リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

バロック音楽の旅12第2回講座

2018年09月25日 00時00分00秒 | 音楽系
バロック音楽の旅12第2回講座が終了しました。講座が開催された9月23日はなんでも台風が来ない「特異日」だそうで、気象庁が統計を取り始めて以来、9月23日だけは台風が上陸していないということです。あの伊勢湾台風は9月26日でした。それもあってかとてもいい天気で、前日や前週の運動会が中止になりこの日に実施という小学校もあり、お子さんやお孫さんの運動会に行った受講生の方もいらっしゃいましたので、参加された方は少し少なめでした。それでも今年は受講申し込みされたかたが100名超えですので、70名近くの方にご参加頂きました。



今回は「バロック音楽のかたち」というタイトルで、様々な形式の音楽についてプレゼン致しました。扱いました形式はコンチェルト、カンタータ、受難曲、オラトリオ、組曲、パルティータ、ソナタなどで、パワポの画面を見て、1分少しに編集した音楽を聴きながら進めて行きました。途中クイズなんかも織り交ぜたりして、外国語のカタカナオンパレードの画面に少しでも親しみを持っていただくよう工夫してみました。また、「講座」ということで、確認テストも用意して希望者に配布致しました。確認テストはなんか学校みたいで敬遠されるかと思いきや、なかなかの人気で多くの方が取りに来て頂きました。

プレゼンで使う引用音楽は、以前は自分の手持ちのCDからリッピングしてそのデータを編集していましたが、最近はiTunesやAmazon musicで安く購入した(ダウンロード)曲を編集することが多くなりました。もともとデータで買うので、こちらとしては一手間減るのでとても便利です。これも時代ですかねぇ。

次回は10月14日。オーボエの大山有里子さんとチェンバロの岡田龍之介さんによるコンサートです。バロック・オーボエは今回初登場です。

2つの新しいアルバム

2018年09月18日 15時05分13秒 | 音楽系
ポール・マッカートニーの新しいアルバム、「エジプト・ステーション」がビルボードの1位になったそうです。5年くらい前の前作もプロデューサーを変えて、随分サウンドが変わったなと思いましたが、今回もまた別のプロデューサーが担当したそうです。

今回の作品もとてもポールらしい冴えが感じられる曲が多いのはさすがです。新しいプロデューサーを得て、ポールの作品として違和感がなく、でもいままでとは少し違う新しい感じのアレンジや録音処理が魅力的です。彼と仕事をしたい若い人は一杯いますから、そういった若い才能を得てますますサウンドに磨きがかかっているという感じです。若い人にも、彼らにとってみれば少し古風な感じもあるポールの音楽は、すごくアピールするのでは。まぁどっかのバンドみたいにジジイとばっかりといつまでもやっていたのでは、ファンはジジイとババアだけになってしまうということですか。

あと1枚、新しいアルバム。ヨーロッパを拠点に活動している、リュートの大家今村泰典氏の新しいバッハのアルバムです。もう大分前に彼はバッハのソロ・リュート曲を2枚のCDに録音しましたが、今回はマタイ受難曲、ヨハネ受難曲のアリアも含めた2枚組アルバムで、9月末に彼自身の執筆による日本語解説付きでナクソスより発売されます。

今回は全ての曲が原調のまま演奏されています。前作では例えばホ短調のBWV996はト短調に移調されていましたし、BWV998のプレリュード・フーガ・アレグロはニ長調で演奏されていました。いわゆるニ短調調弦のバロック・リュートで原調のままで全ての曲を演奏をするのは不可能です。リュートを弾かない方にとっては、この話はどうでもいいのでしょうが、演奏する側からすると大問題なのです。

今回今村氏はどういう手法を使ったのかというと、変調弦(スコルダトゥーラ)をいくつかの曲に取り入れました。彼が使った変調弦は、6コースまでは各コースの音程間隔を変えない方法です。前回ト短調で演奏した原調がホ短調の曲は、短3度調弦全体を下げてホ短調に、同じく前回ニ長調で演奏したプレリュード・フーガ・アレグロは半音調弦を上げて原調の変ホ長調で演奏しています。タブ譜的に見れば前回と同じものになります。もちろん実際は多少は変えているでしょうけど。

