リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ストックホルム行き(2)

2024年12月18日 23時08分03秒 | 音楽系

飛行機はアラスカとロシアの間にあるベーリング海峡を抜け北極海に出てヘルシンキに向かいます。以前は一直線で行っていたと思いますが、少し大回りです。でも他の航空路よりはかなりマシで約13時間でヘルシンキに到着しました。

夜間飛行ですので、到着も夜。空港は雪がうっすら積もっていて寒そうです。ヘルシンキでストックホルム便に乗り換えです。発着案内掲示板を見て出発ゲートに向かいますが、一番右端に31分と書いてありました。何かと思いよく見てみると、ゲートまで徒歩で31分かかるということのようです。移動用の列車はないんかい!

まぁ多少は大げさに書いてあるかも。それに途中に動く歩道もあるでしょうと思い歩き始めましたが、ホントに30分以上かかりました。動く歩道が100mくらいありました。

帰りの荷物にアッティオルバートが増えますので、リュックでいきましたが、それなりに重いのでなかなかいい運動になりました。おかげでまだ腰のあたりに軽い筋肉痛が残っています。

1時間半のフライトでストックホルムのアーランダ空港に到着です。到着したときはまだ真っ暗でしたが、パスコントロールを経てロビーにでるとやっと夜明けになっていました。現地時間で8時41分でした。

歩道は凍てつき寒そうです。


ストックホルム行き(1)

2024年12月17日 21時43分37秒 | 音楽系

前々回のエントリーで書きましたように今回は関空から乗りますので、大阪まで近鉄で行きました。新幹線の方が20分ちょっと所要時間が短いですが、近鉄だと乗り換えが少ないし経費はかなり安くなります。

近鉄は「火の鳥」という名前の赤い特急車両が人気だそうで、ときどき走っているのを見ることがあるのですが乗ったことはなかったので津から大阪難波までをこの車両で行くことにしました。

残念ながら桑名には火の鳥は止まらないので、津までは一般の特急車両で行きます。期待して火の鳥に乗ったんですが、割と古い車両に乗ったせいかプラスチックのパーツが汚れているところがありちょっとがっかり。津まで乗った車両の方がずっときれいでした。

大阪難波から関空行きの列車が出ている南海鉄道のなんば駅まで歩きですが、これがなかなか距離もあり経路も複雑で人も多く苦労しました。1995年に、これも同じくアッティオルバートを取りにスペインへ行ったときも関空からでした。ルーデス・モレノ・ウンシージャに作ってもらった楽器でした。そのときは新幹線で行ったせいか経路が複雑だとは思わなかったのですが。

アッティオルバートは関空になんか縁があるんですね。その時はやはり12月でした。少し今回よりは遅くてクリスマス後から年始にかけて家族総出で行きました。ちょうど関空が開港して丸1年たったということで、帰りに空港から出てきたらテレビ局の人からインタビューされました。

インタビュー先は私の子供たちで、「どこに行かれたんですか?」「お土産は何をかいました?」といった質問でしたが、ウチのお子達は固まってしまって何も言いませんでした。もちろんそれはボツになって放映されていないでしょうけど、ウチの家族旅行は名所めぐりはいっさいしませんでしたから、まだ小学校の高学年だった子供では上手に受け答えは無理でしょう。(笑)でもいいところに行きましたよ。ルーデスさんのスタジオに行って生まれたばかりの子供さんと遊んで、(当時の)ダンナさんのホセミゲルさんにもよくしてもらって、さらに近所にあったエスコリアル宮にも行きましたし、宮殿の付近のまるで西洋宗教画に出てくるような田園風景も満喫しました。


ストックホルムの密使

2024年12月16日 12時19分47秒 | 日々のこと

今日の深夜23時25分の便でヘルシンキを経てストックホルムに向かいます。ロシアのウクライナ侵攻前はヨーロッパは近かったのですが、最近はロシア上空を避けてヨーロッパに向かうという1970年代に逆戻りですので、距離も遠くなり時間もかかりフライトチケットも値上がりしています。サーチャージも異様なお値段です。

