私は仕事柄、幼稚園、保育所、小学校の卒園式、卒業式に出ます。
その式の中で子どもからよく聞くのが、将来のなりたい職業や夢です。
わずか6歳の子どもでも、「わたしは将来医者になって、人の役に立つ人になります」などと「宣言」を、証書をもらったあとにします。
それを聞いた来賓の人からは、「オー!」という小さな歓声が上がったりします。
でも、平素中学生をみている私からすると、どうしても違和感を覚えます。
たしかに、「〇〇になりたい」という気持ちはもっているでしょう。
でも、こんな小さな子が、本当にそれになりたいと思っているの?
人の役に立つ経験をどれほど積んで、そう言っているの?
こんなふうに感じて、違和感を覚えるのです。
しかし、となりでは、親御さんがわが子のそのような「宣言」を聞いて、うれしそうに笑っている人もいます。
はたして、その子どもの夢は、本当に医師や看護士になることなのでしょうか。
小さな子どもが思うことを言っているのだから、そんな目くじらを立てなくても、という考えもあるでしょう。
しかし、大人の尺度でいう「よい生き方」を送らせるために、親たちの間で何度か言われている言葉を、子どもがいつのまにか夢や目標にするようになったのかもしれません。
そうであるなら、話は別です。
子どもは、これを言うと家の人や大人が喜ぶと知ると、誰に聞かれても、たとえば「お医者さんになりたい」と答えるようになります。
大人もいいかげんで、「すごいよ」とわけもなくほめます。
そうなると、子どもは自分の夢や目標というよりも、大人を喜ばせる生き方をするようになっていきかねません。
ですから、子どもがそんな小さなうちから、「〇〇になりたい」という言葉は、あてにならないと私は考えています。
(次回に続く)