Fish On The Boat

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『東北を聴く』

2015-07-25 06:04:34 | 読書。
読書
『東北を聴く』 佐々木幹郎
を読んだ。

東日本大震災をうけて、2011年の9月から2012年の8月まで、
三味線奏者の二代目・高橋竹山と著者が、
初代・高橋竹山が門付き芸をして歩いた東北の地を訪ね、
被災地の仮設住宅の集会所でのライブ・コンサートから始めて、
被災者の体験談を聞き、そして数々の東北民謡の源流を探る旅をした、
その内容がこの本です。

「牛方節」や「斎太郎節」や「新相馬節」など、
東北には有名で、地域に根差した民謡があるということでした。
そういえば、民謡、という文字を見れば、
東北があたまに浮かびます。
東北人といえば、シャイだという印象がありますけれども、
そんな東北人が生みだし、愛してきた民謡というものは、
僕なんかが考えるに、シャイだからこそ、唄という形式でもって、
普段出さない大声を出してすっきりするためのものとしての一面も
あったのではないのでしょうか。
唄にすれば、これは唄なんだからというエクスキューズが働いて、
気兼ねなく声が出せるんだと思うんですよね。

要所要所で、東北が生んだ一大三味線奏者の初代・高橋竹山の逸話も語られています。
昭和8年(1933年)の三陸沖大地震による大津波から必死に逃れた話もあります。
本書では、三陸のリアス式海岸が、津波の侵入にたやすい地形であることに
触れていますが、それでもやはり、大きな地震と大きな津波にさらされてきた
土地なんだなという印象を持ちました。

執筆は2011年から2013年まで行われていたようですが
(加筆修正をいれるともっと長くだろうか)、
最初の2011年くらいなどは、当時の放射線物質による恐怖な不安などが
少し過度に書かれているような気がしましたが、
当時は多くの人が同じような気持ちいたんですよね。
その後の識者たちの努力で、
そういった風評被害的な部分は薄れてきたように感じるのですけれど、
この本を読んで、まだ恐怖や不安の気持ちしか浮かばないようでしたら、
たとえば早野龍五先生と糸井重里さんの『知ろうとすること。』だとか、
菊池誠先生と小峰公子さんの『いちから聞きたい放射線のほんとう』を
読んでみるとおおいに参考になるし、いらない不安を払拭できるでしょう。

話は戻りますが、民謡というのは変幻自在にその歌詞にしろ、唄い方にしろ、
メジャーかマイナーの調子かにしろ時代に沿って姿を変えてきたようです。
民謡同士でも親和性が高くて、違う民謡同士で混ざり合っていたりもするようです。
そういうところは、土着のものでありながらも、
人の行き来に乗って流布していく様が感じられて面白いです。

意外とささっと読めてしまって、僕なんかにはよく知らない分野の内容だったので、
そうかこういう世界の見え方もあるなぁと感じ入った本でした。


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