リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

アーノンクール逝く

2016年03月07日 11時10分41秒 | 音楽系
古楽界のみならずモダン楽器の世界でも大きな功績を残したニコラウス・アーノンクール氏が5日死亡したと各紙が報じています。

氏は70年代初めに興った古楽復興運動の中心的存在であり、数々の素晴らしい演奏、録音を残しています。中でもレオンハルト氏と行ったバッハのカンタータ全曲録音はまさに金字塔ともいうべき偉業でした。

モダン楽器によるロマン派風の演奏とか妙に即物的な演奏しかなかった当時、彼のカンタータ演奏はとても新鮮でこれこそがバッハ演奏の本来の方向だと思ったものでした。その方向性は今日のバッハ演奏に直結していますのでいかに彼の先見性と実践力が高かったのかと今更ながら思い知らされます。ただ今聞き直してみると、アンサンブルや楽器の技量に少し気になるところがないではないですが、それでもその何枚かは私の大切な愛聴盤のひとつです。

一昨年にはブリュッヘン氏が亡くなり、リュート界でもアメリカやイギリスのリュート協会会報に、毎号のように死亡記事が掲載される時代になりました。古楽的なアプローチがいまや当たり前になった現代ですが、いまここに改めて古楽復興時代における彼らの仕事をしのぶのも大切なことかなと思います。