1曲だけ例外なのが、1006aです。この曲においては、1コースからミド♯ラミド♯ラ以下ホ長調の音階のバス弦、のような変調弦を使っています。この方法はもう40年以上前ですが、当時のバーゼル・スコラ・カントルムの教授であった、オイゲン・ミュラー・ドンボア氏がこのホ長調組曲を実用的に演奏できる変調弦として提唱していたものです。今村氏は若い頃ドンボア氏にも師事をしていましたので、40年以上経って初めて「世に出た」という感じです。ドンボア氏は惜しくも数年前になくなられましたが、きっと草葉の陰で喜んでおられることでしょう。

このアルバムには、受難曲のアリアも入っているというのはすでに述べましたが、それにオルガンでムリス野田亜希さんも参加されています。彼女は名古屋出身で、以前バロック音楽の旅のコンサートにも出演していただいたことがあります。バーゼル・スコラ・カントルムを卒業後はヨーロッパに拠点を置いて活躍されています。

このアルバムに使った会場は、今村氏の自宅のすぐ近くの教会です。いい響きの教会がすぐ近くにあり、近所に住んでいる演奏家と一緒に録音できるなんて、素晴らしい環境ですね。

ブラックアウト

2018年09月07日 10時16分37秒 | 日々のこと
台風が過ぎ去ったと思ったら今度は大地震です。北海道の山崩れには驚きました。今までに知っている山崩れというのとは次元が異なり、同時多発山体崩壊とでもいうべき感じがします。

今回の地震で電力供給にも大きな影響が出ています。北海道中で今だに停電が続き、完全に復旧するのには一週間以上かかるということです。この「ブラックアウト」は北海道全体で大地震が起こって、各地の発電所がやられたというのが原因ではないそうです。

北海道電力の発電体制が、今回被害を受けた苫東厚真火力発電所(出力165万キロワット)に依存しすぎていたというのが原因とのことです。これは東日本大震災を受けて、泊原子力発電所(出力207万キロワット)の稼働停止以降のことで、北海道電力はその危険性は承知していたようです。「ブラックアウト」に陥る危険を避けるため、北海道電力はガス火力発電所の新設を決め19年に完成予定でしたが、今回の地震には間に合わなかったのです。

東日本大震災後に当時の菅政権がかなりヒステリックに世論を煽って日本全国の原発を止めてしまいました。恐らく電力の専門家は今回のような事態は知っていたはずですが、恐らく冷静な議論なしに政治的パフォーマンスで決定した感じがします。

原発に関しては、作る前の議論ならいざ知らず、すでに作ってしまっているわけなので、多岐にわたる慎重な議論を経て総合的に判断すべきことだと思います。原発は危険だから即廃止すべきだというのは、あまりにナイーブな議論です。

危険だと言って原発を稼働停止させ、それが原因でブラックアウトが起こり、さらに当然稼働停止している原発の電源も停止し、原発自体が危機にあった(難は逃れたようですが)のは皮肉なことです。結果論ですけど、「危険な」原発を稼働させていれば、今回の事態には至らなかったというこです。

それにしても、再生エネルギー賦課金の問題もそうですが(今月も2000円近くをたくさんお金を儲けている業者さんに献納させていただきました)7年前の菅直人民主党政権の失政には誠に罪深いものがあります。(民主党政権は菅直人政権以外もたくさん「亡国的」失政がありましたが)

国のトップの決断は実に重いものがあります。私は今回の「ブラックアウト」は人災ではなかったかと思うのですが、このような事態に陥らないためにも、私たちは政治家の言動に対し、しっかり目を見開いていなくてはなりませんし、選ばれた政治家も負託に値する行動をとらなくていけないと思います。

大規模停電!

2018年09月05日 10時03分49秒 | 日々のこと
昨日の台風はすごかったですね。皆さんの地域は大丈夫でしたでしょうか。

ピーク時には家が揺れまくっていました。少し前の台風のときも揺れましたが、それよりはずっと風は強かったようです。今回の台風は速度が速いので16時過ぎにはピークを過ぎたかなという感じがしましたので、もうこれで一安心とデスクトップ・コンピュータを立ち上げて一仕事始めました。停電が心配ならノート・パソコンでやればいいのですが、さすがにピークを過ぎたので大丈夫だろうという判断です。

何日か前から、来年のリサイタル用に、アウグスブルク写本からクラインクネヒトのコンチェルトをシベリウスでスコア起こしをしていましたが、8時半頃に遂に打ち終えました。手書き譜は結構各パートが不統一なのでまだあと検討箇所は沢山ありますが、取りあえず形にはなりました。私はコンピュータは寝る前に電源を落としますので、まだ寝るには早い時間ということでそのままにして二階の居間でテレビを見ていました。

