2月22日 おはよう日本
JR川崎駅前に集まる若者たち。
ラップは普段口にすることのない自分の境遇や思いについて
即興で出た言葉を1対1でぶつけあう。
♪ 俺の学費は 大抵 自分のバイト代から出してる
お前とは違う
♪ 汗水たらし 世の中で俺らだって頑張ってる
なのにバッドボーイだったり 白い目で見られる
だって日本ってそうでしょ
学校や年齢はばらばら。
しかしほとんどの若者に
1人親の家庭をからかわれたり容姿で差別されたりした経験がある。
「僕はいろいろと親に迷惑かけてきたんで。」
「自分の伝えたい思いがいろいろあって
自分のこともラップなら伝えられると思って。」
この集まりを開いている田中優作さん(21)。
家庭や学校に居場所がないと感じている彼らにとってこうした場所が必要だと考えている。
(田中優作さん)
「学校の先生や親に言えないことをラップにして言って
解決出来なくも言えることが大切なんで
そういう場所なのかなって思って
聞いていれば人間が変わるかなって。」
実は田中さんも10代のころ家族のことで悩みを抱えていた。
田中さんが小学生のとき両親が離婚。
父親も母親も家を出ていった。
以来 祖父の平吉さんに育てられ
今では平吉さんの営む建築関係の会社を手伝っている。
親がいないことを言われるのが嫌で田中さんは中学校に行かなくなった。
生活は荒れ
けんかに明け暮れる日々が続いた。
(祖父 平吉さん)
「中学時代が一番 誰も身内のいうことを聞かなかった。
大変だった。」
しかし当時の田中さんには不満を誰かに伝えるすべは無かった。
(田中優作さん)
「学校も行かなかったし
言える人がいなかった。
ただため込んでけんかとかそういう事してストレス発散して
八つ当たり的なこと多かったんで
今思えばバカだなって思うんですけど。」
そのころ出会ったのがラップだった。
自分の人生を否定されたように感じていたこともラップにすれば誰かが聴いてくれる。
田中さんはその魅力にのめり込んでいった。
♪ 親父がいなくなった中1
何もなくなっちまった 雰囲気
殴る母親 別に関係ない
DVだろうが 真髄つくことはない
どんなでもいいや 言葉吐けば 全部変わった
(田中優作さん)
「世間から見たら自分がやっていることって相当バカじゃないのっていうことだと思うんです。
それを歌に変えると聴いてくれるじゃないですか。
自分にしか書けない歌詞があるし
人それぞれ自分にしか書けない歌詞があるんで
自分は誰かが聴いてくれるのが一番でかいです。」
2年前 田中さんが友人と路上でラップを始めたところ次第に若者が集まるようになった。
毎週1回のラップを待ちわびている少年がいる。
山内博仁さん(16)。
去年友人とともに訪れたとき自分の境遇を歌うラップに魅力を感じ
通うようになった。
♪ 地獄に落ちたまま それで終わりか
はい上がる クモの糸
(山内博仁さん)
「自分が体験したことが武器になるのがラップだから
俺はこうしようと
それが原動力になることもあります。」
山内さんの家族は両親と兄、妹の5人家族だった。
山内さんはサッカーを教えてくれるやさしい祐孝さんのことが大好きだった。
しかし祐孝さんは山内さんが小学6年生のとき癌で亡くなった。
家族の大きな支えを失った山内さんたち家族の生活は一変する。
(山内博仁さん)
「みんなはお父さんがいてお母さんがいるっていう家庭が
俺は違うんだなっていう感覚になっちゃいましたね。
だから他の人と同じようなことはできないし
周りの人と全く同じような生活ができないし。」
将来に不安を感じた山内さんは中学に入ってたびたび学校を休むようになる。
夜 友人たちと出歩くことが次第に増えていった。
1年前に同世代の少年たちが起こした事件は他人事ではないと感じている。
(山内博仁さん)
「遊びが悪いことだったり
どこかで仲間でたまって悪いことしたりってなっちゃっているんですよ。
その気持ちも俺も分からなくはないんです。」
ラップと出会い自分のことを歌ううちに山内さんの生活は変わり始めた。
今では家計を助けるためにアルバイトをしながら定時制高校に通っている。
ラップを通して自分と同じような境遇の若者に出会えたことが何よりの支えだと感じている。
♪ みんな川崎来てくれるマイメン(親友)
仲間がいるぜ
