ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

レバノンワインの可能性 - The Wine Traveler Japan road show

2016-12-09 17:24:55 | ワイン&酒
昨日はイスラエルワインを紹介しましたが、
本日は、そのイスラエルの北部の レバノンワイン を取り上げたいと思います。

レバノンワインについては、すでに何度か紹介してきましたが、重要な取材をまだ紹介していないことに気付きました。
それは2015年3月のもので、かなり遅ればせながら、なのですが、イスラエルが出てきたので、改めて紹介します。


Mr. Michael Karam

在英のジャーナリスト/ワインライターのマイケル・カラム氏は、本人はイギリス生まれですが、両親がレバノン人です。
「The World Atlas of Wine(ver.7)」 の寄稿者でもあるマイケル氏は、自分の出自もあり、「Michael Karam's Lebanese Wines」という著書も2010年に発行しています。

つまり、カラム氏はレバノンワインのスペシャリスト
その彼が、レバノンワイン普及のため、レバノンの7つのワイナリーとともに、「Wine Traveler」と題した世界主要15都市、24回のワイン試飲会を行なうワールドプログラムを、2015年から2年間にわたって開催することになりました。

その第一弾に選ばれたのが東京で、カラム氏によるレバノンワインのマスタークラスセミナーが、2015年3月に開催されました。
セミナーでは、レバノンワインの歴史から現在に至るまでと、7つのワイナリーの解説およびワインテイスティングが行なわれました。




レバノンは地中海の東に位置し、北東部はシリア、南はイスラエルと隣接。
面積はイスラエルの半分。首都はベイルート。
フランス委任統治領時代(1926~1943年)があったため、フランスの影響が強く、フランス語は準公用語的に使われています。

ワインの歴史から見ると、レバノンもワイン発祥のエリアにあります。
というのも、ベイルートから北に約30km離れたビブロスの遺跡(ユネスコの世界文化遺産に指定)で、紀元前8000年頃の石器時代の地層から、ブドウの種子が発見されているからです。
ただし、この種子は栽培されたブドウのものではないようです。
栽培されたブドウの最古の種子は紀元前7000~5000年の時代のもので、ジョージアから見つかっています。

ともかくも、地中海東岸から黒海、カスピ海周辺で、ワインが誕生したわけです。



現在、レバノンには40を超えるワイナリーがあり、外資も参入しています。

このワールド・トラベラーのプログラムに参加しているのは、7つのワイナリーです。




Château St Thomas
ベカー高原で100年以上アラック(蒸留酒)づくりをしてきた一家が1958年からワイン造りに着手。ワイナリー設立は1997年。

Domaine Wardy
1893年よりアラック造りに携わり、ワイナリー創業は1996年。
現在は最も革新的なワイナリーのひとつとされている。ベカー高原。

Domaine des Tourelles
創業1868年。レバノンの商業ワイン最古の生産者で、フランス人技師が創立し、孫の代に名を馳せ、現在へと繋げている。レバノンのロゼワインの第一人者。ベカー高原。

Château Kefraya
創業1978年、レバノン第二の大きな生産者で、ベカー高原の西部に位置。
レバノンワインとして初めて某有名評論家が90点以上を与えた(1996年ヴィンテージ)。

Château Ksara
1857年、イエズス会の修道士により創業。現在はレバノン最大の生産者となり、ワイン、アラック、ブランデーを生産。ベカー高原。

Château Ka
1974年、ベカー高原東部に創業。オーナーは1960年代に仏ブルゴーニュでワインメーカーとしての経験を積んでいる。

Ixir
2008年創業。オーナーの一人は、レバノン系の両親を持つ、あのカルロス・ゴーン氏。
レバノンで最も新しく野心的なプロジェクトとして注目されているワイナリー。
バトゥルーン、ベカー高原。



まずは白ワインですが、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ヴィオニエ、ミュスカ等のフランス系ブドウ品種のブレンドワインが多く、シャトー・ケフラヤの「Blanc de Blancs 2013」に至っては、9品種をブレンドしています。




気になったのは、古い土着品種の Obeideh(オバイデ)
Wardyの「Clos Blanc 2013」にもブレンドされていますが、「St ThomasのObeideh 2013」はオバイデ100%。
オバイデは、シャルドネに近い品種といわれていますが、シャルドネのワインとも違う風味の白ワインで、うまみが濃厚です。アルコール度数は13.5%。



テイスティング後半は、ロゼと赤



レバノンのロゼの第一人者である「Domaine des Tourelles」は、やはりロゼを出してきました。
ここのロゼは、私が世話人を務めるLOVE ROSEにもエントリーされています。
2013年は、テンプラニーリョ、シラー、カベルネ・ソーヴィニヨン、サンソーのブレンド。

他の生産者の赤ワインは国際品種のブレンドが多いですが、St Thomasは、ピノ・ノワール100%(2008年)。
ゴーン氏のイクシールの赤は、テンプラニーリョ、カベルネ・ソーヴィニヨン、シラーの他に、Caladocという交配品種(グルナッシュ×マルベック)がブレンドされていました。フランスのローヌ南部の品種で、味わいはグルナッシュに近いようです。
赤もフランスの影響が大きいですね。



赤は、どれも色が濃いものが多かったです。



レバノンという国も、普段はなかなか身近な存在ではありませんが、ワインを通してみると、地中海でヨーロッパのワイン生産主要国とつながり、ワイン発祥の古い歴史で、今注目を浴びつつあるトルコやジョージア、モルドバ、アルメニアといった黒海周辺の国々ともつながっています。

フランス統治の時代の影響を受け、フランスワインに近いスタイルのものが多いですが、独自の土着品種もあり、オリジナリティーのあるワインが色々とありそうです。

今回は、7つのワイナリーによるプロモーションでしたが、レバノンの他のワイナリーのワインもあれこれ試してみたくなりました。

※今回の7ワイナイリーのうち、いくつかは日本に輸入されています



レバノンワインについては以前に詳しく書きましたので、参考にしてください。

■レバノンのワインが日本でも楽しめます【前編】 → コチラ

■レバノンのワインが日本でも楽しめます【後編】→ コチラ

■シャトーミュザール 日本に再上陸 → コチラ

■レバノン注目エリアの新ワインが旨い! → コチラ

■レバノンワインとフレンチのマリアージュを検証→ コチラ

コメント
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