Fish On The Boat

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『地政学入門』

2015-04-06 23:11:00 | 読書。
読書。
『地政学入門』 曽村保信
を読んだ。

「地政学」と聞いて、
すぐにどんな学問かを言えるくらいではなく、
ただ字面からどんなものかをイメージする程度の、
この学問を知らない多くの人と知識を同じくして
臨んだ読書でした。

国と国との地理上の特性を加味した、
外交だとか戦略だとかの学問だというイメージから始まって、
読んでみると、もっと細かくその国の歴史からくる
傾向なども考えたうえで練られる、
外交に関連する実践的学問というものでした。

1983年の本なんですよ。
戦後38年の年。
そして冷戦のさなか。
だからなのか、記述の深さや広範さが今にないくらいでした。
それはつまり、まだ平和のため、いや金のために目がくらんで
ボケーっとする前夜の時代だからなのか、なんて思いましたね。
このあいだも国会議員の人の発言がありましたが、
「八紘一宇」なんてものは体の良いスローガンであり、
ただ石油などの資源を確保するために東南アジアへ進出するために、
国民を納得されるためのイデオロギーとして開発された言葉だと
しっかり書かれていたりします。
今現在なんて、戦後の記憶が薄れてきていますから、
またバカな解釈をして国民を踊らせようとしているんだか、
自らが踊っているんだかわからない発言をする政治家が
けっこう出てきているように見える。
政治家に限らず、識者と呼ばれる人たちにもいる。
その言葉の表面だけをなぞって、文脈も考えないのはどうだろう。

そんなふうに、83年当時だからこそ出てくる、
歯切れの良い真実味ある文言がでてきます。

そして、アメリカが「世界の警察」としてやたらめったら
あちこちの国の粛清めいたことをやるのも、
実は100年以上前からそうだったこととわかる。
モンロー主義とかいう態度が拡大してそうなっているそうですが、
ちょうど100年くらい前の大統領が、
アメリカは「国際警察軍」と言っていたりする。

本書には、地政学としては、こうこうこういうものが地政学だという、
本当に地政学にフォーカスした説明って言うのはありません。
ただ、19世紀から第二次世界大戦くらいまでを扱って、
その当時に出てきたのが地政学ですから、それがどう脚光を浴び、
世界に影響を与えてきたかを、細かい歴史とともに
見ていくというのが、おおまかな本書の流れです。

きっと、名前を聞いてもわからないとおもいますが、
マッキンダーとイギリス、ハウスホーファーとドイツ、
マハンとアメリカ(この結びつきの紹介は少しだけでした)、
というように、地政学の歩みと実際を見ていきます。

これを読んでもたぶん地政学はわからないでしょうが、
今の外交戦略にしても、その基礎の部分にこの
地政学はあるのだろうということはわかります。
対をなしているわけではないと思いますが、
国際政治学というものもあって、
それとはちょっと趣が異なるのが地政学でした。

この分野はなかなか近づいていなかった分野で、
僕にはちょっと難しめだったことは確かです。


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