読書。
『理由』 宮部みゆき
を読んだ。
時代小説、現代物(ミステリーだけなのかな?)、ファンタジーと、
多様な形式でたくさんの作品を発表する宮部みゆきさんの直木賞受賞作が、
この『理由』です。
宮部さんの本は、『かまいたち』っていう時代物しか読んだことがなかった。
『かまいたち』はなかなか面白くて、
どこか温かかったっていう印象を覚えています。
それでも、その後、他の宮部作品を読まなかった。
娯楽の道の真ん中を歩くような読書感覚が、なんとなく慣れないっていう
のが理由としてあったと思います。
それと、現代物を読みたくても、ミステリーって
僕はほとんど手を伸ばさないんですよね、今のところ。
ただ、チャンドラーを読みだしたりしているので、
そこのところは変わってきそうな感じもしますが、さてどうだろうか。
この『理由』は、東京は荒川の超高層マンションの一室での
一家4人殺人事件についての物語です。
ドキュメント方式とかと解説かなんかに書かれていましたが、
書き手が事件の関係者を取材して、順を追って事件を明らかなものにしていく
というような手法がとられています。
「ノンフィクションノヴェル(事実を語る小説)」という触れ込みで、
トルーマン・カポーティが『冷血』という実話の、
事件の物語を昔、上梓しましたし、村上春樹さんが翻訳した
『心臓を貫かれて』という本も、実際の事件について、犯人のバックグラウンドから、
事件や犯人の人間性を壮大に解き明かしていった本でした。
それら、ノンフィクションものの物語が実在するのですが、
それらとこの、「フィクション」でありながら、現実の事件を取材するような
手法の『理由』とでは、やはり違うところがあります。
『理由』のほうが文章にどこか、ちょっとだけ熱を帯びた感じがあります。
ほのかな、体温レベルの温度を感じるのですが、『冷血』や『心臓を貫かれて』は
淡々としていたと思います。現実の、ゆるぎない事実がそこにあるのだから、
それに即して言葉をつづっていけば、読者を引き込むことがおのずとできてしまう、
とでも言うような書きっぷりに読めなくもない。
そうはいっても、その筆力、構成や言葉選びには「さすが!」っていうところが
あるとは思うんですけれどねぇ。
『理由』は、そういった、フィクションとしての事実、宮部さんが作り上げた事実
というものに即して書いているのでしょうが、やはり文学なのです。
どこが文学かって、やっぱり言葉の彩りの仕方が物語なんだなぁと感じさせられる。
それって、たぶん、取材にこたえる登場人物たちのセリフの感じによるものが
大きいんじゃないか。それと、取材のシーンだけで成り立っているわけではなく、
もちろん、小説って感じの章もありますからね、
そこは「ノンフィクションノヴェル」と比べてやいのやいの言うのは
筋違いかもしれません。
驚くべきは、事件を頭の中で作り上げてしまったその想像力と、
細かいところをつめていった論理力ですねぇ。
その二つを合わせて創造力っていうのかな。
創造力にあふれています。
文庫本で680pくらいあるんですが、中だるみしませんでした。
きちんと、気力も体力も注ぎ込まれて書かれているんだろうなぁと
想像しました。プロの仕事ですね。
それと、登場人物がけっこうな人数いるのですが、
人の名前を覚えるのが苦手な僕でも、ついていくことができました。
なんていうか、物語の要素としての人物だから記憶に残りやすいのかな。
重要な言葉や、ヒントをこぼしていく人たちばかり登場しますからね。
そして、宮部さんは物知りっていうか、
事前の取材がよくできているなぁと感じましたし、語彙も豊富です。
さすがは、言葉のプロだよなぁ。
そんな宮部さんの、完成された仕事のものではなしに、
実験作品みたいなのってあるかなぁって気になりました。
放逸な思考とか精神とかの記録としてでもいいですが、
そういった一面も見てみたいように思いました。
いや、そうでもないかな、今のままでもいいのかな。
そのうち、また時代物になるかもしれませんが、
宮部みゆきさんの作品を読んでみたいです。