やることをやって お前も立ってる
おれも立ってる 同じだぜ
これができなかったら おれはヒップホップが続けれねえ
(山内博仁さん)
「同じ境遇の人はいっぱいいます。
母子家庭の人もいっぱいいるし
自分と同じ大変な思いをしている人もいるわけだし
だから同じようなことをやっている仲間でおれは気が許せます。」
田中さんは去年の事件が起きてから
この場所が重みを増していると感じている。
(田中優作さん)
「普段 友達とあんまり言い合うことってないと思うんです。
ラップで言えばラップなんでどっちも嫌な思いしないで
そう思ってたんだって
友達関係も深まると思うし
後輩先輩関係なく言いたいこと言ったり楽しくやれば。」
様々な悩みを抱える若者たちにとって
本当の自分を隠さずに出せる場所になっている。
♪ 俺らは真っ暗
ここの川崎からエネルギーもらって
♪ 俺のスタイル 一番光ってんじゃん
間違いなく 俺が一番星さ
2月20日 経済フロントライン
電通の調査による広告の市場規模(2014年)
全体で約6兆500億円
そのうちテレビ・ラジオ・新聞・雑誌は合わせて2兆9400億円
ネット広告は1兆500億円(10年前の150倍)。
特に情報が口コミという形で次々と広がるSNSの効果に注目する企業が増えている。
東京 多摩市にあるテーマパークではSNSによるPRで入場者が急増している。
これまで広告はテレビCMが中心で毎年1億円以上かけていた。
しかし最近は必ずしも客を十分に呼び込めず
入場者数は減少傾向にあった。
そこで去年 テレビCMを一切廃止。
若い女性にターゲットを絞って直接アピールするため
SNSを活用する戦略に切り替えたのである。
(サンリオエンターテイメント 宣伝部 真鍋和弘さん)
「テレビを見ているよりインターネットやスマホを触っている時間の方が長いという人が大勢いる。
そういった方への情報発信
我々の意図するところをどう伝えるか。」
考え出したのが自分に似せたオリジナルキャラクターを作れるサイト。
顔の輪郭や髪形など自由にパーツを組み合わせて作ることが出来る。
このサイトではフェイスブックやツイッターなどのSNSに投稿できる仕組みになっている。
これが大人気となり
わずか半年で延べ1900万人が利用した。
「ツイッターとかフェイスブックのアイコンにしたり
親子で楽しんでやっている。」
さらにこのサイトの利用者はテーマパークに来場すると特典が得られるようになっている。
作った自分のキャラクターを機械に読み込ませると
画面に登場。
おなじみの人気キャラクターたちと共演することが出来る。
割引券を兼ねたオリジナルカードも発行できる。
来場した客がその様子をSNSN上で発信すればさらなるPRにつながる。
「インスタグラムとかブログに結構アップしている。」
「SNSを見て
ここ行きたいなと思って友達を誘ってきたりする。」
こうした戦略で入場者の数は1年で25%増加した。
(サンリオエンターテイメント 宣伝部 真鍋和弘さん)
「個人が自分の感想・感覚を生で伝えることが出来る時代。
そこの波に我々の情報も乗せていく。」
SNSの口コミが企業側の意図しないところで思わぬヒットにつながるケースも出ている。
それまで売れ筋商品ではなかったマジックハンド。
“コタツから出ずにリモコンが取れる”と店頭でうたったところ
これがツイッターに投稿され大反響となった。
リツイートの数が1万4000件を超えたのである。
(カインズホーム 須長貴之さん)
「SNSの反響ですね。
非常に驚いています。」
都内にあるシーフードレストランはSNSで人気に火がついた。
訪れた客が撮影しているのは手づかみで食べる豪快な見た目の料理。
SNSにアップされた写真を見た人たちが
自分たちも体験してみたいと連日殺到している。
「友達がインスタグラムに上げていて
行ってみたいなと思った。
楽しいです。」
SNSによるPRを専門に手掛ける広告代理店も登場している。
企業から依頼を受けると
その企業の商品のことをSNSで発信しているファンを探す。
そうしたファンを商品をPRしてくれるアンバサダーと名付け協力を依頼する。
商品の情報を優先的に提供し
それをSNSで発信してもらう。
(アジャイルメディア・ネットワーク 上田怜史社長)
「ファンの方を通じて情報発信をする
