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ただの日記

三つ子の魂 百までも  (後)

2021年12月29日 | 心の持ち様
 法律用語もそうだけれど、専門用語というのは、世間一般の生活からすれば何とも不穏な表現が結構あるように思う。
 能々考えればそう表現するのが一番適切なんだろうけど、専門用語というのは基本、耳慣れない言葉なわけだから、「こういう意味で使うんです」と度々解説してもらわなければ、自身の「理解能力」の範囲内でしか捉えることのできない人間は、とんでもない誤解をしたりする。

 自衛隊や警察を「暴力装置」と言うんだ、と初めて聞いた時は随分びっくりした。会社員のことを「社畜」と言うのだと知った時も。
 「暴」にも「畜」にもあまり良い印象は持たず育ってきたが故だろう。

 しかし「暴」は「あばく」ということであり、「畜」は蓄えることであって、一気呵成に、それこそ爆発的に物事を片付けることや、生活のために「蓄え」、更に蓄えて財を成すこと等は決して悪いことではない。
 暴力装置を背景に「巧言令色を用いた交渉(舌先三寸、詐欺のような交渉)」になりがちな国際社会で緊張感と誠意を以て双方が相対する。会社に「能力のある人を常備」し、いろんなプロジェクトを引き受け実行する。

 普段の生活でこれらの「言葉」に悪印象を持たぬよう、正しく把握するよう教えていくのが教育というものなのではないか。
 それからすれば「憲法」は「憲(のり)とする法(決め事)」なのだから、きちんと意味通りに作られ、運用されなければならないのは当然のこと。
 趣味で作られたんじゃたまったもんじゃない。それも他国に。

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 先の戦争で米国はやっと日本を倒した。あとはこの国を白人国家の脅威にならないよう解体すればいい。ただ日本は米国と太平洋の覇を競った大国だ。パナマやキューバみたいな「土人どもの小国」とは違った。
 趣味の憲法弄りはそう簡単にはいかないだろう。

 で、米国人たちは歴史を勉強し、大国でも始末できる例を見つけた。
 ローマ帝国が地中海の覇を競ったカルタゴをやっと降伏させた第2次ポエニ戦役のケースだ。
 このときハンニバルを倒したスキピオはカルタゴが未来永劫ローマの脅威にならないよう、いくつかの条件を付けた降伏条約を押し付けた。
 まず第1がカルタゴの海外植民地の没収。
 第2が軍船、軍象の放棄。
 第3がローマ及びその同盟国との戦争の禁止。
 第4はそれが自衛戦争であってもローマの承認なしの交戦権は認めない。
 以下、ローマ占領軍の維持費負担。賠償金の50年間分割支払い。そしてカルタゴの子弟を毎年100人ずつローマに送り、よきローマ市民とする。

 米国はこれを日本の戦後処理の指針とした。まず台湾、満州など海外領土を没収し、賠償金も50年支払わせ、白人国家の旧植民地にふるまった。
 軍隊の解体、戦争の放棄、交戦権の放棄は趣味を生かしてGHQ製の憲法に書き込んだ。
 そのGHQの経費もローマと同様、日本政府に負担させたが、講和条約発効後は日米安保条約の中にその負担を明記した。
 毎年の子弟のローマ送りについて塩野七生(しおのななみ)は「フルブライトの留学生と同じ」と書く。親米派に育て、いつまでも服従させる。フルブライトは今、優先的に新聞記者を選んでいる。

 先日、バイデン副大統領が「日本が核を持てないように米国が憲法に書き込んだ」と発言した。
 米国人の悪趣味で作られた憲法だと告白した。
 普通なら即、憲法破棄だ。そんな論調が新聞に一切出ないのは、そう、フルブライト効果なのだ。

 (2016年10月13日号)


  新潮文庫 
 「変見自在 トランプ、ウソつかない」
        高山正之著 より 
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