リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

生活防水

2008年11月30日 12時41分32秒 | 音楽系
ラソオマ製のリュートケースは超軽量でリュート奏者に大人気です。スコラであまりに皆が欲しい欲しいというので代理店を務めていたくらいです。(ウソです(笑))ただこの超軽量ケース、欠点がないでもないです。

一つは軽すぎて日本の春先など風が強い日に地面に置いたりすると、吹き飛ばされてしまうことです。私は以前、ラソオマケースに入ったルネサンスリュートを駅のホームにちょっと置いたところ、突然風がビューと吹き、ルネサンスリュートのケースごとズズズーっと持ってかれまして、あわてて捕まえに行き事なきを得たということがありました。ホームから線路に落ちてそこへ列車が・・・と思うとぞっとしました。ま、これも軽すぎるが故のことです。

あと、ケース全体としては防水といっていいのですが、蓋をファスナーで閉めるタイプですので、この部分から雨水が入る可能性があることが問題です。これはいつも車でしか楽器を移動させないという人はあまり問題にならないことかもしれませんが、そうでない人の場合は結構気をつかうことです。実際には相当雨にあたらないと楽器そのものに雨水が届くことはないのですが、ケース自体に少し雨水が入るのはあまりいいことではありません。

雨の日にはケース全体をゴミ袋に入れて持ち歩いている人もいますが、確かにいい方法ではありますが、ちょっとどっかに置き忘れたりすると間違いなくゴミ処理場行きになるという非常に大きなリスクがあります。そこでもう少し安全な方法をご紹介しましょう。これはリュート用のケースのみならず、この類の軽量ケース(ギター用、ガンバ用)など全てに応用が利く方法です。

それは写真のようにはがせるタイプのガムテープをファスナー部分に貼り付けるという方法です。





もちろん使い捨てですし、高度な防水性能があるわけではありませんが、少々の雨が当たるくらいなら充分機能します。時計で言えば「生活防水」というレベルの機能ですね。ラソオマケースは、他の部分はビニール製なので水は入りません。この類のテープをファスナー部分に貼り、できるだけ雨に当たらないように傘をさして、雨の当たらないところに来たらタオルなどでケースに当たった雨をサッと拭く、というような使い方がいいと思います。

名刺印刷

2008年11月27日 11時04分48秒 | 日々のこと
自分の名刺を印刷屋さんに出さなくなって久しいです。名刺というのは一定枚数でなければ印刷屋さんはやってくれませんから、余ってしまうことがよくありました。でも自分で必要なだけ印刷できるようになったというのはありがたいことです。印刷屋さんにとってはありがたくないでしょうが。(笑)

さて名刺が切れてきましたので印刷を、ということでA社の名刺用紙付属というかオンラインでダウンロードする式の無料ソフトを立ち上げますと、ヴァージョンアップするか聴いてきました。新しいものは何かいい感じがするので、当然ヴァージョンアップしました。

実はこのヴァージョンアップがこの先のいろいろなトラブルにつながったようで、20枚程度の名刺を印刷するのに30分くらい費やしてしまいました。(本来なら2,3分ですが)

保存してあったデータをロードして印刷しようとしたら、プリンタ側で「用紙サイズが異なる」というメッセージが出てきて、紙を縦に入れてあるのに横向きの印刷をされたのが出てきまして、名刺用紙1シートが無駄になってしまいました。確か、前回印刷したときはきちんと縦向きで出てきたのに・・・

使い古しの用紙に入れ替えて何かもやってみましたが結果は同じ。マニュアルをひっくり返して、マルチパーパストレイ(厚紙はこれに入れて印刷です)の用紙設定(プリンタ本体)を確認してやってみましたが、結果は同じ。あれれれ?何でだろと思い、プリンタドライバの設定をよく見てみると、用紙設定の下にオプションというのがあって、その中に印刷を横向きにするというチェック欄がありました。そのチェック欄にチェックが入っていたので、プリンタ本体の設定にかかわらず横印刷になるようでした。そのチェックをはずしたら、見事というか当たり前ですが、縦に出てきました。

でもこのオプションのチェック欄は何のためにあるんでしょ?混乱のもとですねぇ。たまたま見つけたらいいものの、わからなければサポートに電話しようかと思っていたところです。電話サポートは大体一発でつながらないことが多いで避けたいところでしたが、まぁ今回はよかったです。