何か価値を一緒に作っていくことが非常に差別化のポイントになる。
アンバサダーをビジネスパートナーとして活用する。
一緒に活躍してもらうのがこれからの成長に欠かせない。」
ブロックで知られるおもちゃメーカー。
現在600人以上のアンバサダーを使ってPRに取り組んでいる。
少しでも活発に発信してもらおうとイベントを開いた。
新商品の情報を先行して提供。
商品の開発秘話なども紹介した。
アンバサダーの1人 中村真緒さん。
実はアンバサダーは金銭的な報酬をもらっていない。
それでも企業側から特別な情報を得られるため続けているという。
(アンバサダー 中村真緒さん)
「社員の人のリアルな話 仕事とかの。
ブロックはこういうところにこだわっているという話を聞けて
周りの人に実際にやってもらって
楽しかったと言ってもらえればうれしい。」
企業から報酬を得ていないアンバサダーたちは否定的な情報を発信することもある。
しかし思ったことを率直に発信してもらうことも
かえって消費者の支持につながると企業は見ている。
(おもちゃメーカー カワダ 販売促進部 舘崎匡啓課長)
「商品のマイナス面を指摘してくれる方は本当にありがたい。
生活者の生の声にお客様は興味を持つ。
信頼がある。」
大きな効果を生んでいるSNS]によるPR。
しかしいったん悪い口コミが広がると企業に大きなダメージを与える。
専門家はSNSの時代 企業にはよりきめ細やかな対応が求められるという。
(広告専門誌「宣伝会議」 田中里沙編集室長)
「SNS広告をやると企業の人柄が伝わるようなコミュニケーションをやる。
企業の姿勢を全面的に見られる。
消費者が何か反応したときにもどんなタイミングで何を返すかが求められる。
うまくいく面もあれば悪くなる面もあり
緊張感のある広告の環境になっている。」
2月29日 編集手帳
元証券アナリストで、
日本での生活も長いデービッド・アトキンソンさんは、
2020年の外国人観光客の目標値として、
5600万人を掲げている。
近年、
訪日客が急増しているとはいえ、
昨年は1973万人だったのだから、
途方もない数字だ。
日本の豊かな自然や文化、
食事など、
観光資源の潜在力を買った上での、
思い切った提言のようだ。
もっとも、
日本の現状に対しては手厳しい。
観光名所に出来る長蛇の列、
文化財の英文解説のお粗末さ、
富裕層向けサービスの不足……。
日本人が「おもてなし」を声高に叫べば叫ぶほど、
外国人は冷ややかになると批判する(『新・観光立国論』)
反論もあるだろうが、
確かに古寺などの前で「これは何か」と首をかしげる外国人の姿を見かける。
訪日客に人気のJR九州・豪華列車の抽選倍率は26倍だが、
富裕層向け企画は、
もっと考案されていい。
期待外れの観光地は「ツーリスト・トラップ」と呼ばれるそうだ。
そのワースト10の一つに、
東京を挙げるネットのサイトもある。
外国人の多様なニーズに応え、
経済活性化につなげられるか。
今後が正念場だ。
2月20日 おはよう日本
福島県が全国18の都道府県を対象にインターネットで行ったアンケート結果
福島について「関心がない」「どちらでもない」が4割にのぼった。
被災地である福島県に対する関心が薄れ
震災が風化しているのではないかと県は強い危機感を抱いている。
また農業や漁業の復興の遅れについても
県はその理由の1つに
原発事故の風評被害が払しょくできていないためとしている。
そこでこうした課題を克服しようと目をつけたのが
“クールジャパン”の代名詞にもなっているアニメである。
2月15日 完成披露試写会が開かれた。
「未来への手紙 この道の途中から」と題されたこのアニメ。
4通目の手紙 カツオカンバック
(ウミネコ)
「腹減ったな。」
「確かにずいぶんこの辺も復興しましたね。」
「そうね。」
この短編はウミネコを主人公にして
多くの人に支えられながら漁業が復興していく様子をコミカルに描いている。
(ウミネコ)
「近海の漁場はまだ漁はできないけど
こうして地元の漁師さんといろんな県の漁師さんたちに支えられて
小名浜の復興は進んでいるのよ。」
今回作られたのは実話をもとにした約2分の短編アニメ10本。
故郷を離れる人がいるなかで
福島にとどまり生きることを選んだ女性の気持ちを淡々と描いたものもある。
