Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『地域の力』

2015-10-23 02:16:12 | 読書。
読書。
『地域の力』 大江正章
を読んだ。

島根県での酪農からはじまる地域自給ネットーワーク、
兵庫県や三重県、東京都でのシャッター商店街からの生き残りをかけた努力、
徳島県上勝町での「いろどり」という高齢者の働き手が元気な会社、
愛媛県今治市での、地産地消と学校給食、
北海道での酪農や畜産、そしてクリーン農業、
高知県梼原町での林業、
富山県での公共交通、
東京都練馬区や神奈川県横浜市での体験農園などについてのルポです。
そこから見えてくる生きた地域の力には、
なにか真似たり学べたりするものがあるようにも思えるし、
ぼくらのよく知らない分野でも、
そうやって地に足つけてチャレンジし、
成功している人が多くいることに励まされる思いもします。

田舎の役人の保守的な「プライドの高さ」に辟易しながらも、
何年もかけて見返した人もいれば、
2000年ころからすでに時代に適した、
コンパクトな街のあり方を考えてまつりごとをおこなった市長もいるしで、
もみじなどの葉っぱを料亭に売る「いろどり」こそ有名ですが、
そんなに高名ではない、知る人ぞ知るという人物に
ちょっとした偉大さを感じられるのがおもしろい。

あとがきを読むと、この本が出た2008年には論じられていなかった
TPPについての危惧ととれる考えが述べられていました。
グローバルな自由競争に「農」がさらされると、
日本では北海道の小麦など壊滅的になる分野が出てくるという話でした。
時代の流れはTPPにのっかるほうへと傾きましたが、
一般大衆の所得が低くなったり格差が広がる世の中で、
安さばかりに手がいくようになってしまうことは咎めにくいことだと思います。
そうやって、この国の農業なんかが衰退していくと、
もっと格差は広がり、もしかすると安い食べ物の安全性の問題で
健康も劣悪化するのかもしれない。
まあ、不安をあおるようなことを書いて申し訳ないですが、
そういう流れの道も一つありそうだときっと僕に限らず頭に浮かんでくるのではないか。
どうやったら日本人同士がWinWinになるか、も少し考えたいです。

それと、本書を読んでいて考えたのですが、
福祉サービスにしてもNPOなどの活動にしても、
きっとぼくの街だけではなく多くの市町村で周知が足りないと思うし、
役所はその周知をまとめてわかりやすくしてやるだけでも街が活性化すると思うのです。
「わかるやつだけわかればいい」そして「やりたいやつだけやっていればいい」というノリが、
とくに地方の過疎地では一番よくないんじゃないだろうか。

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