MOONIE'S TEA ROOM

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『宇宙探偵マグナス・リドルフ』

2016年09月12日 | BOOKS
『宇宙探偵マグナス・リドルフ』
ジャック・ヴァンス著
浅倉久志/酒井昭伸 訳
図書刊行会


 「宙をかけるトラブルシューター」「宇宙の揉め事処理・問題解決のプロ」なんて文字を見つけると、「星へ行く船」シリーズファンは気になるんじゃないでしょうか?(つまり「やっかいごとよろず引き受け業」ですもんね)
 チャンドラーのフィリップ・マーロウじゃないけれど「Trouble is My Business.」という言葉が似合う、そんな探偵(?)マグナス・リドルフが主人公の連作10篇によるSFミステリ短編集です。

 表紙を見ればお分かりになると思うのですけれど、マグナス・リドルフが相手にするのは奇怪な容姿の宇宙人が多数。
 見た目だけでなく風習もモラルも違うんですから、厄介です。
 でも、リドルフは、そんな宇宙人よりもさらに上を行く、とっても喰えない男なんです。
 白髪で、白いヒゲ。そして、まるで名家の執事のような丁寧な言葉遣い。
 落ち着いた老紳士のようで、やっていることは危険きわまりない綱渡り。
 どちらかというと、交渉人であり工作員。「ミッション・インポッシブル」な感じです。

 「え?こんな解決でいいの?」と思ってしまうような、とんでもない結末があったり、驚かされることばかり。
 依頼もとんでもない依頼ばかりですけれど、はっきり言って一番性格が悪いのはリドルフなんじゃないでしょうか。
 敵にするのも仲間にするのも遠慮しておきたいようなキャラクター。
 哲学的で、理論的で、数学的。
 知的で皮肉が効いた台詞もあちこちに散りばめられていて、困った人なのにどこかカッコいいのです。

 「知性、機転、機略のたぐいは、外見から価値を量れるものではありませんよ。ネクタイとはわけがちがいます」(「暗黒神降臨」)
 ね、ちょっとカッコいいでしょう。

 清濁併せ吞むハードボイルドと思いきや、場所が宇宙で相手が異星人だけに「なんでもあり」。
 苦笑いしつつも読むのが止まらないのは、リドルフの容赦ないトラブルシューティングが痛快だからでしょうね。

 図書刊行会からは「〈ジャック・ヴァンス・トレジャリー〉全3巻」として、ジャック・ヴァンスの著作が刊行されます。
続刊は『天界の眼 - 切れ者キューゲルの冒険』と『スペース・オペラ』、こちらも手に取ってみたくなります。
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