ここにはわたし1人きり。
みんなどこかへ逃げてしまったのだろうか。
まるで色を失ったようなこの世界で
私は何が正しいのかわからなくなっていく。
それぞれに正しい選択をしたのだろうか。
いや 正しい選択って何だろう。
状況が変われば選択の是非はどちらにも変わる。
ただその時はそれがいいと思って選択したんじゃないのかな。
何が正しいのか
答えを探し続けることしか
今はまだできないのだと思う。
アニメの政策を指揮したのは福島県出身のクリエイティブディレクター 箭内道彦さん。
県の情報発信についてアドバイスを行ってきた。
箭内さんは
震災から5年が経とうとする福島にとって大切なことは
より多くの人に関心や共感を持ってもらうことだと考えている。
(福島県クリエイティブディレクター 箭内道彦さん)
「福島に無関心な人にも伝えなければいけない。
否定的な思いを持っている方にもちゃんとわかってもらわなければいけない。
大きな声で叫べばその分たくさんの人の胸に届くかというと
そういうことじゃない。
丁寧に丁寧にチャーミングにコミュニケーションをすることが
今すごく大事だと思う。」
箭内さんに協力を依頼した福島県の内堀雅雄知事。
国内外のイベントで食品の安全・安心や観光のPRをするなか
難しさを感じることもあったという。
(福島県 内堀雅雄知事)
「風評・風化を防止するために一番いいのは対面。
実際に顔を見て話をするとかなり効果がある。
ただやはり多くの方に届けるための手段・工夫をしなければいけない。
そのときにアドバイスをいただいたのは
アニメがあるじゃないかということだった。」
試写会にはネットでこのアニメに対する口コミを広げてもらおうと
ブログを書いているブロガー30人を招いた。
(参加したブロガー)
「10作品は1つ1つがそれぞれの思いがあって
私たちがそれを受け取ることで
福島の今後につなげていくことができたらと感じた。」
「復興に向けて私も陰ながら応援していきたいと思った。」
福島県は今回のアニメをネットで無料配信。
今後英語版も制作し世界に発信していく考えである。
(福島県クリエイティブディレクター 箭内道彦さん)
「これを見た人たちが何か誤解していたものが理解に変わったり
自分の立ち位置
思いに気が付いたり
いろんな人がいろんな動きを始めることができたら
それがこのアニメーションにとっての最大の展開。」
2月20日 おはよう日本
庶民の足として親しまれているインドの鉄道。
朝の通勤時間は乗客があふれ出るほどの混雑ぶりである。
その通勤列車で名物となっているのがいわゆる“列車バンド”。
首都ニューデリーと近郊を1時間半で結ぶ路線では約60組のバンドが自主的に活動している。
60年以上続く伝統である。
他人を敬うことの大切さや神への感謝を歌ったヒンズー教の民謡を演奏する。
こうした演奏が見られるのは主に地元の利用者が多い郊外を走る列車に限られている。
乗客は大音量の音楽を迷惑がるどころか一緒に盛り上がる。
(乗客)
「新しい路線もあるけど
歌が聴きたくてこの列車に乗ります。」
「朝 ここで音楽を聴き神に祈れば1日が上手くいく気がします。」
混み合った社内でも床に座ってゲームに興じたり
たばこを吸う人の姿が見られる。
列車の遅れも頻繁におきる。
いらいらしがちな乗客の気持ちを音楽で和らげようという取り組みである。
通勤列車で30年間歌い続けてきた サトビール・シンさん(52)。
12人のメンバーとともに毎朝 車内で民謡を披露している。
♪ 悪いことをするとばちがあたる
人に迷惑を変かけてはいけない
サトビールさんは約1時間の演奏を終えるとそのまま職場に向かう。
本業は家電製品のセールスマンである。
乗客のために歌うことが元気の源だという。
(サトビールさん)
「外回りの営業は普通40歳までですが
私は52歳でまだ現役です。
列車で歌うことがエネルギーになり
新鮮な気持ちにしてくれるのです。」
しかしそんな列車バンドにも時代の波が押し寄せている。
スマートフォンに見入って
音楽に耳を傾けてくれない人が増えている。
(サトビールさん)
「最近 若者たちはほとんど歌に参加してくれません。」
どうしたら自分の音楽を聴いてもらえるのか。
サトビールさんは自宅にバンドのメンバーを集め
新たな取り組みを始めた。
