MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『ある日、妻が乳がんになった』

2012年07月01日 | BOOKS
 『ある日、 妻が 乳がん に なった
  夫として、言語聴覚士として、調理師として、僕にできたこと』
   著者:櫻井正太郎 


 「大切な人」がいる皆さんに、読んでもらいたい1冊です。
 男性も、女性も、若い人も、そして私たちの親世代・団塊世代の皆さんも。


 30代夫婦と小さな子どもがいる一家での、「乳がん」が見つかってからの家族の日々の記録、そして闘病の記録です。淡々とした語り口で書かれている彼らの毎日は、あっさり読めるけれど、「がん」という病気だけでなく「心」と闘っているようにも見えます。しんどかったはずなのに、ところどころでクスッと笑えるようなユーモアもあります。
 現在「がん」の患者・ご家族である方々がどう感じるかは分かりませんが、多くの読者にとって、「知る」「想像する」「心構えをする」というプラスの変化を与えてくれる記録になっています。

 著者が、奥さんのため・家族のためにしていることは、がん患者とその家族だけでなく、今の我が家でも大切だと思いました。

 ・思いやること
 ・きちんと想いを伝えること
 ・とことん話を聴くこと
 ・小さな「できた!」を積み重ねていくこと
 ・男性も家事を楽しむこと

 どれも、今から始められそうなことです。(けっして簡単なことではないですけれど)

 
 前向きで思いやりがある著者は、現代でも珍しいほどによくできた男性だと思いますが、時には心が折れそうになったり、つらかったことも書いています。
 私は女性ですから、自分が奥さんの立場だったら……と思いながら読んでいたのですが、考えさせられることが本当に多かったです。
 奥さんの言葉に著者が傷ついたり、つらく感じたりする場面では、まるで自分が夫や家族を傷つけているような気持ちになりました。
 数年前に、病気になったり、首が回らなくなる症状が続いていたとき、自分の身体のポンコツ具合がつらくて自己嫌悪していた時期がありましたが、あのとき私の家族もさぞかし切ない・つらい気持ちだったのだろうなぁと、この本を読んで改めて気が付いたのでした。


 あとがきの後には、『妻が乳がんになって気づいたこと、気をつけたこと』という9つのコラムがあります。
 その中でも、乳がんにかかる様々な費用について書かれているのが、非常に良いと思いました。治療費だけではない費用も考えて備えておくこと(がん保険の加入など)の大切さも分かります。
 調理師でもある著者の『食事で気をつけた8つのこと』は、「身体にいいものを美味しく楽しく食べる」という、簡単で分かりやすく実践しやすいものなので、これも参考になります。

 巻末の『告知から現在まで』の年表には、「治療や検査の記録」「体調の変化」「家族のイベント」など、一つ一つ乗り越えてきた日々が書かれていますが、年表の最後、「妻は元気になっている」の一行が、輝いて見えました。


 どんな病気になっても家族や周りの支えが大切なのだと、つくづく思います。
 そして、それは一朝一夕では手に入らないということも……。
 病気になる前も、なってからも、何気ない普段の毎日の積み重ねなのだと気付かされました。
コメント (2)
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