本日、春の風が心地よく、麗かな陽が降り注ぐなか、第44回卒業式を挙行しました。
式場舞台には、3年生の合作が飾られています。
この壁画には、次のような意味があります。
ピアノ鍵盤のらせん階段からは虹が飛び出し、44期生の思い出をのせ、未来へと広がっていきます。
少女の手の中から、5羽の白い鳥が未来へと羽ばたいていきます。
少し開いた扉からは、思い出のクラブグッズや文化祭・体育祭の思い出が飛び出し、44期生を温かく包み込んでくれます。感謝の気持ちを込めて。
卒業と新たな世界へのスタートを応援するかのように、琉球グラスの中から、マンタが微笑んでいます。
扉からは、強い光と共に、時計やコンパスも飛び出してきました。
ジャック・スパロウのコンパスは希望と平和へ針を向け、導いてくれます。
三人の男女が向ける熱い視線の先は、自らの手で切り開く未来。
色をつけるのは44期生です。
桜の花びらが、友と過ごした懐かしい三中での思い出や、201名の夢を優しく見守ってくれています。
(三中美術科より)
さて、卒業証書番号は、44期生の最初の生徒で11396番となりました。
これだけ多くの人々が、箕面三中を卒業していったことを思うと、卒業証書を渡すことに身の引き締まる思いがします。
証書を受け取る、44期の卒業生一人ひとりの表情は、嬉しそうな子、はにかんだ子、堂々とした子など、さまざまでしたが、どの子も笑顔がまぶしく、輝いていました。
卒業おめでとうございます。
以下、私の式辞を紹介します。
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第44回卒業式校長式辞
ことのほか厳しかった冬の寒さがようやくゆるみ、箕面の野山も、少しずつ明るい色に染まりだしました。
ここ瀬川の地でも、校庭の木々が芽吹く瞬間をいまか、いまかと待ち望んでいます。春の風が心地よく頬を打つこのよき日に、第44期生201名が、箕面三中を巣立っていく時がやってきました。
卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。「しっかりと歩んでいってください」と、一人ひとりに私の思いを込めて、さきほど卒業証書をお渡ししました。
ご来賓のみなさま、本日はお忙しいところ、箕面市教育委員様をはじめ、たくさんのみなさま、地域の方々が、早朝よりお越しいただきました。
卒業生の晴れの門出を祝うため、駆けつけてくださいまして、まことにありがとうございます。心よりお礼申しあげます。
保護者の皆様、お子さまたちにとっては、思春期まっただ中の、心が揺れる3年間でした。ですから、子育てについて、喜びも多かった反面、悩まれたこともあったでしょう。
しかし、今このように、豊かに、大きく、成長されたお子様の姿の後には、日頃の子育てのご苦労がここに実り、鮮やかに色づいています。きっと万感の思いでおられることと存じます。教職員を代表しまして、私からみなさんに最大のねぎらいと敬意を払います。そして、お子さまのご卒業おめでとうございます。
さて、卒業生のみなさん、『君たちはどう生きるか』という本を知っていますか。この本は1937年に、児童文学作家の吉野源三郎さんが書きました。昨年2017年には、『漫画 君たちはどう生きるか』が人気を集めました。
この本には、コぺルくんという中学2年生が主人公で登場します。コペル君には、おじさんがいます。
そのおじさんは、コペル君にとっての大切な相談相手であり、よいアドバイスをたくさんくれるのです。そのおじさんのコペル君への言葉をみなさんに紹介します。
「君は、コペルニクスの地動説を知っているね。コペルニクスがそれを唱えるまで、昔の人は、みんな太陽や星が地球のまわりをまわっていると、目で見たままに信じていた。
ところが、コペルニクスは、それではどうしても説明のつかない天文学上の事実に出会った。いろいろ頭を悩ました末、思い切って、地球の方が太陽の周りをまわっていると考えた。
そう考えてみると、今まで説明のつかなかった、いろいろなことが、きれいな法則で説明されるようになった。
ただし、もう今日では、地動説は当たり前のように信じられているが、一般にこの学説が信じられるようになるまでに、何百年という年月がかかったんだ。
