Fish On The Boat

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『古代エジプト入門』

2009-11-03 19:03:18 | 読書。
読書。
『古代エジプト入門』 内田杉彦
を読んだ。

岩波ジュニア新書です。
僕のアタマにはこの程度が丁度いいです。
専門書なんかを読んでみたら、わけがわからなかったりしそうなので。

紀元前5500年くらいから、エジプト文明というのは始まったそうで、
一番古い王朝、第一王朝は紀元前3000頃にはじまったそうです。
そのへん、よく史料が残っているものだなぁと驚く。
それに、紀元後までの5500年もの時間がたっている間に、
ピラミッドや神殿などの、大がかりで技術も要る建造物が建立されていますが、
そんなに長い時間をかけているのに、たとえば顕微鏡が作られたり、
エンジンが発明されたりというようなことって、
起こらなかったんだなぁと、あらためて考えたりしました。
僕らの住む現代から1000年を振り返って、その進歩のぐあいをイメージしてみると、
それだけの長い年月ではいろいろな発見なり進展なりがなされそうなものだと
思ったのですが、なかなかそうはいかないものなんですね。
産業革命以来の飛躍ってものがすごいんだろうなぁ。
あ、産業革命前にも鉄砲が発明されてたりしますしね。プレ産業革命。
古代エジプトだと、今使っているような紙もないですね。
長い時間がかかって発明されたんだなぁ。
現代の進歩のスピードで、5000年未来のこととかを考えると、
それはそれはすごい発展をしそうで、もしかすると滅亡しているかもしれないな
なんて考えたりしますが、大体において現状維持な感じの時間の流れ方を
この古代にはしていたんですねぇ。
技術なんかも、口伝だったから失われていったりしたのかもしれない。
書簡とか文書とかが出来て、はじめて、建設的に時間が流れていくのかな。
それでも、そんな昔に国勢調査とかやってたみたいですよ。
そういうことはできても、まだ科学のとっかかりみたいなものが
無かったんだろうなぁ。建築技術なんかはすごいとは思うのだけれど。

この本では、古代エジプトの5500年間をコンパクトに解説しています。
僕のように、まったく知識が無いという人でも、楽しめる本でした。
宗教と王権の結びつきっていうものが、王朝のはじめから出てきて、
いかに人間は宗教を必要としているかということを知らしめられましたね。
またその利用っていう面でも、えげつないところもあり、
王家の人たちなどの権力者は、民衆よりも早い段階で、
根っこのところでは無神論者だったんじゃないかと思わせられるところもあります。
太陽神というのを、ずっと王家の人たちは信奉していきますが、
やっぱり、神様の象徴は太陽なんですねぇ。
3歳くらいの子どもを100人くらい集めて、最低限の食料とかしか与えないで、
もちろん外部との接触を断って、どこかの森なり草原なりに住まわせて
観察したら、やっぱり古代エジプトとかのように太陽をあがめたりするように
なるんでしょうかねぇ。それとも、それらの時代よりも脳が変わってきていて、
もっと賢く科学的に生活するんだろうか。

言葉というものが、人間の脳を発達させたものとして、
文字とそれを残す技術が発達したことが、さらに脳の発達の手助けに
なっているんじゃないかなって思いました。

なんか、古代エジプトの歴史の流れうんぬんよりも、
人間の進化のほうに興味がいってしまっていますね。
読んでいる時は歴史の流れを面白がっていたんですが…。

とくに頭をひねらなければならない本ではないので、
ちょっとした知的好奇心を満たすためにだとか、
知らないことを知るという、子どものような喜びを得たいとか、
そういう用途で読んでみると面白いかもしれません。
もちろん、古代エジプトについて、何も知らないけど、
知ってみたい気がするという人にはうってつけでしょう。
巻末の「おわりに」では、この本で古代エジプトに興味を
持った人のために、その後読んだらいい本の紹介がされていますので、
継続して古代エジプトを勉強できちゃったりもします。

古代エジプトの終焉の部分では寂しい気持ちになったりもしました。
栄華を極めたかつての大文明が失われることには、
そういう気持ちになるものなんだろうなぁ。
ピラミッドも、一つの「夢の跡」なんだなぁって思いました。
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