そんな中かろうじて比較的有利な空路を持っていうるのがフィンエアです。今回は北欧のストックホルムに向かいますのでフィンエアで行くことにしました。

出発空港は関空ですが、実は名古屋の中部空港出発便も秋頃まではありました。現在はお客さんが少ないということだからなのか秋から冬にかけては休便になっています。ただフィンエアさんも有利な立場に気づき、ニーズが増えるとみて来年から通年で就航するらしいです。もちょっと早く決断しておいてくれたらよかったのですが。

私が乗るフィンエア便は深夜に出発して朝に到着というなかなかいい時間の便です。時差の解消にはなかなかいい時間帯といえますが、ただ今回の滞在期間はわずか数日なので時差ぼけが解消しつつある頃に帰国となりますのでメリットは少ないかもしれません。

今から荷物のチェックをして夕刻には関空に向かいます。携帯していく小説は佐々木譲作「ベルリン飛行指令」と「ストックホルムの密使」です。これは氏の第二次大戦の頃を描いた冒険小説三部作の第一作目と第三作目です。彼の地へ向かう機内で読むにはふさわしい作品かな。


バロック音楽の旅17第4回コンサート

2024年12月15日 22時09分25秒 | 音楽系

今日はバロック音楽の旅17講座の第4回で高橋弘治さんをお迎えしてバッハの無伴奏チェロ組曲第3番と6番、無伴奏フルートパルティータを演奏していただきました。

本年度になって本講座の受講生数はコロナ禍前の水準に戻り、現在92名です。本年度の特徴は申し込み者数に対する参加者数の比が高いことです。例年大体7割くらいでしたが、本年度は初めから8割を大きく超え、今日は9割を超えていましたので会場の席は用意した分がほとんどうまりました。

まだ写真に写っていない後ろと右方に沢山受講生の方がいらっしゃいます。

高橋さんは、組曲第3番ではバロック・チェロ、第6番と無伴奏フルートパルティータでは6弦のヴィオロンチェロ・ピッコロを使用しました。2種類の楽器を使うことで曲のキャラがはっきりと際だっていました。組曲第3番と第6番は私もリュートに編曲して演奏したことがありましたが、聞かせて頂いてキャラ分けがまるで逆になっていたことがとても興味深かったです。リュートでは第3番をト長調に編曲したこともありで第6番よりずっと軽い感じで響きますが、第3番のチェロはハ長調でとても重厚な響きでした。そして6番のリュート編曲はチェロと同じニ長調でしたが、それがとても重厚に響くのに対してヴィオロンチェロ・ピッコロでは華麗に舞い上がるフレーズが印象的でした。

プログラムは時間的に少し長めでしたが各受講生の皆さんは身動きひとつせずに聴き入っていました。アンコールは無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番より第3楽章ラルゴでした。

次回第5回講座は、リコーダーの太田光子さん、桐畑奈央さんのリコーダーとチェンバロの杉浦道子さんによるイタリアンバロックプログラムです。途中からの参加も可能ですので興味のある方は是非お越し下さい。


弦が高い

2024年12月14日 21時40分56秒 | 音楽系

弦が高いといって音程が高いのではありません。ガムート社にテオルボで使うガット弦とフレットを注文したのですが、えらく高くつきました。リュートに使う弦は全て輸入品ですので円安のためお値段が高騰しています。多分アメリカでも値段が上がっているのでしょう。

10年何年か前にいろんなガット弦を試していた時期がありましたが、その頃は1ドル80円くらいのときもありましたので今の半額位で買うことができました。

合成樹脂弦は細いので300円台ですので、こちらは充分リーズナブルです。これがガット弦になると10倍近くになります。1本ですよ。

テオルボ用の太くて長いガット弦を14本揃えるとなると笑えない金額にになります。実はテオルボにガット弦を使うといっても1~3コースだけです。あとはカーボン弦、金属巻き弦、ローデドナイルガットを使います。合成樹脂弦は本番でも安定していますので、3コース分がガットで不安定になっても3本調整するだけですからそれほど大変ではありませんし、そこそこの太さの弦を使いますからすぐにケバが出て切れてしまうというようなことはありません。


