ワインな ささやき

ワインジャーナリスト “綿引まゆみ” (Mayumi Watabiki) の公式ブログ

ドイツワインの伝統と最旬―その3

2016-12-30 12:33:30 | ワイン&酒
2回にわたって、現代の最旬ドイツワイン&地球の貴重な財産-伝統的ドイツワインを紹介してきましたが、いよいよ今日で一区切りとなります。

かなり長くなりますが、まずは赤ワインからスタートします。

白ワインのイメージが強いドイツですが、全体の1/3は赤ワインです(約35%)。

赤ワインの中ではシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)がダントツに多く、ドイツのブドウ品種全体でも3位に入っています。
意外かもしれませんが、実はドイツのピノ・ノワールの生産量は、世界では、フランス、アメリカに次いで3位なんです。



Ahrweiler Rosenthal Spätburgunder Spätlese 1973
Staatliche Weinbandomaene Marienthal
 (Ahr)

さすが、ディープなドイツワイン飲みの忘年会でした。
1973年のアールのシュペートブルグンダーなんていうお宝ワインが登場しました。

アールはドイツワインの13生産地の中で10位と、小さな産地ですが、赤ワインの比率が約85%(9割近くがシュペートブルグンダー)という地域です。
だからこそ、43年も経過した古いヴィンテージワインが見つかるんですね。



コルクはこんな状態

飲んでみると、磯っぽい風味がします。
シュペトレーゼ(遅摘み)表記ですが、味わいは辛口タイプのはずです。
ですが、甘口?かと思うような甘さがありました。
ワインの寿命としては、もうかなりギリギリな感じでしたが、ここまで長生きしてくれてありがとう!



栓は蝋封



昨日紹介した「Schloss Johannisberger Riesling Spätlese trocken 1985」も容量が700mlでしたが、このボトルも700mlでした。
レギュラーボトルは750mlですが、昔は700mlサイズのボトルが使われていました。
こうした当時の名残りと出合うと、なんだか嬉しくなりますね。



Frühburgunder 2013 Kloster Marienthal (Ahr)

こちらもアール地域ですが、ブドウはフリューブルグンダーになります。そして、若い。
フリューブルグンダーはアール地域で第3位のブドウ品種で、生産量はシュペートブルグンダーの1割ほど。
“フリュー”は“早い”の意味。シュペートブルグンダーの早生成熟品種です。
ブラインドで飲んだ時に、ピノ・ノワールかも?と思いました。まだまだ若さたっぷり。



Grand Prix Spätburgunder 2008 Weingut Schloss Westerhaus  (Rheinhessen)

エチケットだけ見ると、どこのワインなのか、まったくわかりません(笑)
ラインヘッセンのシュペートブルグンダーでした。アルコール度数13%。
色が薄く、かな~り軽やか。



このシュペートブルグンダーは、メンバーの一人がドイツから持ち帰ってくれたドイツのライ麦入りパンとよく合いました。
パンの香ばしさといい相性だったのかも。ライ麦パンのサンドイッチにして、軽めのマッチングで楽しむのが良さそうかな。




Pinot Cuvee extra brut 2012 Weingut Am Stein (Franken)

ピノ・ノワールが使われているワインで、色はロゼ、タイプはスパークリング
ピノ・キュヴェという名前からして、もしや、シャンパーニュっぽいスパークリング?
飲んでみると、イチゴっぽさがあります。甘酸っぱくて、しっとりとした果肉感があり、とてもかわいらしいスパークリングでした。
ワイナリーは1890年まで遡るファミリーの経営で、ビオディナミを実践しています。
運営しているレストランは、「ゴー・ミヨ」ガイドでも評価されているとか。
ここは行ってみたくなりますね。フランケン地方です。



さて、白に戻りましょう。


Silvaner trocken MÖNCHSHOF GG 2015 Weingut Bickel-Stumpf (Franken)

この生産者は、フランスのワインガイド誌(2015年版)で注目急上昇だとか。
フランケン地方のワイナリーで、ブドウ品種はジルバーナ(シルバーナ)
ワイン名-MÖNCHSHOFの発音が難しくてカナ表記できないのですが、意味は修道士の館。



フレッシュで、繊細な味わいの白ワインですが、アルコール度数を見ると14%。
ドイツの白ワインにしてはかなり高いと思うのですが、実際には高く感じません。
非常にうまくつくっているんでしょうね。

ここもフランケン地方。
その1 でも出てきたように、現代の注目ワイン生産者はフランケン地方で見つかる傾向が高いように思います。

ドイツワインといえば、日本では、ラインガウ、モーゼルが伝統産地として認識されてきていましたが、今や、その他のエリアを見逃してはいけない、ってことです。



エチケットにある「GG」は、 GROSSES GEWÄCHS(グローセス・ゲヴェックス)の略です。
ドイツワインは、2012年から格付け表記が変わりました。
ドイツワインの格付けピラミッドの最上級は「Grosse Lage(グローセ・ラーゲ)」ですが、高品質ワイン生産者団体であるVDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)は、Grosse Lageの辛口ワインを、独自基準で「グローセス・ゲヴェックス」と規定しています。
この「GG」は、日本のトップソムリエといわれる方も何のことかわからなかったそうで…



詳しく説明できなくて心苦しいですが、こちらの白ワインもドイツ忘年会で飲みました。



安定の味わいです。



私が持参したのは、昨年訪問したミッテルラインの若手生産者のリースリングの半辛口


STEILHANG Riesling halbtrocken 2013 Weingut Philipps Mühle (Mittelrhein)

シンプルでさっぱりした味わいなので、軽いフードに合わせやすいワインです。
アルコール度数10.5%と軽いのも嬉しいポイント。



ミッテルラインはライン川(Rhein)の中流(mittel)にあることから名が付いています。
ワイン産地としては小さく、13の産地の12番目ですが、観光で有名な“ローレライ”の岩山はミッテルラインにあります。



Weingut Philipps Mühleは、そのローレライの対岸にあります。
2015年3月、ワイナリーを訪問し、生産者の話を聞きました。



「ミッテルラインは有名産地ではないし、畑が小さく、斜面が急で仕事がキツイから、若者はなかなかワイナリーを継ぎたがらないんです…」と、Thomas Philipps。

彼が手にしているのは、“ローレライ”という名前をつけた軽やかな白ワインで、ウエルカムワインとしていただきました。




Philipps Mühleの畑は4.5ha。土壌はデボン紀のスレート土壌。
90%はリースリングで、ミュラー・トゥルガウが10%。
※現在は5ha、リースリング80%、ミュラー・トゥルガウ15%、ヴァイスブルグンダー5%



ミュラー・トゥルガウもよく出来ていて、どれを買おうか悩みましたが、いちばん彼らしく感じたリースリングのハルプトロッケンを選びました。



Philipps Mühleは若手グループ“Generation Riesling”に加盟し、弟のMartinとともに前向きな姿勢でワインづくりに取り組んでいます。




ぜひ頑張ってほしい若手生産者です。





今回のドイツワイン忘年会で飲んだワインは、20本超え。
ドイツワインは実に多彩で、奥が深い!



格付けとか、色々複雑な面はありますが、まずは飲んでみることから始まります。
2017年は、ドイツワインに浸ってみる、というのもいいかもしれませんよ(笑)

会場になったレストランは、また改めて紹介します。


【参考】
ドイツワインの伝統と最旬―その1 → コチラ

ドイツワインの伝統と最旬―その2 → コチラ

コメント
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