![]() | 円朝の女 |
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文藝春秋 |
☆☆
松井今朝子が描く、円朝の女、五人が登場する。
出入りしている武家のお嬢様の「千尋様」は「惜身の女」
大楼で出会った「長門太夫」は、「玄人の女」
円朝の倅のお母さんの「お里さん」は、「すれ違う女」
祝言上げてのお内儀といわれる「お幸さん」は、「時をつくる女」
晩年、円朝の面倒をみた「せつちゃん」は、「円朝の娘」と、
各章、円朝を中心に時代の変化で強く生きる五人の女で噺がすすむ。
各人各様に、もてもての、噺家、円朝に惚れ、男として芸人として支える
そこには、芸人の甘えを受けるだけの、母親のごとく慈愛にみちた愛とともに、
すべて、真の名人としての凛と卓越した円朝の芸が存在する。
時は、徳川崩壊から始まり明治へ、歴史の中で翻弄さる庶民。
特に、女性の立場はかわり、同時に四民平等で役者や芸人の地位も変わる。
いつの時代も、遊び人の代表であるような芸人さんは、
ある意味、男の弱味をみせ、おおいに母性本能をくすぐる存在。
そういう意味では「惜身の女」として紹介されている
「千尋さん」に、私は一番憧れますな。
小説として読み応えある「円朝の女」に、
小説家としての松井今朝子さんの技量を感じますな。