ストックホルム行き

2024年12月13日 22時04分36秒 | 音楽系

ラース・イェンソンに作ってもらったアーチ・リュート(リウト・アッティオルバート)を取りに来週の初めからストックホルムに行ってきます。

久しぶりの(もう10年くらい行っていない?)ヨーロッパで、ストックホルムは初めてなのでとても楽しみにしています。といって実際は弾丸旅行に近いのですが。手ぶらだったら、イージー・ジェットにでも乗ってバーゼルにひとっ飛びですが、楽器を持っているのであちこち回るわけにもいかないし。

まぁホテルの近所をうろうろしてホテル内で楽器の練習でもしていましょう。

バーゼルに行くときは定宿があるのでそこに泊まりますがストックホルムには定宿がありません。昨今は便利なサイトがあって日本にいていろいろ選び簡単に予約ができます。周りの様子は予めGoogle Mapで歩き回ることができるという至れり尽くせりな世の中になってしまいましたが、逆に現地にいってももはや新鮮さがなくなってしまうのであまりそういうものは見ない方がいいかも知れません。

さて今からナントカ・ドットコムにアクセスしてホテル探しをすることにしましょう。

 

 


念のために替えたフレット

2024年12月12日 19時30分43秒 | 音楽系

リハーサル中に3フレットが切れたので交換した話を3日前に書きましたが、実は本番の前日に全フレットを交換しました。

フレットの交換記録を見てみましたら2014年の記録がありました。でもいくらなんでも10年前から一度も替えてないなんてまずないでしょうから、記録をくまなく調べましたらありました。2021年です。でもこの時は1~3までしか交換していません。

そうすると4~9フレットはやはり2014年に交換して以来替えていないのかも。でも実際には6フレットあたりまではともかく7以降はほとんど減っていないし緩みもありませんでした。でもこの際ですから全交換です。

実は某ギター製作家(かつてはリュートも作っていました)から古いガット弦を頂いたのでそれを使ってみることにしました。ところが緩まないようにグッと締め上げたらプツンと切れます。何度やっても切れるのでこれは多分年月が経って引っ張り強度が下がっていたからでしょう。実際そのガット弦のうちの1本(0.90mm)を一重に結んで両端を両手でひっぱってみますといとも簡単に切れました。その太さのガット弦はふつう手で引っ張るくらいでは切れることはありません。件の製作家からたくさんガット弦をもらってフレットに使えると喜んでいたのですがやはりある程度は新しいものでないといけないようです。

あとひとつ「事故」がありまして、それは最後の9フレットを正しい位置に両手でずらすときに起こりました。右手の親指が中途半端に滑り指先がフレットに当たって爪が剥がれそうになったのです。といって別にホントに剥がれたのではなく、剥がれる方向に力が加わっただけだったんですが、結構指先が痛かったです。でも昨日のライブでは痛みは残らず指のことは忘れていたくらいでしたが、今朝指先をみたら少し水ぶくれみたいなものがあり、指先の爪下にわずかに内出血していました。トシを取ると筋肉痛が翌々日に出るもんですが、指先の痛いのも2日後に出るのかもしれません。幸いにも午後以降は全く普通の状態に戻りましたが。


コンサート at カフェビズ

2024年12月11日 20時55分27秒 | 音楽系

今日は岐阜県加茂郡八百津町のカフェビズという古民家カフェでコンサートです。共演はヴィオラ・ダ・ガンバの山下瞬さんです。カフェビズでは山下さんの企画でシリーズコンサートを企画していて、そのおひとつに入れていただきました。

カフェビズは3年位前にフランス人のご主人と日本人の奥様が作ったとてもシックなカフェです。その関係もありプログラムはオールフレンチです。

お昼のコンサートということで10時入りですので、8時過ぎに家を出ました。道はスムーズに流れていたので90km位の道のりでしたが、1時間半余りで到着。

古民家の素材を生かした美しい梁と屋根裏です。

プログラムは次の通りでした。

サント=コロンブ/プレリュード(ガンバソロ)、マラン・マレ/組曲ニ長調、ルイ・ドゥ・ケ=デルヴロワ/プレリュード「ル・サシェ」とル・パピヨン、ロベール・ドゥ・ヴィゼー/プレリュードとシャコンヌ ト長調、ルイ・ドゥ・ケ=デルヴロワ/組曲ト長調、マラン・マレ/ファンタジーとグラン・バレ イ短調

