ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

これさえあれば!コンテチーズ

2016-12-13 10:28:07 | おいしい食べもん
12月はパーティーの季節
特に、ワインが関係するパーティーでは、“チーズ盛り合わせ”が登場する機会が多いですよね?

ホームパーティーでは、それほど多くの種類のチーズを用意するのは大変かもしれませんが、
“これがあれば大丈夫!”というチーズがあります。

それは、フランスチーズの 「COMTE - コンテ」



コンテは、フランス東部のジュラ山脈一帯でつくられる大型のハードタイプチーズです。
このあたりはアルプスに近く、酪農がさかんな土地で、1000年以上も前から伝統的にチーズつくりが行なわれてきました。

昔は冷蔵庫なんてありませんでしたから、搾った牛乳を長期保存するためには“チーズ”という形が最適でした。
大型のハードチーズは、半年、1年、2年…と熟成してくれますからね。

コンテ一玉は、直径約60cm、高さ10cm、重さは約40kg。
一玉をつくるのに、400~450kgのミルクが必要です。



今年の11月、フランスのコンテチーズ生産者協会から、広報責任者のオーレリア・シミエさんと、チーズを扱うプロ(フロマジェ)のMOFマーク・ジャナンさんが来日し、コンテチーズのプレゼンテーションを行なってくれました。


左)オーレリア・シミエさん  右)マーク・ジャナンさん

MOFとは?
フランスには、フランスの文化を継承するにふさわしい職人に授与される称号があり、それが「国家最優秀職人賞- MOF(Meilleur Ouvrier de France)」です。
チーズのフロマジェだけでなく、菓子職人のパティシェ、チョコレート職人のショコラティエなどにもMOFがあり、非常に名誉ある称号なのです。

マークさん(30歳)がMOFを取得したのは2015年のこと。
それまでに一度挑戦していますが、失敗し、二度目の挑戦でMOFに認定されました。
2015年は、40人のチーズ職人がチャレンジし、MOFに認定されたのは、マークさんともう一人だけで、つまり、たった2人!
マークさんによると、この年のショコラティエ部門では、認定ゼロだったそうです。

要は、MOFにふさわしい技術、知識、プレゼンテーション能力を持った人だけに授与される、最高に名誉ある称号なんですね。



ちなみに、MOF認定されると、襟にフランス国旗の三色カラー(トリコロール)があしらわれたコックコートを着用できるようです。
マークさんの襟元を見ると、たしかに!

マークさんは、代々チーズを仕事とする家系の5代目
初代がチーズづくりをしていて、マークさんの祖父が1960年にチーズショップを、ジュラのシャンパニョル(Champagnole)という街で開業しました。

現在、店はマークさんが継ぎ、約200種類以上のチーズを扱っています。
もちろん、地元のチーズであるコンテも取扱っており、10~15カ所のチーズ工房のコンテを取り寄せています。
コンテは、チーズ工房によっても、熟成の仕方によっても、味わいが違ってくるからです。



ということで、今回は異なるチーズ工房の4種のコンテチーズを食べ比べてみました。
熟成期間も異なっています。



左端は、2015年10月製造の若いコンテ。夏の草を食べた牛の乳からつくられたので、ミルクの色が濃く、チーズも色が濃くなっています。
チーズは弾力があります。味わいはまだミルクっぽい感じがあり、とても食べやすいタイプ。

左から2つめは2015年6月製造。色はやや白っぽく、少し水分が抜けて詰まった感じがあります。アミノ酸の結晶もかすかに見られます。香りが濃厚で、ちょっと官能的。味わいも濃厚で、ねっとり感があり、いい感じに熟成しています。
マークさんによると、「コンテの典型ともいえるコンテ」だそうです。

右から2つめも2015年6月製造ですが、チーズ工房と熟成会社が異なります。こちらも水分が抜け、すぐ手で割れる状態で、味わいは旨味が凝縮しています。香りはひとつ前のものよりも控えめ。
「チーズに詳しい人向け」と、マークさん。

右端は2012年10月製造で、熟成会社の熟成庫で2年熟成後、マークさんがさらに2年熟成させたチーズです。色が白っぽく、アミノ酸の結晶がしっかりあり、ポロポロします。口の中に入れるとジョリジョリします。塩っぽさはありますが、熟成を重ねているので、甘みも感じました。
「ヴァン・ジョーヌに合う。マロングラッセ、チョコレートにも」と、マークさん。
そんなわけで、チョコレートが添えられていました。おいしい~




ワインとも合わせてみました。
左が「ヴァン・ジョーヌ」、右が「アルボワ」で、どちらも地元ジュラのワインです。

「ヴァン・ジョーヌ」は特別な醸造方法でつくられ、“黄ワイン!と呼ばれており、ヘーゼルナッツのような独特の風味、クセがあります。
こんなクセのあるワインには、右2つの濃厚な味のコンテが合いますね。
「アルボワ」はフルーツの風味が濃厚だったので、左側2つのコンテがオススメ。

「コンテチーズは、そのまま食べるのが一番おいしい」とマークさんは言います。
その上で、「ハチミツやジュレを付け足す」という食べ方も提案してくれました。
上のお皿の右下に置かれているのが、ヴァン・ジョーヌでつくったジュレです。



ヴァン・ジョーヌのジュレ -地元では瓶詰めで普通に売られているそう

うまみが凝縮し、塩気も感じられるコンテと甘いワインジュレは、さすがによく合いました。





マークさんが、コンテの切り方を紹介してくれています。
上は、ピアノ線を使ってカットする方法です。



大きなナイフで切る方法もあります。
ちなみに、チーズは本物ではなく、軽い模型です(笑)



コンテは、AOPチーズとしてもっとも多い生産量があり(2015年度は64,070トン)、フランス人が最もよく食べ、好むチーズといわれています。

若いものから熟成を重ねたものまで、さらには工房の違いもあり、さまざまなコンテチーズがありますから、色々と食べ比べて、自分好みのものを見つけられると楽しいですね。

マークさんは、そのまま食べるのが一番と言っていましたが、
オーレリアさんは、魚料理のソースに入れて味に深みやクリーミーさを加えたり、軽いものは朝食に食べたり、風味が強いタイプはアペリティフに食べたり、ジュラのワインと組み合わせたり、という食べ方も紹介してくれました。

ワインは、シャンパーニュのようなスパークリングワインも合うそうで、お茶、日本酒との組み合わせもオススメだそうですよ。

ということで、パーティーではコンテを用意しておくと完璧! ってことですね(笑)



【参考】 世界最優秀フロマジェが語るコンテの魅力 → コチラ


コメント
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