しました。今年もよろしくお願いします。
2009年波乱の幕開けとはうらはらな、穏やかなお正月となった。
しかし、この先の自動車業界を考えるととても素直に新年を祝う気持ちにはなれないというのが正直な感想だ。
国内はクルマの日用品化が進んでしまい、2009年は自家用車の買い替えはほとんど望めない。
今までの不況では、日本がだめならアメリカ、先進国がだめならBRICS、自家用車がだめでも商業者というような逃げ道があったが、今回はすべての市場がダウンしている。さらにアフターマーケットも恐ろしく冷え込んでいる。
正確な統計はないと思うが、感覚的にはモータースポーツや改造車といった市場は一時の1/3以下に縮小したように感じる。巣ごもり消費の影響で走行距離が伸びず、整備需要も伸びない。
日経の元日版恒例となったIT特集では、ユビキタスやクラウドコンピューティング、SNS、スマートフォンなどが生活を変えるという内容になっているが、車と通信の融合については全く触れられていない。
このブログも、今年あたりから内容的に方向転換を余儀なくされるかもしれない。
IT特集でいちばんに取り上げられていたユビキタスについて考えてみよう。
未だにユビキタス社会の実現は既定路線的に語られているが、どうなのだろう。
オフィスと家庭にパソコンがあり、通勤途上も携帯でつながっている現在の社会で、これ以上のユビキタスって本当に必要なのだろうか?
ある程度の改善、進化(ケータイの広い意味でのスマートフォン化など)はあっても、革新的なマーケット創造の余地はもはやないと思うのだが。
実際、オープンカフェでノートブックを広げるとか、出張先で急に調べものといったオケージョンって、実はそんなにない。
このマーケットが存在するなら、WiFiのホットスポットビジネスはもっと普及しているはずだが、たいした進展がない、というのが本当のところだ。
結局、ITは生活を便利にして、消費者が外に出なくてもよくなってしまったのだ。昔は家の中の娯楽は地上波TVしかなかったから、車でどっかいこうぜ、というのが普通の休日パターンだった。
今、インターネットがあれば暇がつぶせる。動画、ネットショッピング、ブログ、SNS、ゲームなど、いくらでもやることはある。
少し前までは家にこもってインターネットをするのは特殊な人種とおもわれていたが、今やだれでもそうだ。
巣ごもり消費を牽引しているのはITなのだ。ITが生活を変える、という言葉はいままで一貫して肯定的に使われてきた。
しかし、モビリティを必要としない巣ごもり消費は明らかに景気の回復力を鈍らせる。
日経記事とは裏腹に、ITの進化はユビキタス不要の方向に進んでいるのかもしれない。
これは実は結構深刻な問題だと思う。
正月早々長文で失礼しました。今年もよろしくお願いします。
自動車産業界には良くないこととは思うけど.
こういう時こそチャレンジも必要です。
車と通信の融合が難しいとすれば、どのような方策が求められると考えていますか?
>自動車業界にとって大きな成長分野と見込まれているITSへの取り組みは、不発に終わるということですか?
そのとおりです。
このブログも膨大な過去ログがあるので、読んでからコメントして頂戴とは言いませんが、そのことについて4年半書き続けてきました。
まあ時間があるときに見てください。
>取り組まなければ何もはじまりませんよ。
もう10年近く取り組んでいてもほとんど何も始ってない、というのが現実でしょう。
>車と通信の融合が難しいとすれば、どのような方策が求められると考えていますか?
車と通信の融合が難しいとは思ってません。技術的にはすでに実現している。
車+通信がもたらす利便が消費者に対価を支払わせるほどの魅力がない、だから普及しないということです。
私はそれに対する方策を考える立場にはないけど、いろいろな項目について今までのエントリーでそれなりに述べています。
逆に質問させてもらうと、なぜ「ITSが自動車業界にとって大きな成長分野と見込まれている」とお考えですか?