目をつけたのが国民によく知られているインド映画。
映画の中で流れる歌に
民謡の歌詞を合わせて歌おうというのである。
♪ 親の面倒を見ることは
この世で最も大切なことだ
伝統的な民謡の歌詞がインド人ならだれでも知っているメロディーに乗って流れる。
知り合いの家での集まりで演奏し
反応も確かめた。
準備した新しい民謡を披露する朝が来た。
(サトビールさん)
「皆さん!
通勤時間を有意義に過ごしましょう。
そしてこの歌の文化を守っていきましょう。」
♪ 清らかな心で神に祈れば
神は必ず助けてくれる
乗客たちの反応はまずまずだった。
(サトビールさん)
「歌は聴く人の心に届かなければ意味がありません。
乗客が気にいる音楽を作りたいです。
私はこの活動に誇りを持っています。」
長年 朝の通勤列車で心をいやしてきた“列車バンド”。
インド伝統の民謡は時代とともに形を変え
きょうも車内で響いている。
2月20日 おはよう日本
玉ねぎ(2分の1個 ±50g)
チュープ生姜(1cm)
ニンジンは高さ2~3cmの円柱形に切る etc.
料理レシピは分量がしっかり書かれている。
このレシピを作った五藤隆介さん(35)。
自宅でインターネット向けの日記ブログを書いて生計を立てているプロのブロガーである。
本格的に料理に取り組んだのは1年半前
妊娠した奥さんのつわりがひどくなったのがきっかけだった。
しかし始めた当初
大学は工学部に進んだ理系男子の五藤さんにとって
料理のレシピ本はよく理解できないあいまいな表現ばかりだった。
(五藤隆介さん)
「“塩こしょう適量”
“一口大に切る”とか
知識が足りなさ過ぎて何が書いてあるのかわからない。
料理のレシピに書いてあることって英語より難しかった。」
ならば工業製品を作るようなきっちりした手順書ならぬレシピを自分で作ればいいのではないか。
五藤さんが最初に取り組んだのは家庭の味の定番「肉じゃが」。
まずは材料の計量からである。
(五藤隆介さん)
「2個って書いてあるけど
2個って結構大きさが違うと思う。
それって味違ってしまわないのってビビッていた。」
材料の重さを1つ1つ測って記録。
個数ではなく重さの数値にこだわった。
そして切り方。
すべて一口大に切るが五藤さんは“一口大”がよくわからない。
(五藤隆介さん)
「客観的な数字っていったらいいですかね。
“大きめ”っていわれても全然わからない。
5㎝と言われれば人類みんな5㎝は一緒なので。」
そこで登場したのが定規。
五藤さんの料理には必需品である。
じゃがいもは切って1つ1つの辺を測定。
バランスの良い味には3㎝角がいいとわかった。
牛肉は5㎝に
これが五藤さんの肉じゃがのベストの一口大である。
何度も実験を繰り返し
いつでも同じ味。
誰が作っても失敗しない肉じゃがのレシピを完成させた。
“センスがなくてもできる肉じゃが”。
五藤さんが完成させた肉じゃがのレシピ
調理の過程がコンピュータープログラムのようなフローチャートで記されている。
材料を入れて強火で煮込み
アクが出ると「はい」の方向に戻り強火のままアクを取り除く。
アクが出亡くなればそのまま進行して20分煮込む。
(五藤隆介さん)
「実験の感じがけっこう好きで
それによっておいしいのができるとより満足度は高い。
上達できている真っ最中で楽しい。」
五藤さんがこれまで作った料理は700種類以上。
それらの料理を紹介したブログは1日約2,000人が読み
料理が苦手な人たちだけでなく料理が得意な人も注目している。
五藤さんが始めた料理は料理上手な奥さんにも好評である。
夫婦の会話も弾み
食卓は3人家族の憩いの場になっている。
(妻 晴菜さん)
「一緒にお料理できるから料理の話が通じるのが楽しいのと
子どものご飯を私が担当して
大人のご飯は旦那が作るのですごく楽。」
五藤さんの料理レシピは各地の理系男子を料理に取り込んでいる。
大阪で開かれた講演会。
集まった30人のうち3分の2が男性である。
(参加者)
「ブログを購読していて興味があった。
計測して失敗して改善してっていうところがすごいなって思ったし
勉強にもなった。」
(五藤隆介さん)
「全然できない人もこうすれば思ったより簡単にできますよ
ということが言えればというふうに思う。」
2月19日 キャッチ!