今回のトラブルは、多分旧バージョンの名刺印刷ソフトではプリンタドライバを優先的にコントロールしていたのが、新バージョンではそれをしなくなったことが根本原因で、そこにプリンタドライバのメニュー構成の問題が加わったことによるんじゃないかと推測します。

こういうトラブルって見つかりにくいのでいやですね。新しいがいつもいいとは限らないという見本です。コンピュータとかソフトウエアは、普通に動いているのなら、何も新しいのにわざわざ替える必要はない、という教訓ですね。昔は新しいものはより改良されて・・・という夢みたいなものがあったんですが、ハードもソフトも必要充分なだけ発達してしまった今はなんか味気ないといえば味気ないです。

本格派

2008年11月26日 14時01分46秒 | 音楽系
バロック・チェロの鈴木秀美さんが名古屋でバッハの無伴奏チェロ組曲を演奏するコンサートを開きます。(12月17日、名古屋電気文化会館)スポンサーもさすがに大きなところがついているみたいで、先日車を運転しながらラジオを聞いていましたら、宣伝していました。

「・・・鈴木秀美リサイタル・・・バッハの無伴奏チェロ組曲をバロック・チェロで演奏する本格派・・・」

うーん、ホンカクハねぇ。「本格派」って、そういうふうに使うことばでしたっけ?広辞苑を調べてみますと、本格というのは「もとからの正しい方式、本来の格式を備えていること」などとあります。

秀美さんのバロック・チェロによるバッハの演奏が本格であるというのはいうまでもありませんが、もともとすでに本格である人に対しては本格的とか本格派とは言わないというところがこのことばの用法として重要なところだと思います。

本格でない人、例えば最近モダンチェロからバロックチェロに持ちかえたアマチュア演奏家のAさんの演奏に対して、「いやー、Aさん、バロックチェロで演奏するなんて本格的ですねぇ」と言うようなのがよく耳にする言い方だと思います。従ってその道の名人に向かって、「いやー、本格的ですねぇ」というのはものすごく失礼な言い方だと感じてしまうんですが、どうなんでしょう。

第3回バロック音楽の旅2008講座

2008年11月25日 12時24分49秒 | 音楽系
22日はくわな市民大学市民学科講座「バロック音楽の旅」第3回講座でした。今回は名古屋で活躍するフラウト・トラヴェルソ(バロック時代のフルートです)の片岡博明さんをお迎えしてのコンサートです。通奏低音は前回ソロコンサートをしていただいた鈴木美香さんのチェンバロと私のテオルボ(大型のリュート)が受け持ちました。鈴木さんが使用したチェンバロは前回ソロで使用した、名古屋在住の製作家安達正浩さん作のもので、白とピンクの美しいボディを持つ可憐な音色の楽器です。

プログラムはフランスとドイツの後期バロック音楽を中心に組んでいただきました。曲目は次の通り。

ジャック=マルタン・オトテール ( 1674 - 1763 ) 組曲第3番 ト長調

ミシェル・ブラヴェ (1700 - 1768 ) ソナタ第2番 ロ短調

ジャン=マリー・ルクレール ( 1697 - 1764 ) ソナタ第3番 ハ長調

ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル ( 1685 - 1759 ) ソナタ第1番 ホ短調

カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ ( 1714 - 1788 ) ソナタ ト長調

ゲオルク・フィリップ・テレマン ( 1681 - 1767 ) ソロ第5番 ト短調




前半はフランスもので、ルクレールのあとに休憩をはさんで後半はドイツものでした。前回のチェンバロソロも大変好評でしたが、会場の大山田キリスト教会チャペルの豊かな残響の中で耳にする、バロック時代のフルート、フラウト・トラヴェルソの音に、皆さんうっとりと聴き入って下さいました。曲目も十八番をならべただけに片岡さんのフラウト・トラヴェルソはまさに絶好調でした。さらに通奏低音にチェンバロとテオルボを使ったのもいい評価を頂きました。

