「命」というのは、すばらしい。まるであらかじめプログラミングされていたかのように、ある日突然、求め続けていたものが泉のようにふきあげてきたのです。ただやりたいことをあきらめずに続けていただけで、求めていた本当の自分の輪郭に触り、目の前でまぶしい火花が散って、それまでの自分が嘘だったかのように、まるっきり違う新しい自分がそこにいたのです。
私たちの心の中には、みな小さな種が宿っています。それは伸びたい、大きくなりたい、自分はだれなのかどんな花なのかを知りたいという、命の自然な願いなのです。それを、様々な古い観念の型にはめることによって、現状の社会運営上で都合の良い人間をまるで鯛焼きのように大量生産しようとしてきたのが、私たちに与えられてきた教育ではなかったでしょうか。そして、そのために殺されてきたさまざまな人間の魂の叫びが、亡霊のように立ち上がり、人の心をむしばみ始めたのが、少年犯罪や閉じこもり、不登校、親子の断絶などに現される様々な現代社会のひずみではないかと思うのです。
(1999年5月ちこり増刊号、前書き)