自動車業界への新規参入企業にとって未知の可能性があることが第1点です。発想次第で新時代を席巻できるコンテンツが生まれる可能性がある。それに試みて失敗を繰り返している企業も多々ありますが、海外を見れば、トムトムやガーミンなんかはうまくやっているのではないかと思います。
また、IT業界の大手が本格参入してくることで自動車業界の活性化に結びつくともいえるでしょう。マイクロソフトなんか、自動車用OSの売り込みに必死ですし。
第2に環境、安全といった自動車メーカーにとっての命題を新次元に引き上げることがITSによって可能になる。これには、ITS関連技術の普及が必須ですが、世界に類を見ないほどインフラが発達している(この点を評価するかしないかは別として)日本は、注目すべき市場であると考えます。
あとは消去法で自動車業界の未来を考えた時に、夢のある分野が数少ない中でITSは可能性に満ちていると思います。
ITSに関しては、ようやく新しい無線規格やインフラを構築するより、既存の技術をいかに応用するかという思考に変わりつつあるところですし、自動車業界にとっては数少ない成長分野であると考えます。
ユーザーに価値を感じさせるコンテンツが生み出せれば、ITSの普及は加速するでしょう。そういう意味ではETCが良い例です。個人的には魅力的なコンテンツを生み出せるポテンシャルが日本市場にはあると思います。
論点がはっきりしてきました。
まず第一点。
TOMTOMもGARMINも要するにスタンドアロンなGPSナビゲーションであり、そのマーケティングが成功した例ではあるけど厳密にはITSとは言えないでしょう。
国内ではパイオニア、アメリカではDASHが通信型のGPSナビを発売していますが、どちらも成功していません。
マイクロソフトは車載OSを売り込んでいます。クルマにコンピューターが搭載されてきていることから、これは当然の流れです。
しかし、必ずしも通信と融合するという話ではありません。
第二点
これはこのブログの大きな争点でもあります。
通信を利用した「ぶつからない車」は技術的には実現可能ですが、前提としてすべてのクルマ、歩行者、自転車に通信機器を装備する必要がある。これは確かに「始めなければ始まらない」ことですが、それよりもレガシーな方策でまだまだ改善の余地があると考えています。
信号制御、矢印信号、歩車分離、自転車レーン設置などは今の仕組みの改善で事故減少へ大きな効果が期待できます。
また、通学ゾーンや狭い住宅街などでは上限速度が規制されるような車を作るということも検討に値します。これもGPSをつかったスタンドアロンなシステムのほうが路車間通信よりもはるかにハードルが低い。実際に日産GTRは位置情報からサーキットではスピードリミッターが解除される仕組みを搭載してます。
この技術で通学ゾーンでの最高速を規制することは今すぐ実現可能です。
最後に「ユーザーに価値を感じさせるコンテンツが生み出せれば、ITSの普及は加速する」というフレーズは10年前から散々言われていて、しかし未だにキラーコンテンツは見つかっていません。それが関係者の努力不足、知恵不足だと考えるより、そんなものはどうやらないのだ、と考えるほうが自然でしょう。
ETCがよい例だということですが、これは成功して当たり前の施策であり、逆にここまで普及が遅れたのはITSへの発展という夢を追いすぎて仕様や仕組みを複雑にしすぎたことが原因だと思っています。
強いて言えば、FM多重VICSが唯一のクルマ+通信(放送だけど)の成功例でしょう。
私自身、ハイテクやモバイルが大好きなのですが、それでも「クルマと通信が融合して初めて実現する魅力的なコンテンツ」は思いつくことができません。
ATさんはたとえばどんなコンテンツがありうるとお考えですか?
レガシーな方策での改善の余地があることは多いに同意しますが、ITS屋が信号の工事をする訳にもいかないんですよね。持てる技術を車の安全に使おうとすると、ITSになるわけで。
ITS=高度道路交通システムとしても、その範囲、定義があいまいであるということを再認識しました。少なからず車車間、路車間通信の発展に従って業界に新規参入できる企業が増えるとは思うのですが。
maikawaさんのお考えは、全うな意見だと思います。
ブログを拝見させてもらって思っていたことは、「maikawaさんはITSがどうあるべき、どのなるべきと考えているのかを知りたい」ということでしたので、改めて
>そんなものはどうやらないのだ、と考えるほうが自然でしょう
という言葉が象徴的だと思いました。
それでも企業側の意見や将来を考えると、ITSをビジネスとしてとらえないということはできないと感じます。やはり次世代の、“無線通信技術の車載化”には魅力を感じてしまうのです。
私も車載通信技術の普及を促すキラーコンテンツがどのようなものか、具体的には考え付きません。
しかしだからといって
>そんなものはどうやらないのだ
というところまでは考えません。
地図データを利用した自動車の自動走行などは安全面と環境面で期待できるコンテンツだと思います。そうした技術の実現に向けて地図メーカー各社は詳細な地図データの収集に取り組んでいますよね。
プローブなんかも、改善の余地はありますが期待できる技術です。
今の仕組みの延長線上で、安全、環境配慮、快適な走行等々の質を向上させることはもちろん必要です。
ITS関連事業も、今の仕組みの応用でITS技術を普及させる方針に転換しつつあります。
少し前までは夢物語のような技術論に終始していたかもしれませんが、それが段々現実味を帯びてきていると私は捉えています。
「ITSの可能性」と「現実にできること」をすり合わせて、かつ「ユーザーのニーズを的確に読み取ること」。それぞれが着実に結束に向かっているのではないかと感じます。結束させようとしている関係者の取り組みと、時代の流れ、技術の進歩が形になる。これまでの産業技術にあったことがITSの分野で進んでいるということなのではないのでしょうか。
いつもどうもです。
管轄官庁が違うからなのか、信号機はITSではほとんど言及されない。これってどうなんでしょうね。
ATさん
真摯な回答ありがとうございます。
最後の文章はまさにその通りだと思うし、本当のところは私もそうあってほしいと思っています。
ポイントはおっしゃる通り「ユーザーニーズを的確に読み取ること」でしょう。
おそらくご存知だとは思いますが、信号機など交通管制に関わるモノは、UTMS(所謂、警察のITS)で扱っています。おいそれとITS(というか国交省・経産省・総務省)からは口出しできない状況なのは確かです。
※参考 http://www.utms.or.jp/japanese/system/index.html
また、2008年12月26日の記事「ITSジャパン スマートウェイの大規模実証実験」は、レスポンスの元記事も曖昧に書いていますが、もともと警察庁のDSSSがメインであり、「スマートウェイ(国交省のITS)」は、内閣官房が音頭取りしているためにお付き合いでやるだけ、といったところではないでしょうか。
ご参考まで。