私が使ったテオルボはいわゆるフレンチテオルボでしたが、弦はいわゆるテオルボの調弦ではなく、バロックリュートと同じ調弦にしてあります。ま、要するに巨大なバロックリュートということです。バロックリュートの方がテオルボの調弦より高い音を取りやすく、かつ調性の対応性が高いので最近はもっぱらこれです。加えてスイスのモーリス・オッティガー作のフレンチテオルボはすごく音量があり、今回のコンサートでもトラヴェルソとチェンバロに負けず音が対角線の一番遠いところにいた方にも充分届いていたそうです。(そんな当たり前のこといちいち言わなあかんくらいリュートは音が通らんのかい、ってつっこまれそうですが(笑))前の方のお客さんなんかはチェンバロより音が大きかったとおっしゃる方もいましたが、これは多分リュートは音が小さいというつもりで聴いていたからかも知れません。

今回の通奏低音はせっかく2つの楽器を使うので、エマヌエル・バッハの作品では強弱をはっきりつけなくてはいけないところを少し工夫してみました。つまり、片岡さんがピアニシモで演奏するところは、チェンバロは休みにして、テオルボが少し音色も柔らかめに変えてピアノくらいで演奏する、フォルテシモのところはチェンバロのコードを厚めに、テオルボは少し固めの音でといった工夫です。私たちとしては自画自賛(笑)していましたが、聴かれた方は如何だったでしょうか。


コンサートが終わって後かたづけをするころはこんなに暗くなっていました。

さて次回第4回の講座はレクチャーで会場を桑名市精義公民館に移します。「ヨーロッパの古都と名画とバロック音楽」と題し、ヨーロッパの古い街や絵を見ながらそれらにまつわる音楽を楽しんで行きたいと考えております。

社会常識

2008年11月21日 10時00分55秒 | 日々のこと
また麻生ネタですが、お医者さんの会合の席で「医者は社会常識がかなり欠落している人が多い」とおっしゃったそうな。飲み会でのたわごとならいざ知らず、一国の首相がよくいいますねぇ。思っていてもあえて言わないというのも政治家の技量のひとつなんでは?

医師会はえらく反発して、来年?の総選挙にも影響があるということを臭わせているようです。でも「社会常識欠落」と言われている職種はまだありまして、学校の先生なんかいつも言われているような気がします。というか、かつて学校の先生でした私はなんかいつも言われていたような気がします。(笑)

「社会常識が欠落」しているから、学校の先生は社会勉強のために研修と言うことで例えばお魚屋さんで働いたりしていました。お医者様とは異なり学校の先生は、本当に自分たちが社会常識が欠落していると謙虚に(というか自虐的に)思っていましたから、日教組の委員長がストを扇動したり選挙に影響があるなんてことを言ったことはありませんでした。でもここはやっぱり今回の医師会の反応みたいに強気で出ていた方がよかったのかも知れません。

まぁ、今回の舌禍、どの集団にも多少ははずれた人もいるだろうし、それを踏まえて上手に言っていたら起こらなかったのかもしれません。でもそういうことが出来ないからこそ首相はその後も問題となる発言をしているんでしょうねぇ。この首相ももう危うい?

桑名古地図

2008年11月20日 18時36分23秒 | ローカルネタ
先日愚妻と「松平定敬展」(桑名市博物館、11月24日まで)に行って来ました。松平定敬は幕末の桑名の殿様ですね。そこで、桑名市教育委員会が平成2年に発行した「桑名史料集成Ⅱ」が2000円で売っていました。これは江戸時代の桑名の古地図の複製印刷(多分原寸大)大小6枚セットになっているもので、もともとは6000円のものです。6000円でも相当安いと思いますが、それがなんと66%引きですから即決で買いです。

しかし18年もたってまだ残っているとは、よっぽど売れなかったんでしょうねぇ。ま、桑名の人でないとなかなか買うこともないでしょうから売れ残ったのも仕方がないのかも。それにしても2000円は安すぎます。興味のある方は、桑名市博物館へ。あと残すところ数日です。

この地図セットの中の一番大きな地図を廊下の壁に貼ってみました。それは文政年間の桑名市街の地図で、「この地図は元は間島氏の家のもので、文政8年(1825年)二月下旬に畔上善吉郎氏がこれを寫す。明治45年(1912)7月下旬にそれを書き写す」というような内容が右下に書かれています。原本はないようで、平成2年に印刷出版されたものは明治時代の写本の方です。



