6月にエフエム東京のデジタルラジオ放送i-dioの闇について書いたが、やはり事実はそのとおりだったようだ。エフエム東京は10月8日、正式に事業撤退を表明した。
立ち上がり時点で当ブログも含め、ほとんどの人が成功するとはとても思えない、と考えていた。なぜそのような事業にエフエム東京は邁進してしまったのか?
このデジタル放送はV-Low帯という電波帯域を使っている。この帯域はテレビ放送のデジタル化によって空いた「空き地」。
電波帯域の利用は総務省が管理している。テレビのデジタル化にあたっては、従来のテレビが使えなくなるなどの経済的負担を家計にもたらしたことから、「空いた帯域を有効利用する」ことは国家政策としての大命題になっていた。
総務省はマルチメディア放送に関して様々な絵を描き官民の検討会なども行われたようだが、移動体通信の3G,4Gという進化に対し一方通行の放送にメリットがあるわけもなく、実際にはほとんど活用されていない。
結果としてアナログ停波に対する批判を交わすために、だれも否定できない「安全、安心」に振り分けたのだが、例えば交通安全ということでトヨタが始めた「ITSコネクト」に関して言えばITSコネクト協議会のHPはもう一年以上、会員名簿改訂以外のニュースリリースがない。
マルチメディアということでは携帯端末向けマルチメディア放送ということでDOCOMOがNOTTVという事業を行ったが、これも見事に失敗している。
モバHOという携帯向け衛星放送がすでに失敗に終わり、かつ事業スタート前にはアメリカで同様の事業を進めたMediaFloというサービスが撤退を決めるという、最初から誰がどう考えても成功する見込みがない事業だった。
DOCOMOという巨大企業にとってはこの失敗は大した痛手ではないだろう。これはどう見ても総務省に対する「お付き合い」だ。お付き合いという意味ではトヨタの「ITSコネクト」もそうだろう。
これらの失敗を知っててどうしてエフエム東京はデジタル放送に投資をしたのだろうか?
DOCOMOと同様に国策に協力したということなのだろうか?
これは大いに疑問が残る。今、ラジオ放送局は楽な商売ではない。とても大きな投資ができる状況ではなかったはずだ。総務省との兼ね合いがなかったとは言えないだろうが、監督官庁に対するお付き合いとしてはその代償が大きすぎる。
もしかしたら経営者は放送事業の将来にたいする大勝負だと考えたかもしれないし、災害ラジオの需要を取り込んで事業の柱にしようと考えたのかもしれない。
とはいってもこれは無謀だったし、少なくとも一般コンシューマー向け事業が成立しないことは誰の目にも明らかだった。
なぜ止められなかったのだろう。
i-dio 放送終了のお知らせ
http://www.i-dio.jp/news/sp/index.php?itemid=221