Fish On The Boat

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『螢・納屋を焼く・その他の短編』

2017-10-04 12:08:09 | 読書。
読書。
『螢・納屋を焼く・その他の短編』 村上春樹
を読んだ。

ひさしぶりに、村上春樹さんの小説を読みました。
文章も発想も、攻めてるな、という印象が強かった。
まだデビューから数年しかたっていないころの短編集です。

「螢」は『ノルウェイの森』の原型にもなっている短編で、
読んでみると、なんとなく懐かしさを感じました。
そしておもしろかったし、
その攻めた具合についてばかりが気になって読んでしまいましたが、
それも小説を書くための勉強というか、
「こういう方法論もあるんだね」ということを知るというか、
もうこういった作品はあるから同じものはつくらないようにするだとか、
つまりは、自分の創作を、
より自由にするための読書体験になったかなあ、と思います。

どれもよくできているし、
その、意識と無意識の狭間でしかとらえられないような、
意識の上ですれすれだといった体でとらえられるような、
そんな感覚的なものを描写する著者の力はさすがだなと
再度、感じ入りました。

お気にいりは「めくらやなぎと眠る女」です。
短編のすべての描写、文章に無駄があってはいけなくて、
すべてが繋がっているべきだ、みたいな方法論があるように、
なんかで読みましたが、
この短編にはそういったところが希薄でしたね。
老人たちがバスに乗り合わせていることに、
もしかすると深淵な意味があるのかもしれないですが、
僕にしてみればデザインとか構図的な配置だとか、
そういう種類の文章の並べ方に思えた。
わかりやすい伏線であるとか、
そういった意識で簡単にとらえられるような、
意味上でのつながりばかり短編を編まなくても、
これだけ、「読める」小説ができあがるじゃないか、と
そんな感慨を抱きました。

文章もさっぱりしているし、
裏表紙に「リリックな」と書かれていました。
ぼくがさきほど、構図的だとかデザインだとかいったのを、
もうちょっと咀嚼して考てみると、
リリックに近くなるような気もします。
そんな感じで、
村上春樹作品の気持ちよさを感じらる作品集でした。


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