リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

また平均律

2006年01月31日 14時55分59秒 | 音楽系
また平均律のCDを買いました。今回は,ボブ・ヴァン・アスペレンのCD(第1巻と第2巻)です。ついでにモダンピアノのシフCDも第2巻だけ買いました。

これで,ギルバード,レオンハルト,ベルベン,コープマンに続き5人目,6人目になります。ピアノ版を買ったのは,ピアノではどう弾いているのかな,って興味があったからです。一般世間とは方向が逆ですけど。実はピアノ版はものすごい昔,高校生のころに,フィッシャーのSPを復刻したLPを買って聴いたことがありますが,ものすごくよかったと印象が残っています。その少し後,アルヒーフでカークパトリックのクラヴィコード版を買ったことがありましたが,これは録音も演奏もガックリきた印象があります。

もっともクラヴィコードがどの位の音量の楽器なのかは,全然知りませんでしたけどね。それに多分その当時(1960年代後半)のクラヴィコードの復元制作レベルはそんなに高くなかったでしょうし・・・

まず,ピアノ版のシフの演奏を聴いてみましたが,ピアノで弾くとなんか妙にスタティックというか,こぢんまりしてしまうというか,曲の印象が変わるものですねぇ。でもこのピアニスト,すごくうまいです。古楽的な耳で聴いてもほとんど違和感はないです。(ピアノであるということ自体の違和感はありますが)もっともいくつかの装飾音とかアーティキューれーションにはムムムっという感じはあります。(笑)

アスペレン版は録音がちょっと金属的なのが気になりますが,演奏はなかなかいいです。ちょっと教科書的なところもありますが。最近はずっとコープマンを車の中で聴いていますが,しばらくはアスペレンに変えてみようかな。

今まで聴いた6人の演奏でイチオシはやはりコープマンです。彼はもうホントにいろいろなことをやっています。すごく直感的に見えて結構計算しているし,とても表情豊か(オーバーなくらい)かと思うとすごくスタティックになったり,とにかく変幻自在で楽しいです。平均律は何と言っても2巻が圧倒的に曲がいいと(独断と偏見で)思いますので,ぜひこのブログをお読みの方は,コープマンの第2巻を買って聴いていただくといいと思います。

「のだめカンタービレ」ののだめもコンクールで第2巻の16番を弾いてるって聞きましたが,別に1番から聴かなくてもこの曲から聴き始めるというのもテですね。16番のフーガは連音がとても印象的なテーマを持つ曲です。

バッハというとトッカータとフーガやブランデンブルク協奏曲などがよく聴かれますが,本当のバッハの良さを知るには,平均律やカンタータを聴くといいと思います。ブランデンなんてダサイ,やっぱ平均律第2巻やカンタータがトレンドだって,なんちゃって。

そうです,思い出しました。名古屋のしらかわホールで3月7日に鈴木雅明演奏で平均律第2巻全曲演奏会があります。これはオススメです。

ブーケガルニでコンサート

2006年01月29日 00時35分44秒 | 音楽系
今日は岐阜県各務原市のブーケガルニというレストランでコンサート。
去年打ち合わせに行ったときは,予想していたより時間がかかり,到着時間が大幅に遅れてしまったので,今日は早めに出発。

ルートも大垣経由を変えて,揖斐川沿いに堤防道路を行くことにしました。お陰で5時頃に着く予定が大幅に早く着いてしまいました。

会場のすぐそばを電車が走っているので,今回はPAは必須です。例のPAシステムがあるので,ほとんどどんな会場にも対応できるので頼もしい限りです。

コンサートには30名を超える方にお越し頂き,満員になりました。レストランなどのコンサートではトークをまじえて演奏するのが多いですが,今回もそのスタイルです。今日もシー・ミーという曲をやってしまいました。

シー・ミーはメロディの階名が「シミシミ,それシミ。どれどれシミ。どれどれシミ。シミシミそらシミ」となる曲で自作です。曲調は素朴なトラッド調なので,よくトマス・ロビンソンのトイという曲と組み合わせて演奏します。

曲を弾いたあとから,「種明かし」をして笑いをとるのですが,どうも最近何か鋭い視線が気になります。(笑)やはり高齢化・・・いや失礼。また,この手の新作というか新手を考えないといけないですね。

