MOONIE'S TEA ROOM

大好きな読書や言葉、料理のコトなど。

『世界の半分が飢えるのはなぜ?』

2013年08月08日 | BOOKS
『世界の半分が飢えるのはなぜ? ~ジグレール教授がわが子に語る飢餓の真実~』
ジャン・ジグレール著
合同出版


 飢餓問題を研究するスイス人のジグレール教授が、子どもと対話するという形で書いた世界の飢餓問題の本です。
 小学校の高学年ぐらいから、親と一緒に会話しつつ読めるのではないでしょうか。
 フリガナが少ないのですが、中学生・高校生なら一人で読めると思います。
「子どもとの対話形式」ではありますが、まずは大人が読むべき本であると感じました。
 

「食べ過ぎが原因で太っている人が病院へ行く国、食べ残し・売れ残りがゴミになる国」
  がある一方で、
「食料が全く足りず、生き残る可能性がある人だけを選別して援助物資を渡さざるをえない国・
 援助物資の食料を口にすることができないほど衰弱している子どもたちがいる国」
  があるということ。

「どうしてだろう?」と考えることすらしなくなっていた自分に気が付きました。

 他の国で作られる余剰食糧を安く食料不足の国に売る・援助することが難しい理由も、初めて理解しました。
 余るほど収穫できれば農産物の価格は安くなる。しかし、生産する農産物の値段が下がると困る農家が日本にもいるわけで、たくさん生産できるはずの国が生産量を調整(減反)することも必要なことのように思えます。
 また、この本には「世界には穀物を食べられない人がいるのに、家畜に穀物を与えている国がある」という指摘もありました。これは、日本の贅沢な「霜降り肉」を思い出して、なんとも複雑な気持ちです。貧しい国の子どもたちが食べられない穀物だと考えると、罪深いことのようにも思えます。
 「全く食料がなく苦しんでいる国」と「美食を追及できる金持ち国」の間の深い溝を感じました。


 『人類すべてが飢えないようにする仕組み』の難しさ。
 誰もが納得できる「Win-Win」の解決法を見つけられる日は来るでしょうか?
 貧しい国が、まず第一に平和になって食料を自給自足できるようになるための道を、恵まれた環境にいる私たち「金持ち国」の人間が考えるべき時代なのかもしれません。


 イラストは、児童書の挿絵でも活躍されている佐竹美保さんです。モノクロの版画のような挿絵が、世界の厳しさを子どもたちに伝える一助になっています。
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