『理由』 宮部みゆき
を読んだ。
時代小説、現代物(ミステリーだけなのかな?)、ファンタジーと、
多様な形式でたくさんの作品を発表する宮部みゆきさんの直木賞受賞作が、
この『理由』です。
宮部さんの本は、『かまいたち』っていう時代物しか読んだことがなかった。
『かまいたち』はなかなか面白くて、
どこか温かかったっていう印象を覚えています。
それでも、その後、他の宮部作品を読まなかった。
娯楽の道の真ん中を歩くような読書感覚が、なんとなく慣れないっていう
のが理由としてあったと思います。
それと、現代物を読みたくても、ミステリーって
僕はほとんど手を伸ばさないんですよね、今のところ。
ただ、チャンドラーを読みだしたりしているので、
そこのところは変わってきそうな感じもしますが、さてどうだろうか。
この『理由』は、東京は荒川の超高層マンションの一室での
一家4人殺人事件についての物語です。
ドキュメント方式とかと解説かなんかに書かれていましたが、
書き手が事件の関係者を取材して、順を追って事件を明らかなものにしていく
というような手法がとられています。
「ノンフィクションノヴェル(事実を語る小説)」という触れ込みで、
トルーマン・カポーティが『冷血』という実話の、
事件の物語を昔、上梓しましたし、村上春樹さんが翻訳した
『心臓を貫かれて』という本も、実際の事件について、犯人のバックグラウンドから、
事件や犯人の人間性を壮大に解き明かしていった本でした。
それら、ノンフィクションものの物語が実在するのですが、
それらとこの、「フィクション」でありながら、現実の事件を取材するような
手法の『理由』とでは、やはり違うところがあります。
『理由』のほうが文章にどこか、ちょっとだけ熱を帯びた感じがあります。
ほのかな、体温レベルの温度を感じるのですが、『冷血』や『心臓を貫かれて』は
淡々としていたと思います。現実の、ゆるぎない事実がそこにあるのだから、
それに即して言葉をつづっていけば、読者を引き込むことがおのずとできてしまう、
とでも言うような書きっぷりに読めなくもない。
そうはいっても、その筆力、構成や言葉選びには「さすが!」っていうところが
あるとは思うんですけれどねぇ。
『理由』は、そういった、フィクションとしての事実、宮部さんが作り上げた事実
というものに即して書いているのでしょうが、やはり文学なのです。
どこが文学かって、やっぱり言葉の彩りの仕方が物語なんだなぁと感じさせられる。
それって、たぶん、取材にこたえる登場人物たちのセリフの感じによるものが
大きいんじゃないか。それと、取材のシーンだけで成り立っているわけではなく、
もちろん、小説って感じの章もありますからね、
そこは「ノンフィクションノヴェル」と比べてやいのやいの言うのは
筋違いかもしれません。
驚くべきは、事件を頭の中で作り上げてしまったその想像力と、
細かいところをつめていった論理力ですねぇ。
その二つを合わせて創造力っていうのかな。
創造力にあふれています。
文庫本で680pくらいあるんですが、中だるみしませんでした。
きちんと、気力も体力も注ぎ込まれて書かれているんだろうなぁと
想像しました。プロの仕事ですね。
それと、登場人物がけっこうな人数いるのですが、
人の名前を覚えるのが苦手な僕でも、ついていくことができました。
なんていうか、物語の要素としての人物だから記憶に残りやすいのかな。
重要な言葉や、ヒントをこぼしていく人たちばかり登場しますからね。
そして、宮部さんは物知りっていうか、
事前の取材がよくできているなぁと感じましたし、語彙も豊富です。
さすがは、言葉のプロだよなぁ。
そんな宮部さんの、完成された仕事のものではなしに、
実験作品みたいなのってあるかなぁって気になりました。
放逸な思考とか精神とかの記録としてでもいいですが、
そういった一面も見てみたいように思いました。
いや、そうでもないかな、今のままでもいいのかな。
そのうち、また時代物になるかもしれませんが、
宮部みゆきさんの作品を読んでみたいです。