すると突然、プツンというような音がして真っ暗になりました。久しぶりの停電ですねぇ。ここ30年くらいは一度もなかったです。でも一応ろうそくと手巻き発電ラジオ(前日に点検してあります)は用意してありましたので、切り替えです。



何か懐かしい世界ですね。伊勢湾台風のときは1週間くらい停電していましたが、今回はすぐ復旧するだろうと思って不便さを楽しむことに・・・でも1時間経ってもまだです。もうそろそろ不便さを楽しめなくなってきました。(笑)部屋もエアコンが切れているので蒸し暑くなってきたし。9時前に停電して、2時間ちょっと経った11時過ぎにやっと電気は復旧しました。停電中にネットで調べていましたら相当規模の大停電だったようです。

電源を入れてあったコンピュータが心配なので、すぐに見に行きましたが、全く何事もなかったかのようにWindowsは立ち上がりました。最近のWindowsは堅牢なのですね!シベリウスもちゃんと復旧用のファイルが保存されていて、データが壊れるというようなことはありませんでした。ま、もともと保存はこまめにしていましたし。

翌日家の周りを見てみましたら、特に異変はありませんでした。ただ少し離れたところにある空き家の前にステンレス製の何かがくちゃくちゃになって落ちていました。これは町内会長さんに連絡しておかんといけませんです。

河口湖自動車博物館

2018年09月01日 19時13分00秒 | 日々のこと
河口湖の近くに1年のうち8月のみ開館するという珍しい博物館があります。これまで2回訪問致していますが、8月の終わり頃になって急に思い立って家内と出かけました。

この博物館は、原田信雄さんという方が私財をなげうって作った博物館で、自動車の他、飛行機も沢山展示されています。私は飛行機の方に興味がありますので、見学はもっぱら「飛行館」が中心です。ここには主に日本の大戦機が展示されているという希有な博物館です。最近は岐阜県の各務原航空博物館で修復された陸軍三式戦闘機「飛燕」が展示されたりして、かつての日本の航空機を大切に扱うところが増えてきてはいますが、なんといってもここは世界で日本の大戦機が一番多く展示されているところです。誉、アツタ、栄といったエンジンの展示もあります。今年の目玉は、ほぼ修復が完了した陸軍一式戦闘機「隼」です。



この機体は初期型ですので、プロペラが2枚です。多分飛行可能な状態にまでは修復しないと思いますが、仮にそこまでしたとしても今度は飛ばすのが大変です、というかほぼ不可能に近いと思います。その点、昨年末訪問しましたカリフォルニア州チノにある「名だたる飛行機の博物館」はなんと飛行場が隣接しているのでさすがにアメリカです。この河口湖自動車博物館は今日から来年の7月31日までお休みです。

昨年の訪問は日帰りでしたけど、今回は箱根の強羅温泉に泊まることにしたので、博物館見学後は強羅に向かいました。御殿場を通って行くのですが、途中ふと思い出して、東山荘という施設に立ち寄りました。実はこの東山荘、1972年に日本で初めて古楽のサマーセミナーが開催されたところです。



この時は、バッハのBWV198から復元されたマルコ受難曲を演奏するというのがテーマでした。まだ二十歳そこそこの私は、まだリュートは持っていなかったものの、BWV198でリュートが使われているということは知っていましたので、このセミナーに行けばきっとリュートを弾く人がいるだろうということででかけましたら、予想通りSさんとNさんという方が参加されていました。

このセミナーはいわば「梁山泊」といった感じで、現在の古楽界の重鎮となられている方々が参加されていました。フラウト・トラヴェルソの有田さん、ガンバの宇田川さん、平尾さん、ヴァイオリンの小野さん(当時は中島さん)等々、2年後に師事することになる大橋敏成先生も講師で参加されていました。平尾さんは当時高校生、大橋先生のレッスンを確かフィッシャー館という別棟でレッスンを受けていました。リュートは当時日本には先生がいなかったので、リュートの研究もされていた大橋先生のヴィオラ・ダ・ガンバのレッスンを聴講していました。

東山荘は現在も営業していて、施設の中に入ってみましたが、アプローチのところと駐車場付近に当時の記憶と結びつくところが少しあったものの、それ以外は全く当時を思い起こさせるものはなく、46年の歳月の長さを思い知りました。ひとつくらい懐かしい建物があってそこで感慨に浸りたかったんですが・・・