
H7年8月 6時50分大河原峠出発

大河原峠から約1時間かかって着いた将軍平は天祥寺原と蓼科7合目からのコースの
合流点で広場に一角には地味ではあるが小奇麗な蓼科山荘が建っている
展望は無いが明るい広場は落ち着きがあり一息入れるには持って来いの場所だ
山頂に入って来た人達が一様に「展望は駄目でした」と言っている
新潟、長野両県のみ快晴と言った予報はどこへやら・・・
そう言えば先ほどから山頂方面からのガスが木々に纏わりつきながら降りて来て
ここ将軍平を包みこもうとしている

次のステップが目の前にあるというゴロ石の登りは山頂まで続きマー君の為に
道の選定に苦慮したが当のマー君は意外や逞しく登りあげている
時に石の上へ飛び乗ったつもりが勢い余って石を飛び越えズッコケたり・・・
やがて傾斜が緩くなり蓼科山頂ヒュッテに着くと頂上は目の前だった

山頂はまるで岩の海、嘗てこんな広い頂を見た事が有っただろうか
蓼科山は独立峰のため展望には恵まれているが(晴れていれば)風当りも強い
ある瞬間、突然ガスが消散すると美しい本当に美しい水色の空が覗く
が、それも束の間 再びガスに閉ざされてしまう
(略)
風が幾らか治まった時、三角点に戻ると厚い雲の切れ目に樹林に覆われた横岳や前掛山が
覗いた。それとばかりにカメラを出すが次の雲がやって来て
中々シャッターを切らせてくれない

マー君は人気者だった
「茶の秋田犬は珍しいな、俺はこの犬を眺めている方が楽しいよ」
「写真、撮らせて貰ってもいいですか?」続いて俺も、俺も・・・と
北春号業政を手帳に書きこんでいる人も居たっけ

そんな事をしている内、横岳の稜線が洗われ、その末端に竜源橋付近の建物や道路が
見えるまでに天気が回復してきた
左の山頂ヒュッテの後ろには前掛山も姿を現し山肌は明瞭な縞枯れ模様を描いている
(略)
余り落ち着けない山頂だったが1時間半の時を過ごし絶望と思われていた展望に感謝し
腰を上げた 山頂ヒュッテのトイレ使用料は50円 一歩、誤ると糞地獄と言う
冷や汗もののトイレで白山のトイレとは言って来る程の差だ

将軍平までは再び170mの一直線の下降、下り苦手なマー君は不安そうな顔をして
それでも遅れまいと必死に付いて来る 尻尾は下がったままだ
(略)
時間は未だ11時 山荘前は結構ごった返していた
猛暑で茹だる下界では考えられない心地よい風が此処には在った
(略)

天祥寺原に下る細い山道は一転して人気も無く静寂そのもの
樹林帯を抜けゴロ石に代わると右に左に足場を見つけながらの急下降だ
しかし、この下りが滅法長い
景色が楽しめるでもなくマー君に気を使いながら、只ひたすら下るのみ
赤いペンキに導かれ樹林に分け入ると、やっと人心地つくが今度は笹の間を通過する事に
なりマー君にダニが付かぬよう神経を使い知らず知らずに早足に
最後はとうとう駆け下っていた

「右・竜源橋 左・大河原峠、亀甲池」と書かれていた分岐で休んでいた夫婦が
「水はカラカラだ」と話している
双子池から、わざわざ此処まで水を汲みに来たのだと言う
私達もマー君に思い切りお水を飲ませてあげようと思ったのに、何てことだろう
リュックを下ろし此処で暫く休む事にした マー君の指の仇からは血が滲み痛々しい
改めて今、下りてきた道を振り返ると蓼科山の上部から白いザレが一直線に
下りているのが見える あの転がり落ちそうな急斜面を私達は下ってきたのだ
幸い此処から先は笹原に針葉樹を配した明るく広々とした平坦地で
歩く足元には様々な花が咲き乱れザレで痛めたマー君の足にも私達の膝にも優しかった
私達は亀甲池から双子池を周り双子山を登って起点の大河原峠に戻るつもりでいた
しかし、どこでどう間違えたのか呆気なく大河原峠に着いてしまった(1時30分)
双子山を見やれば稜線を歩く登山者の姿、眺める私達の惨めなこと


売店前のベンチに腰掛け雄さんは此処の地酒、マー君には冷たい牛乳
私は温かいコーヒーで一息いれた
マー君は疲れたのか牛乳を飲むと身体を丸めて寝てしまった
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大河原峠から蓼科町に向かう途中、興味をそそる岩画有った
岩の先端はスッパリ切れ落ちていてスリルが有りそうだ
車にマー君を残し「トキン岩」と書かれた表示板の脇を通り細い道を登ると
2・3分で開け前方に厳めしいトキン岩が立ちはだかり頂には小さく祠が見えた
下が砂礫でズルズル足を取られてしまうので直接、岩から登った


(あらら、雄さんの足元 ツッカケではないですか)
見た目より簡単に着いた頂からはたった今、登って来た端整な姿の蓼科山
緑濃い北八ヶ岳が望める絶好の展望台だった

「点々を付けたら、ドキンガンになるね」「何だ!まるで俺じゃねぇか」
そんな冗談を飛ばしながら車を走らせると朝は無人だった料金所には係員が居て
しっかり300円を支払わされた
蓼科町は賑やかだった スキー場のリフトはフル回転し道路に面した売店は一様に
派手な色で塗装され若いカップルがアイスクリーム片手に歩いている
女神湖は、そこから連想する神秘とは程遠い巨大な貯水池の様な湖だ
どこも感激が薄い、私達は早々に退散
ガッカリした埋め合わせか道の両側を飾るコスモスがヤケに優しかった

登山・キャンプランキング