アンコールにはフランソワ・クープランの「子守歌、ゆりかごの中の愛」を演奏しました。

お客様は店でランチを召し上がったあとコンサートを聴いていただきました。コンサート後にはとても熱心な方々から沢山質問をいただき楽しい語らいのひとときを過ごすことができました。

山下さん企画のこのシリーズはまた来年も続くそうです。私も微力ながらお力になればと思っています。


鏡像

2024年12月10日 11時45分33秒 | 音楽系

鏡は己の姿を見るツールとして古くから使われてきました。私は日本史の教科書に出ていたナントカの鏡の写真を見て、こんなに沢山の装飾をしまくってどこに姿を映すんやとつぶやいていたお間抜けな高校生でしたが。

バーゼルにいたときの下宿には縦長の大きな鏡があり、それに自分の演奏姿を見ながら毎日練習していました。鏡を見ると自分の技術的な問題点がよくわかります。鏡で見るのは静的なフォームより動的なフォームを見ることの方が重要です。左手はここをこういう形で弾きましょうという静的なフォームはほんの序の口、少し動かすとそのフォームが崩れがちになります。そこを鏡を見て矯正します。

さらにずっと動いている鏡像を見ながら手のブレがないかどうかをチェックします。実はここがもっとも重要なところです。自分の左右指の体感覚と鏡の鏡像をシンクロさせます。

以前バーチャル楽器のすすめというタイトルで連載したことがありました。自分では当たり前だと思い込んでいましたが、鏡の話をしていて実は絶対に押さえておかないといけないポイントがあることに気がつきました。

連載では頭の中でバーチャル楽器を構成し、左手がどこを押さえているかのイメージを作りそれを音と一緒に憶える、というような話をしました。そこで注意しなければいけないのが、左手が押さえているイメージとはどんなものかということです。それは鏡に映した左手ではありません。バーチャルですからもともと「視点」はありませんがあえて言うなら指板を真正面から見たイメージです。ですからネックの方向は右上方向、1コースが一番下です。もっともネック自体のイメージはしませんが。

と書いてみましたがよく考察してみると実際は違うみたいで上下左右という概念はなさそうです。弾いているときに直接指板をのぞき込んで見たイメージと鏡に映っているイメージは同じかも。なんか頭が混乱してきました。イメージのスタートは人が演奏する指、または自分が演奏しているときに見る指、これらは同じものという認識です。でも鏡に映っているイメージは違うみたいですが、よく見て検討すると同じようにも思えます。ますます混乱してきました。(笑)少なくともネック側から見た指イメージがスタートではないことは確かですが。

バーチャルイメージを作ることができる人は人の演奏や映像を見ているだけで(たとえ音が出ていなくても)何調の曲かくらいは分かるようになるのは確かです。


BWV1006a(33)

2024年12月09日 12時38分09秒 | 音楽系

メヌエット1の32小節目からメヌエット2全です。

これでBWV1006a全曲を3コースbフラットのスコルダトゥーラでタブに仕上げました。実は当初この組曲の全曲を11月17日のバロック音楽の旅に演奏する予定でしたが、全体の時間の関係で最初の3曲、プレリュード・ルーレ・ロンド風ガヴォットだけを演奏しました。それなら翌週の大学のクラブのOB演奏会で全曲をと考えていたのですが、私は一応トリになっていて、それまで進行が押しに押していてみなさん「早く宴会やりたモード」になっていましたので、全曲演奏はやはり断念いたしました。

20数年前にプレリュードだけ、ガボットやルーレは単品で何度も演奏していますが、全曲を通したことはありませんのでいつか演奏してみたいです。ただ3コースをシ♭でアレンジしていて明らかにその意義があるのはプレリュードだけで、他の楽曲は特に恩恵を感じませんでした。

そして全体を通してははやりリュート曲としてはピッチが高いのではないかと感じました。どうしても楽器のあまり音が出にくいポジションを使わざるを得ないのです。そこで前々回にもふれましたが、原調のホ長調から全音下げてニ長調にするとどうなるが気になります。誰もニ長調で演奏していないところを見るとやってみてはかばかしくない結果が出ているのだろうと推測されますがモノは試し、次回からニ長調版を作っていこうと思います。