2年半前に180億ドル(1兆8,500億円)の負債抱えて破たんしたアメリカ デトロイト市。
財政を立て直すために予算が大幅に削減され
公共サービスにも大きな支障が出ている。
その1つが公立学校である。
学校の運営予算は財政破たんによりそれまでの3分の2以下に減らされた。
その影響で学校の建物は老朽化したまま放置され
慢性的な教材不足に陥っている。
こうしたなか劣悪な環境に抗議するため
1月 教師たちが集団で病欠するストを決行。
80以上の学校が休校になった。
子どもたちの立ち入りが禁止されているデトロイトの学校の校庭。
(スクールカウンセラー ラキア・ウィルソンさん)
「蒸気が吹きだしているんです。
正体はわかりません。
とても危険です。
そのせいで校庭の温度が43度にもなるんです。」
ここ2年間 駐車場の地下から下水の蒸気や液体が漏れ
数メートル離れたパイプからも噴出している。
「体育館の中はまるでホラー映画のようです。
床はグラグラで何か黒いものに覆われているんです。
黒カビだと言われました。
実際市の調査官もカビだといっています。」
建物の問題は何年も前からあったという。
市の調査官からは「条例違反だ」と指摘された。
(保健師 インディア・ブリンベリーさん)
「鼻血が出る人がたくさんいます。
嘔吐したり腹痛や頭痛を感じる人も毎日います。」
労働環境に抗議する教師の病欠ストで1月に80以上の学校が休校したことで
デトロイトの公立学校の建物の問題が注目されるようになった。
直後に市長がほぼ全ての学校の調査を命令した。
調査官が訪れた3つの高校で
カビやネズミ、虫の発生など30の規則違反が見つかった。
ボナーさんはデトロイトの技術学校で教えている。
(技術学校 教師 クリスタル・ボナーさん)
「設備が十分に備わっていないのに技術を教える学校だなんて言えません。
コンピューターは古くて時代遅れのものしかない。
授業に使う電子黒板がある教室もわずかしかない。」
(高校生 ルーカス・ビールさん)
「数学の教科書が足りません。
途中のページが無くなっている教科書もあります。
なので僕たちはちゃんとページがある教科書を探して写真に撮っています。」
別の高校の3年生カーソンさんは先生を応援するため生徒たちが企画したデモに参加した。
カーソンさんは
学校の設備が足りないとやる気が失われる、と話す。
(高校生 アシュレー・カーソンさん)
「見捨てられている気分です。
自分たちには価値がないって思わされます。
いま置かれている状況ではそう思わざるを得ません。」
ボナーさんは教師を続けているが
辞めた教師もたくさんいる。
“病欠スト”のあとデトロイト市は
もう同様のストを行わないよう訴えた。
(デトロイト市 学校担当 ズドロドウスキ広報部長)
「先生方の不満は理解しています。
私たちも同じ気持ちなのです。
でも一番重要なのは授業をすることです。
88もの学校が休校になるなんて子どもたちのためになりません。」
教員組合は
デトロイト市が必要最低限の教育設備を供給せず
適切なメンテナンスを行っていないと訴えた。
市はベストを尽くしているという。
(デトロイト市 学校担当 ズドロドウスキ広報部長)
「命や安全にかかわる問題にはベストをつくしています。
ただ屋根をかけかえるとか大きな事をする予算は無いんです。」
ビールさんは下級生のために改善を願っている。
でも自分の在学中はあきらめている。
(高校生 ルーカス・ビールさん)
「僕はもうすぐ卒業です。
卒業までに必要なことの半分も身に付けられないでしょう。
設備が整ってないんですから。」
2月18日 キャッチ!
