日本で公共交通機関を利用すると必ず入る車内アナウンス。
「車内での携帯電話での通話はご遠慮ください。優先席付近では電源をお切りになり・・・」
もともと車内アナウンスがほとんどないブルガリアでは絶対に聞かれない言葉ですね~。どんなに混んでる車内でも大声で通話している人が見られるブルガリア。そして、こんなビンボーな国でも、しかも、ゴミ集めをなりわいにしているほどの極貧の人でも、み~んなケータイを持っています。しかも、ワタシのよりも新型モデル!! (っていうか、ワタシは古すぎるのを持ってる?) 市内でバスやトラムに乗っていてふと見ると、若い子達はスマホやタブレットを片手に、指でササーっと♪ そんなに若くなさそうなおばさまが電子書籍で読書中・・・ それもぎゅうぎゅうの車内で。盗難の危険性の高いところでも、半ば自慢げに見せびらかしているようにすら見えます。
”指でササーっ♪” ”ゲームとアプリ”くらいなら別に他の乗客には迷惑をかけることもありません。まあ、ダウンロードした音楽をMP3プレーヤー代わりのケータイで聞いてる人のイヤホンから音漏れがするのは少し迷惑ですが。でもやはり、おしゃべり大好きなブルガリア人の、このツールの利用目的は、「通話」!!! でしょう。騒音のひどい地下鉄やトラムの中でも、「アロ~♪」と会話を始める人々は、楽しそうです。だから大声でまわりの人にまる聞こえだ!!!
「スカパ~(ブルガリア語で”ハニー♪”みたいな意味)、スーパー寄るけど、何買ってきてほしい~?」
「あっ、マモ~(=ママ)、もうバーバ(おばあちゃん)と帰ってるから心配しないで!!」 夕方の車内から聞こえる、いわゆる「カエルコール」にちょっとホッコリ・・・ と、そんな時、車内に3人・・・ 内訳は、一人は50代女性、そして二人の30~40代男性がダッと乗り込んできました。そしてこの女性はケータイでこ~んな「超」深刻な会話を大声ではじめます。
「アロ~、マリアね・・・ いい?今から言うことはすべてイスティナ(ブルガリア語で”真実、真理”の意)だから。ニコライはもうあなたとは暮らせないし、その意思もないワ。もう彼はリュプカとの新しい生活を楽しんでるの・・・ でもマリア、私はあなたの母親だから、嫌われてもいいから心から助言するわね。これはマリア、あなたのせいよ。そりゃ最初はニコライが悪いワ。でも一度問題を正して戻ってきたじゃないの。なのに何ヶ月も許さないで、しかも子供達もニコライに押し付けて・・・ マリア、泣いたってダメよ!! もうあなたは全て失ったのよ!! 分かる?! お金のことだってニコライはキチンと新しい仕事を見つけてるし・・・ もうあなたに入る余地はないのよ・・・ マリア・・・ でも私がいるじゃない。ここにはあなたのボイチョ(=母方のおじ)のイヴァンもいるワ。泣かないのよ。今日は会いに行くことはできないけど、いつか行くから。分かった?」
もうこの会話中、車内の乗客はほぼ全員が、そっちを見ずに”耳ダンボ”にして話に集中・・・ 後で何人かがボソッと独り言・・・
「まっ、許さなかったんだから仕方ないワネ」 「子供もとられちゃったの?」・・・
ワタシは心の中で、「こんな会話、トラムの中でするなよ~!!!」(怒) 日本ではたぶん見ない風景でした。