ヴァイスの変ロ長調ソナタの抜粋(抜粋といっても20分くらいかかります)は一曲ずつ解説をはさみながら演奏しましたが,やはりこの方が雰囲気がかたくならずよかったみたいです。アンコールは抜粋からもれたブレとド・ヴィゼのアルマンド。2月26日の自分のコンサートと4月のホピーのコンサートの宣伝をたっぷりして終了しました。2月26日は変ロ長調ソナタ全曲をやりますので,お楽しみに。え?そんな長い曲聴き疲れするって?ええ,しっかり栄養と睡眠を取った上でお越し下さい。(笑)

また桑名語の話題

2006年01月26日 12時10分55秒 | 音楽系
また桑名語の話です。(笑)

私が小学生だったときは,世の中もっと桑名語が濃かったです。当然学校の先生も桑名語ばりばりでした。

小学校1年か2年のとき(多分2年のとき)音楽の時間に「喜びの歌」を習いました。もちろん歌詞はドイツ語ではなくて日本語です。「はれたる あおぞら ただよう くもよ・・・」って歌詞です。これって今も日本語の場合この歌詞なのかな?

これを先生は「はーれーたール あーおーぞーラ たーだーよーオ くーーもヨ」と歌っておられました。私はありのままに受け止めてしまいましたから,この曲は楽譜でいうと4拍目にアクセントが来るという風に覚えてしまいました。

中学生になってそのメロディを交響曲第9番として聞いたとき,決して同じものだとは思いませんでした。誰でも歌いやすいようにメロディを変えてあるのだと信じて疑いませんでした。その呪縛(笑)が取れたのが何と高校生の頃です。何気なく交響曲のメロディと喜びの歌のメロディを比べてみたら,な,何と同じだったんです。これはホント驚きました。

小さいときに刷り込まれたお陰で,「はーれーたール あーおーぞーラ・・・」は楽勝ですが,「ハれたる アおぞら・・・」式は相当意識しないとだめです。つい昔のパターンが出てしまいます。まぁ,この日本語の歌詞もアクセントがちょっと変ではありますけど。

あと同様なトラウマがもう一つあるんです。小さいときに(そういや「喜びの歌」の頃ですね)父親からヴァイオリンを教えてもらっていましたが,ヴァイオリンの教則本にヘンデルのブレがありました。(作品1の5のト長調のブレ)この父親の教え方がかなりでたらめで,というか多分何も考えてなかったと思うんですが,何と始めの何小節かは3拍子のアクセントで,途中から2拍子という大胆な解釈で教えてくれました。ソーソーミー ファミレドソー ドーーシラ ソーファミレミ・・・(移動ドです)という感じ。(笑)
お陰でこの曲の通奏低音は,メロディを聴いていると出来ません。あな恐ろしや。小さいときに刷り込まれてしまったものはもう取れないんですね。

桑名語

2006年01月25日 10時11分38秒 | ローカルネタ
私が住んでいる桑名のことばは関西方言の一つに分類されます。ま,関西以外の地域の人が聞いたら多分大阪弁と同じに聞こえるでしょうが,関西弁ネイティブからするとものすごい差があります。隣の町の四日市のことばでも実際は相当違うんですから。河内弁なんかもう外国語くらい違います。

桑名の伝統的な発音はもうだんだん薄れてきていますが,サウンドとしては比較的軽い感じの響きがします。大阪あたりのことばは何かねっとりとした感じです。語彙や言い回しに少し名古屋のことばの影響があるみたいですけど,何と言っても特徴的なのはアクセントです。特に名詞が単独で出てきたときによくわかるんですけど,最後の音が上がるんですね。例えば,近鉄は「きんてツ」(カタカナのところが高い)です。確か大阪の方では「きンてつ」ですよね。国鉄(もうないですが(笑))も「こくてツ」です。

江戸時代から(多分)ある町の名前もいくつかの例外を除き最後が高いです。ただし,なになに町というのは複合語なので,町の前の音が高くなります。

例えば,

伝馬町(てんマちょう)八坂町(やさカちょう)←私が住んでいるところです。
西鍋屋町(にしなべヤまち)三の丸(さんのまル)一色町(いしキまち)

面白いでしょ?

例外は,

片町(カたまち)鍛冶町(カじまち) (音が2つの場合)
宝殿町(ほうデんちょう) (「ん」にはアクセントがつかない?)