中国の遼寧省 中朝国境地域。
中国は約1,300㎞にわたって北朝鮮と国境を接している。
冬になれば凍結した川を渡って北朝鮮から人が行き来できるほどの川幅である。
川沿いには越境を防ぐための鉄条網が張り巡らされている。
この数年の間にも次々と増設された。
数十メートル間隔で監視カメラが設置されるほどの厳しい警備体制である。
90年代後半以降
北朝鮮が深刻な食糧難に陥った「苦難の行軍」と呼ばれる時代
中国にはこの川を渡って大量の脱北者が流入した。
今では大幅に減ったが
脱北者や一時的な流入者は今でも後を絶たない。
北朝鮮にさらに厳しい制裁措置が加われば
中国東北部にさらに多くの北朝鮮人住民が押し寄せることを中国は懸念している。
これが北朝鮮への制裁措置に中国が慎重な理由の1つである。
中国が北朝鮮との間で重視するのが経済関係である。
中国東北部の遼寧省丹東は中朝貿易の7割を占めている。
1月の核実験後もトラックの往来などに変化はなく
貿易は続けられている。
中朝貿易の推移を見ると
去年の貿易額は約55億ドル(約6,500億円)。
北朝鮮が初めて核実験を行った2006年以降
国際社会が制裁措置を強める中にあっても貿易額は3倍以上に拡大している。
中国は北朝鮮から主に石炭や鉄鉱石などを輸入している。
また北朝鮮に「改革解放」を促すことで経済を成長させ
体制を安定させたいという思惑を持っている。
北朝鮮に厳しい制裁を課せば経済改革の妨げにつながるとみて
中国は慎重な態度を撮り続けているともみられている。
また中国東北部では北朝鮮の労働力荷も期待している。
1月 北朝鮮に到着したばかりの北朝鮮の女性たち。
中国東北部の工場に派遣される労働者である。
中国の国家観光局によると
去年 中国に入国した北朝鮮の労働者は9万人。
経済の低迷が著しい中国東北部では
賃金が中国人の約半分程度と言われる北朝鮮労働者へのニーズが高まっている。
さらに北朝鮮に製造拠点を置き利益を上げる中国企業もある。
ピョンヤンで北朝鮮との合弁で衣類工場を運営する中国人事業家。
北朝鮮で作った衣類を中国製として日本や韓国に輸出しているという。
(中国人事業家)
「北朝鮮の方が中国より人件費が安い。
その差額分を設けている。」
中国が北朝鮮から輸入した衣類の総額は日本円で約718億円(去年)。
5年前の4倍近くに達し
北朝鮮が衣類の新たな製造地として存在感を増している。
中国はこれらの衣類の一部を中国製として
日本や韓国
ヨーロッパなどに輸出している。
結果 北朝鮮への制裁が形骸化している実態が浮き彫りになっている。
さらに中国企業は北朝鮮に将来の消費市場としての期待も寄せている。
中朝国境に近い北朝鮮のラソン経済特区で去年8月に開かれた商品見本市には
中国東北部の企業が多数参加していた。
並んでいるのはすべて中国メーカーの自動車。
中国企業が販売している楽器の実演。
中国製マッサージ器も好評なようである。
将来 北朝鮮が「改革解放」することを期待して売り込みをかけている。
貿易を促進することで北朝鮮の経済発展を促し体制を安定させたい中国。
国際社会が制裁を課す中にあっても両国は経済関係を深めている。
2月17日 おはよう日本
選挙権を受ける年齢は世界では約9割の国と地域がすでに18歳以上となっている。
なかでも1970年代に引き下げて“18歳以上”とした北欧のスウェーデンでは
総選挙での若者の投票率が毎回約80%にのぼる。
人口約980万人のスウェーデン。
首都ストックホルムの中央議会では
全国から約350人の高校生が参加し
現役の閣僚と国が抱える課題について議論している。
(高校生)
「高校を卒業せず社会に出る若者が経ている傾向をどう捉えていますか。」
(高校・知識向上担当相)
「質問ありがとうございます。