これを一歩突っ込んで考えてみると、こうなる。人間というものが、いつでも自分を中心として、ものを見たり、考えたりする性質は、これほどまで根深く、頑固なものだということだ。
子どものうちはどんな人でも、地動説ではなく、天動説のような考えをしている。みんな、自分を中心としてまとめあげられている。
電車の線路は、うちの門から左の方へいったところ、ポストは右の方へいったところにある。こういうふうに、自分の家を中心にしていろいろなものがあるという考え方をしている。
それが、大人になると、多かれ少なかれ、地動説のような考え方になってくる。広い世界というものを先に考え、その上で、いろいろなものごとや、人を理解していくのだ。
しかし、人間がとかく自分を中心として、ものごとを考え、判断するという性質は、大人の間にもまだまだ根深く残っている。いや、こういう自分中心の考え方を抜け切っているという人は、実にまれなのだ。
殊に、損得にかかわることになると、自分を離れて判断してゆくということは、非常に難しいことなのだ。たいがいの人が、手前勝手な考え方におちいって、ものの真相がわからなくなり、自分に都合のいいことだけを見てゆこうとするものなのだ。
しかし、自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、人類には宇宙の本当のことがわからなかった。同様に、自分ばかりを中心にして、ものごとを判断していくと、世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしまう。
大きな真理というものは、自分を中心に考える人の目には、決して映らないのだ。」
このように、おじさんはコペル君に言ったのでした。
そこで、卒業生のみなさん、三中での3年間をふりかえってみてください。
文化祭、体育祭、修学旅行などがありました。また教室での、友だちとのたわいもない会話などもありました。
ふりかえるとすべてのものがキラキラと輝いて見えます。みなさんは、クラスのことや周りの仲間のことに目を向け、考え、行動してきました。自分ばかりを中心に考えて、判断して、行動してきたわけではなかったはずです。
私は、学年が上がるにつれて、みなさんの集団が、「天動説」から「地動説」に成長していく三年間を確かめてきました。
その一方で、みなさんには、学習や部活でうまく成績が残せないことがあった。友だち関係で悩み続けたこともあった。学校に行こうとしても、登校できなかった。自分の居場所が見つかりにくかった。
辛くて、苦しくて、悔しくて、涙を流した日もあった。でも、そんなとき、あなたの横には、寄り添ってくれる人がいました。
そして、悩み・迷い・悔しさをくぐり抜け、いまここにあなたは存在している。そして、いま、卒業という門出を迎えている。このこと自体が、本当に意味のあることだと、私はつくづく思います。
締めくくりとして、みなさんにこの言葉を伝えます。
「君たちはどう生きるか」。
再度問います。「君たちはどう生きるか」。
この問いを、私からみなさんへの、最後の言葉として送ります。
さあ、卒業生のみなさん、三中はいま、風船の糸を外します。
三中で楽しかったことを宝にして、苦しかったことを支えにして、糸が外れた風船は、自立への旅が始まります。
みなさん一人ひとりがゆったりと、大空を旅するような、前途ある未来を心より祈っています。
以上をもちまして、第44回卒業式の校長式辞とさせていただきます。
平成30年(2018年)3月14日
箕面市立第三中学校 校長 主原 照昌
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44期生は、三中への感謝を答辞で表し、卒業の歌「大地讃頌」を高らかに歌いきりました。
クリック→卒業の歌
卒業生退場の場面では、学級担任にお礼を言い、式場をあとにしました。
初めて卒業生を出す担任が2名いましたが、教え子からの「ありがとうございました」の言葉で3年間の苦労が報われる。
これが中学校教員の醍醐味であると、私はいつも感じます。
44期生の前途に幸あれ。