Fish On The Boat

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『ウェブとはすなわち現実世界の未来図である』

2014-12-08 22:58:05 | 読書。
読書。
『ウェブとはすなわち現実世界の未来図である』 小林弘人
を読んだ。

MITメディアラボ所長の伊藤穣一氏が、
帯に「激変するウェブとテクノロジーが向かう先は?
本書にその答えがある」という推薦文を寄せています。

そうなんですよね、激変していくウェブ世界のこれまでと今を
深く見つめてのその現状の紹介と、現実的に分析している論考とが
本書全5章のうちの4章まで繰り広げられています。
最後の章では、それではどうしていけばいいのか、という
著者なりのあまり細かくないハウツー的な、
スタンスの取り方の説明があります。
そして、ビジネスについてページ数を多く割いている、
ビジネス本の種類のものです。

この本の中でよく述べられていたのが、
「オープン」と「シェア」という概念でした。
そのなかでも、「オープン」では、
まず社内でオープンにしないといけない、と書かれている。
そうしないと生き残れないのが今という世界なんだということでした。
10年前にぼくはナレッジマネジメントを
自分の働いている会社でやろうとしていたのですが、
その方針はまったく的外れでなかったのだなと知ることになりました。
暗黙知や分散しているナレッジをまとめてみんなで共有していこうという
プランを練っていました。
まったく、理にかなった現実的なやり方じゃないですか。
なかなかやるじゃないか、ぼく。

また、クリアには書かれていませんでしたが、
ストーリーマーケティング的なやりかた、
モースの『贈与論』のアニミズム的な感覚というものが、
これからのビジネスに生きてくる可能性があることも
示されていました。
合理性や効率ではない、その反対のもののもつ物語や体験が
「笑ゥせぇるすまん」じゃないけれど、
こころの隙間を埋めるんじゃないかって思いましたよ。
ここで重要なのは、ただ一面的に、ビジネスが生まれるだけじゃなしに、
人と人との連帯感みたいなものが出来あがってくるし、
働き手は自分がアウトプットしているものに見合うかそれ以上のリターンを
感じることにもなるだろうし、
社会的包摂にもどうやら役立ちそうだということが見えてくる点にあります。

それと、検索できないものをみつけていく、
っていうのは良いなぁと思いました。
そうやって見つけたものは、言語化できるものならば
ネット世界がより深く構築されるきっかけになるし、
言語化できな様なものであっても、
それゆえに、大切なものなので人生を深くするのに
役立つんじゃないかと思えました。

それにしても、本書は本当に、IT世界の現状を細かく網羅して
いるように、ぼくなんかには見えますので、
現状認識のためにも一読の価値があります。

こういう本を読むおかげで、ぼくにしてみると、
たとえば3年前のITの現状よりも、今の現状のほうが、
より複雑になっているであろうけれども、
比較的知っていると言えます。
情報世界についての情報を知ることは、
いま大事だと言われる、プラットフォームという「システム」・「考え」を
知ることに繋がります。
まぁ、何をするってわけじゃないけれど、
踏まえておいて損はないなあと思っています。

いろいろ知らないような言葉が出てきて、
簡単な本とは違いますが、
読み応えがあるので、おすすめです。


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