義務教育もそうですが高校を卒業することは重要です。」
高校生たちに政治に対する興味を持ってもらおうと
20年ほど前から毎年行われている。
会議の議事録が政府に提出されるなど
議論の結果は実際の政策に反映される。
(高校生)
「私たちは政治家ではありませんが
政治に影響を与えられたらうれしいです。「
議会に参加した高校生たち。
ストックホルム郊外のこの学校では
今ヨーロッパを揺るがす難民をめぐる問題について話し合いを重ねてきた。
(コネリア・ニルソンさん)
「性犯罪に対しては刑罰をもっと厳しくすべきです。」
コネリアさん(16)はなかでも去年の夏ごろから相次いでいる難民や移民による性犯罪に
もっと真剣に向き合わねばならないと考えていた。
国の政策に直結する課題について積極的に議論することで
コネリアさんは自分の意見がより明確になったという。
(コネリアさん)
「それぞれが思ったことを自由に発言できるのは大切なことだと思います。」
選挙権の年齢が引き下げられた1970年代当時
スウェーデンでは高い失業率など低迷する経済が社会問題となっていた。
そこで若者の柔軟な発想を生かして社会を活性化しようとした。
政治の教育は小学校のときからすでに始まっている。
小学6年生の社会科の教科書で
自分の意見を社会に訴える手段として示されているのが
集会やデモを行う
新聞を発行する
ことなどである。
意見を持つだけでなく
どう社会に反映させるかが大事だと強調されている。
コネリアさんは家族と小さい時から社会問題について話をしてきた。
その時よく見ていたのはスウェーデンの国営放送の子ども向けニュース。
社会問題について子どもたちが意見を述べ合う番組である。
最近のニュースでは難民問題が取り上げられていた。
(スウェーデン国営放送)
橋を超えて多くの難民たちが避難してきています
「難民たちは自分の国が戦争状態で考える暇もなく逃げてきたのに
入国できないなんておかしいわ。」
小さいころは両親の意見を聞く一方だったコネリアさん。
しかし日常的に話し合いをするうちに今では自分の意見をしっかりと言うようになってきた。
(コネリアさんの父親)
「難民の男性がスウェーデン人女性に暴力をふるって大きく注目されたけど
スウェーデン人男性だって同じことをすることがあるよね。」
(コネリアさん)
「難民だからという理由で注目された点が問題ね。」
(コネリアさんの母親)
「小さい頃から学校や家で学ぶことで
大人になってから他人のことや社会全体のことも考えられるようになるのです。」
スウェーデンでは教育を受けるだけではない。
若者向けの施設は国内に1,500か所ある。
国などから配分される予算の使い道を
若者たちが自分自身で決めたうえで施設内の設備を導入した。
こうした身近なところで
自分たちの意見が社会に反映されるという経験をしている。
若者たちは選挙で1票を投じれば自分たちの思いが実現すると感じていて
だからこそ政治に関心を持ち続けることが出来る。
スウェーデンの教育者は法律で中立を保たなければならないと定められている。
コネリアさんが通っている高校の社会科の教師たち。
スウェーデンでは政治に対して自分の意見を表明することを大切にしている。
教師も自らの政治的な立場を示すことが認められる。
その一方で様々な意見を紹介することでバランスをとりながら
生徒たちから活発な意見を引き出そうとしている。
(高校の社会科教師)
「私は支持する政党を示すこともありますが
必ずほかの政党の意見も紹介して中立を保っています。
教師として意見を表明することを恐れすぎてはいけないと思います。」
若手の政治家を学校に招待して生徒と討論する授業は
全国ほぼすべての中学や高校で行われている。
中央議会で議席を持つすべての政党から政治家を招くことで中立を保っている。