これに対して新しい町は旧市街であっても新しく出来た町は,伝統的桑名弁とは異なった読み方をします。

有楽町は(こんな町名があるんですねぇ)決して「ゆうらクちょう」とはいいませんし,銀座(笑)も普通に「ぎんざ」です。東京のハイカラな町名は桑名読みではダサイんですね。

この話題はまだまだ続きます。今日はとりあえずここまで。

鬼門

2006年01月22日 01時05分21秒 | 音楽系
バロックリュートは比較的調性に対する適応性が高い方だと思います。ちょっとわかりにくい言い方ですけど,リュートとかギターとかヴァイオリンは曲が何調であるかによってすごくひきやすかったり,響きが明るくなったりまたその逆にもなります。まだヴァイオリンはメロディが主だからいいですけど,ソロ楽器のリュートとかギターはほとんど実用にならない調もあるわけです。

でもバロックのアンサンブル(通奏低音を担当します)をするときは,そんなことを言ってられません。当然昔も事情は同じだったでしょうね。

「ボク,イ短調は得意だけど,ト短調の和音は知らないから弾けません」

なんて言ってたら商売になりません。

でもそうは言っても調性に対する得手不得手があるのは厳然たる事実なので,せめて得手不得手の傾向をヴァイオリンと同じにということで使われるようになったのが,テオルボとかバロックリュートの調弦なんでしょう。これが,1弦をソに合わせるルネサンスリュート式の調弦だと,♭系の調は得意でも♯系はだめです。これはヴァイオリンの傾向とは異なります。そこで一弦をラに合わせるとそれは解消します。

バロックリュートは1弦がラではありませんが,6弦はラです。でも2~4弦(コース)は1弦がソのルネサンスリュートと同じ調弦です。いわば♭系もシャープ系もなんでも来いのオールマイティ型です。はじめに「調性に対する適応性が高い」と書いたのはそういうことです。ヴァイスも当然バロックリュートで通奏低音していた訳で,もちろん「ト短調はだめです」なんて言ってた訳がありません。イ長調でもホ長調でも変ロ長調でもなんでもオーケーだったでしょう。

でも実は,バロックリュートにはすごく苦手な調が一つあります。それはロ短調です。♯2個です。同じ♯2個のニ長調は非常に明るく響きますが,ロ短調はだめです。まぁ,鬼門みたいなもんです。(笑)これは,BマイナーとBメイジャーの和音が非常に押さえにくいからなんです。同じ理由でホ短調も苦手な方です。

ヴァイスのソロ作品でロ短調はゼロ,ホ短調はト長調組曲の一部で一曲だけありますが,ホ短調組曲というのはありません。イ短調の曲で途中で転調してホ短調になってくるとBのコードが出てきますが,上手く音型を工夫してバスを弾くのに負担がないようにしている(ごまかしている?)曲すらあります。

もっともBのコードを弾く解決策は実はありまして通奏低音で4ポジションをバレ(人差し指で何本かの弦をバッと押さえる)をして7弦(コース)を押さえたらそんなに問題はありません。でも音が暗くなるので,ソロでは使わなかったということなんでしょうね。当然通奏低音でロ短調がだめですなんて言ってられなかったでしょうから,いろんな方法を使ってやってたんだとは思います。それにしてもフラットがいっぱいつく変ロ短調の曲があるというのに,シャープがたった2つのロ短調の組曲がヴァイスに一つも残っていないというのも何か不思議な感じもしますね。

大騒ぎ

2006年01月20日 00時46分14秒 | 日々のこと
世の中ライブドアの事件で大騒ぎですね。

以前Operaというブラウザを使っていたことがあるんですが,無料版の場合は画面上部に宣伝が出ます。地元の宣伝が出るみたいで,(バーゼルに居たときだったので)ドイツ語でデルコンピュータの宣伝が出ていました。

いつの間にかOperaの日本法人がライブドアになったようで,新ヴァージョンにかえたらライブドアやその系列のサイトのプリセットがどっと出てきて,その商売気になんかえげつなさを感じたものでした。それや,あと操作性が良くないこともあって,Firefoxが出たらすぐに乗り換えました。そんなこともあり,ライブドアにはあまりいい印象を持っていません。

ライブドアはもうかなり前になるんですけど,インターネット接続業者として,パソコン雑誌で広告を見たことがあります。そのときはすごく洗練された感じの印象を受けたんですが,その会社とホリエモンの印象がどうも合いませんでした。で,最近新聞で読んで知ったんですが,そのインターネット接続の会社をホリエモンが吸収合併して,それ以降自分の会社の名前をライブドアと名乗っているらしいです。

