Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『自分でつくるセーフティネット』

2015-07-01 22:10:26 | 読書。
読書。
『自分でつくるセーフティネット』 佐々木俊尚
を読んだ。

金持ちと貧困層の二極化が進み、
かつての時代のように安心を提供してくれた会社や村などの、
ムラ社会的気風が薄れた時代である現代で、
どう生き抜いていけばいいのか。
その処方箋を授けてくれる本でした。

難しい言葉が苦手な、あまり読書をしないような人でも読めるであろう
平易でフレンドリーな言葉遣いで書かれている超入門書です。
なんの入門書かといえば、社会学・IT学的見地から考える、
どう生きるべきか、その戦略について。

戦術と戦略の違いも、本書では述べられていますが、
生きていくための戦術が、たとえば、
英語を勉強するだとか簿記を勉強するだとか、
あの上司にはこういう付き合い方をするだとか、
この友人とはこう付き合うだとか、
細かい方法なのに対して、
生きていく戦略というのは、
もっと大きく構えて長期的で広範な範囲を想定するもので、
たとえば、SNSの有効利用で弱いつながりをたくさん作るだとか、
生き方そのものの指針(著者の佐々木さんは「軸」といいます)
を「善き人であれ」として設定して過ごしていくことなどが挙げられています。

内容に関して言えば、
東浩紀さんの『弱いつながり 検索ワードを探す旅』とリンクする部分も大きく、
こないだ読んだアダム・グラントさんの『GIVE&TAKE』の考えも引用されていたりし、
僕も以前著書を読んだことものある社会心理学の山岸俊男先生の考えが紹介されて
さらに論理に組み込まれていたり、
僕も20代のころ総務課だったのでナレッジマネジメントを導入したかったのですが、
そのシステムについての言及も少しあったりもして、
とても、僕のこれまで積み重ねてきたものとつながりのある本で、
おさらいをしているような読書感もありました。

前半の100ページくらいは、これまでの社会と今の社会の分析。
後半の100ページくらいは、そこから導き出される、
いまを生きる方策が述べられています。
それは、細かな指導というものではなくて、
やっぱり、基本となる指針(「軸」)なんですよね。
各読者が生きていくためのベクトルを定めるため、
情報を得るための本とも言えそうです。

それにしても、ここまで簡素に現代の生活環境というか、
共同体環境というかを分析してくれた本はありがたいですね。
きっと、いろいろ考えてこんがらかりがちになっている頭にとっては、
クリアさをもたらしてくれることでしょう。
僕も少なからず、考えが整理された気がしてます。
なかなかに、おすすめです。


Comments (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする