Fish On The Boat

書評中心のブログです。記事、それはまるで、釣り上げた魚たち ------Fish On The Boat。

『夜は、待っている。』

2015-10-07 23:22:29 | 読書。
読書。
『夜は、待っている。』 糸井重里
を読んだ。

『ほぼ日』でおなじみの糸井重里さんのエッセイ。
小さい言葉シリーズで、
2011年分の糸井さんの言葉をまとめたものです。

半分くらいまで、いつもの小さい言葉シリーズ以上に、
質感があって胸に響いてくる言葉たちが刻まれています。
「今回、すごいかも・・・」と思っていると、
東日本大地震が起こって、様相が変わるのです。
そこからは、今に続く、
それまでと少しギアの違うように感じられるトーンでの言葉が並び始めます。
なにか、それ以前以後では、
夢の中だったか夢から覚めたかくらいの違いがあるかのよう。

でも、だからといって、
イトイさんの言葉が取り乱しているわけじゃ全然ないです。
逆に、あれだけの混沌とした空気が支配した時期ながら、
これだけは言えるということだけを丁寧に書かれていました。
多くの人は、そこを飛び越して何かを言っていた時期です。
だから、なおのこと、すごいよなぁって見てしまうんですよね。
そして、その言葉の中からイトイさん自身の祈りが伝わってくる。

2011年分の本書には、正直、読むのがいやだなぁっていう気持ちもあったんです。
大震災の年ですから、それまでのいつもの小さい言葉シリーズとは違った、
がっくりくるような当時の心理をそのまま描写されている言葉はないだろうか、
というような不安があったわけです。
でも、イトイさんは地震発生まもないときから、
「光を射す方」を見ていこうという姿勢をとられます。
それがほんとに、その後の生き方についても救いになっているように感じましたし、
今となっても、その姿勢によって繋がってきた今だなぁという気がする。
もちろん、ほぼ毎日『ほぼ日』を読んでいるからそう感じるのかもしれない。

ぼくにとってのイトイさんや『ほぼ日』って、
情報や知見を得るためのみではなくて、
その視点もそうだし、もっというと、
日常のふとした微笑みやヒヒヒというようないたずらめいた表情などなど、
そういったふうに感じられるものに触れて自分と重ねたり、
友人や知人を見るような気持ちで客観的に眺めて、
フィードバックを得たりなどする相手のようであるんです。
それは、あたかも、<Only is not Lonely>というほぼ日の標語のようです。
ぼくという個が、個として触れながら、孤独じゃない感覚を得ているわけですから。
そしてそれは、大きく考えると、人間理解を深めることに繋がっていくように思います。
それでもって、そういう細かい人間理解が少しずつ重なっていくことこそが、
上手な歳の取り方なのかなあ、なんてふうにも思うのです。

と、いろいろ書きましたが、好い本でした。
小さい言葉シリーズはどれもおすすめです。


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