なるほど,それなら納得。(笑)私が以前コンピュータ雑誌で見ていい印象を持ったその当時の会社の社長はホリエモンじゃなかったんですね。

この株ブームで何十億って儲けている個人もいて,彼らは結構淡々としているんですね。儲けていても熱くならないと言うか。ま,それだから株で儲けられるのかも知れないけど。株式に再投資する以外にその儲けた何十億の用途がないみたいに見えるんですけど,もったいないですね。そういう人がポンと金を出して(たった5億くらいでいいんじゃないかな,とりあえず)名古屋の都心に200席くらいの古楽専用ホール作ってくれたら,世のためになると思うんですけどねぇ。(笑)お金はもっと有効活用しましょう。

促成栽培

2006年01月18日 00時51分54秒 | 音楽系
今日スポーツジムでウォーキングをしながらテレビを見ていましたら,音楽経験のない芸能人が100日でコンクールに出る,という番組をやっていました。そのために汗と涙の努力をするわけです。

ウォーキングマシンは単調なのでテレビを見ながらとか音楽を聴きながらでないとやってられません。いつもはNHKにしてもらうのですが,他の人も見ていたのでしぶしぶこの番組を見てしまいました。

ま,別に大した番組ではありませんでしたが,その芸能人達が練習していた楽器は金管楽器とエレキベース,ドラム,ピアノでした。なるほど,このあたりの楽器なら100日「促成栽培」も可能かな。(笑)やはりエレキギターはなかったですね。

いろんな人が楽器をするのはとてもいいことですが,でも傾向として割と入門期が楽な楽器に寄って行っている感じがするのは,ちょっとひがみがあるからかな。リュートなんて入門期がシンドイ楽器の最右翼ですからねぇ。そういう楽器でも基礎からコツコツと積み上げていけばなんとかなるもんですけどね。でも世の中なんか楽な方へ楽な方へ行きつつあるような気がします。あ,金管楽器がだめだと言っているわけじゃないですよ。

でも,音は小さいし,弦も沢山ある,右手と左手は違う動作で大変だし,楽器は持ちにくいし,でもそれらと引き替えに,音はきれい,楽器の形もきれい,やさしい音色,適度な音量,うまく弾ければ男性(または女性)に確実にモテる,というすぐれた特徴を持つ非近代的な楽器にももうちょっとみなさんの関心が向いてもいいんじゃないかなと思う今日この頃です。

リンドベルイのモンテヴェルディ

2006年01月16日 21時32分53秒 | 音楽系
昨日はヤコブ・リンドベルイ率いるムジカマーノのコンサートに行って来ました。リンドベルイはスゥエーデン生まれのリュート奏者で,現在は確かロンドンで教えていると思います。名古屋へはソロで2,3回来ていますが,アンサンブルでは初めてですね。

ステージに登場したリンドベルイ,やっぱりちょっと老けましたね。演奏も老眼鏡がないと楽譜が読めないみたい。(人のこと言えないけど(笑))

プログラムはオールモンテヴェルディです。オペラのシーンにいくつか有名なアリアを添えるという趣向でなかなか楽しめるプログラムです。

歌が6人とヴァイオリン2人,それにテオルボ(バロック・ギター)というオペラのシーンを演じることができる最低編成です。ソプラノの2人はすごく上手かったですねぇ。もう一人の若いソプラノのおねえさんはちょっと声の輝きが不足かな?

男声陣はバスを除いてまずまず。バスはちょっと危ないところが多すぎって感じ?まぁ,6人全員上手い人をそろえるのは難しいですよね。

リンドベルイのテオルボはいい音でしたね。バスの音が厚みがあってよく通ります。最初はテオルボ1本で大丈夫かなと思いましたが,必要十分でした。まぁ,バロックの時代の楽器は基本的にはきちんと音量バランスが取れるはずですから,リュートやテオルボでも大丈夫なんですね。昔はそうやって使ってたわけだし。このあたりが,モダンギターと「立ち位置」が違うわけです。って別の今のクラシックギターのことをどうこういうつもりはありませんけどね。

いい演奏会でしたが,お客さんが少なかったのが残念でした。200人行くかいかないかの観客ではちょっと寂しいです。人口200万を超える大名古屋圏がバックにありながらこれだけでは寂しすぎです。人口17万都市バーゼルの月例カンタータ演奏会はいつも満員だし,3月頃の受難曲なんかは巨大な教会が満杯になります。何が違うんでしょ?

ヴァイス・ドレスデン版

2006年01月13日 21時25分08秒 | 音楽系
ヴァイスのドレスデン版キンコーズに取りに行ってきました。
ついに完成です。今回は表紙をちゃんとデザインして(前の版は,そっけなかったですから(笑))半透明のプラスチック板を重ねましたので,ぐっと高級に見えます。

前回は表紙用の厚紙にコピーをするとき,凹凸がある紙にはできなかったのが,今回キンコーズに行ったら,それはちゃんと出来るようになっていました。ちょっとお値段は張るけど,カラーコピーにすればできるとのこと。でも今バージョンでは表面がフラットな厚紙を使用しました。その方が半透明のプラスチック板になじむと思ったからです。

そういやキンコーズはFedExKinko'sになってましたね。確か住友金属鉱山という会社が始めた店だったと思います。アメリカでその業態が評判になって,日本でも展開させようとしたとき,どこにまず第1号店を出そうかと考えたところ,財布のヒモが固いので有名な名古屋にしようということで,第1号店が名古屋にできたそうです。名古屋で成功したら全国どこでもうまく行くと考えたらしいです。で,その後,成功して今に至るって感じですけど,いつの間にかFedExmに吸収されてしまったのかな。

2005年版を見ていると,今までの版より圧倒的にきれいに出来ています。オリジナル原稿の段階では,「シミはついているけど,読むことができる」部分が,謄写印刷やコピーをすると「シミがついていて,読めない」状態になっていることが多かったです。それが新版では,オリジナル原稿同様「シミはついているけど,読むことができる」状態になっています。これはコピーの機械の性能向上によるところが大です。オリジナルの資料性を損なわずに,実用的に読めるというのが理想でしたが,これが実現されたわけです。(もちろんシミがひどいところは完全に消して書き直しましたが)あと今回新たに加筆修正を施した部分と追加注をつけたところを加えると,ほぼ100%可読になりました。

すでに注文して頂いている方にはこれから連絡をして発送します。8月にはあげるなんて大嘘を言ってしまったので,もう忘れている方もいっらっしゃるかも。(笑)あ,このブログを読んで欲しいな,と思われた方はメイルで注文して下さい。宣伝でした。(笑)

ギターで弾くヴァイス

2006年01月12日 10時36分31秒 | 音楽系
名古屋市大曽根のクラシックギター専門店「ミューズギターショップ」で,面白いCDを見つけました。

David Tanenbaum plays Weiss (Acoustic Music Records LC07103)

です。

ギターでヴァイスの作品を弾いているのですが,なかなかの好演です。

ギターでヴァイスやバッハはよく演奏されるんですが,多くはギターなまりバンバンで,とてもバロックの音楽を演奏しているとは言えないものです。まぁ,簡単に言えば,昔のセゴビアやジョン・ウィリアムスのような演奏ですね。

それのどこが問題なんだい?え?セゴビアのどこが悪い?ジョンのどこが悪い?って声が聞こえてきそうですが,ええ,彼らは演奏としてはうまいんですけど,バロック語で話していないんです。

レガートでつぶをそろえて弾くとか,(バロック音楽としての)音色とか,フレージング,アーティキュレーション,装飾,舞曲のリズム感などなど,バロック音楽(もっと前の音楽や古典派の音楽も同じですけどね)を演奏するのに必要なことが,すっぽり抜けているわけです。

何人かの日本人ギタリストみたいに,やたらと力んで速くひいたり,爪を立ててひいたりするのは論外です。

タネンバオムの演奏は,こういった基本線はクリアして,バロック音楽の演奏としての批評に耐えるレベルに達していると思います。曲目は,ホ短調組曲(オリジナルはヘ短調),パサカリア,ロジー伯のトンボー,ファンタジア,イ長調組曲などです。ミューズでホ短調組曲を聴いて,お,これはいいと思ってCDを買ってしまいました。ただ残念なのは,何曲かはアレンジが成功しているとは言えず(結果的に演奏も成功しているとは言えず)今後の課題でしょう。細かいところはいろいろあるにしてもホ短調組曲では好演だっただけに残念です。ギターでヴァイスを弾くときはどういう曲をどうアレンジするかという戦略的な面も大切でしょうね。バロックリュートなら当然全部弾けるわけですが,ギターではいろいろ制約もあるでしょうから。

ともあれ,楽しみな人ではあります。他のギタリストのみなさんもがんばってヴァイスやバッハをもっと弾いてくださいね。あ,もちろんリュートの方もね。(笑)