自分の家の位置に「現在地」と書いた付箋を付けておきました。(笑)いやぁ、いいですねぇ。ずっと見てても飽きません。自分の家の位置は近所のお寺や神社から判断できます。江戸時代の寺社は現在でもほとんど残っていますし、旧市街の道の骨格は江戸時代から変わっていないからです。

その地図で家の近所をいろいろ見てみますと、ひとつだけ今はもう無くなっている神社を発見しました。うむ、これは大発見です。今度時間を見つけて調査に行かなければなりません。

地図はあと4枚ありますが、小さいのを今度はトイレにでもはっておこうかな。(笑)

インテリジェンスのある英語

2008年11月17日 20時49分21秒 | 音楽系
麻生首相が次期アメリカ大統領と電話会見したあと、「インテリジェンスがえらく高そうな英語だった」と言ったそうな。「電話で話しただけなので、それでよく分かる訳ではない」といういいわけもついていましたが。(笑)

確かにことばというものは知性や育った環境、人柄などを如実に反映するもんです。でも私のような一庶民が勝手に、A国の大統領はさすがに教養の高い英語を使うねぇ、なんて管巻いているくらいならいざ知らず、一国の首相たるものが他の国のトップ(になる人)を評してインテリジェンスが高そうだ、というのは如何なもんでしょうねぇ。そもそも一国のトップはインテリジェンスが低かったらつとまりません。

もっとも首相はどうも日本語の語句を沢山誤って覚えたらしいので、自分よりはずっと賢そうだということはすぐに感じてしまったのかも。あるいは、日本語の漢字語句は苦手だけど、英語だったら相手のインテリジェンスの度合いがわかるくらいうまいんだよん、って言いたかったのかも(笑)

モーリス君

2008年11月16日 21時45分00秒 | 音楽系
先日ギター雑誌の「現代ギター」の古い号を調べることがあって、ぱらぱらと見ていましたら面白い記事を見つけました。1975年の2月号です。もう33年も前ですね。

ギター製作家の河野賢さんがヨーロッパの製作家を訪ねる「工房レポート」という連載にリュート製作家のヤコブ・ファン・デ・ゲーストのことが書かれていました。今ではお二人とも故人ですが、ヤコブ・ファン・デ・ゲーストは当時非常に人気のあったリュート製作家で、彼の楽器はホプキンソン・スミスやコンラート・ユングヘーネルを始めとするリュート奏者の録音にも使われていましたが、惜しくも80年代に夭逝したスイスの製作家です。

この記事自体は当時読んだことを覚えていましたが、ふとある写真に目がとまりました。それは「仕事を手伝うモーリス君」という説明が書かれていた写真でした。これって、ひょっとして私の楽器を作ってくれたモーリス・オッティガー?

そういやモーリスは若い頃ヤコブ・ファン・デ・ゲーストの工房で働いていたって言ったました。私がこの記事を読んだ33年前はもちろん「モーリス」君のことなどつゆ知らず、もちろん気にかけることもなく読んだわけです。他にも「モーリス君」の写真がありまして、その「モーリス君」は間違いなく若い頃のモーリス・オッティガーでした。

さっそくモーリスにスキャンした記事を送りましたら、早速返事が来ました。


・・・メイルと写真有り難う。いやぁまさしく歴史的写真です。
それはヤコブ・ファン・デ・ゲーストのところで働き始めたばかりの1974年10月のことです。現代ギターのインタビューで河野氏がやってきました。・・・


なんか不思議な出会いでした。1972年に初めてリュートを手にした私はこの1974年当時そろそろギターとの決別を考えていました。そして同年12月に四日市でのコンサートでギターを弾いたのが最後のステージでのギター演奏となりました。

シール集め

2008年11月14日 22時02分59秒 | ローカルネタ
レジ袋を持参するともらえるキントカード(正式には桑員(三重県北部の桑名市といなべ市をさします。「いなべ」は感じで書くと「員弁」です)マイバッグ運動、貯キントカード)が来月末で終了と、市の広報にありました。うーん、これ密かに集めるのが趣味だったんですけど。10月にスーパーのレジ袋が有料化されたときに、一緒に廃止されると思っていたんですが、そうならなかったので、ずっと継続されるのだと思っていました。広報では「削減の目標が達成された」とありましたが、具体的にこれだけ使用量が減ったので環境にいい影響を与えた、ということを明示してほしいところです。

家中にあるキントカードを集めて貼り直したら、あと4枚で台紙一杯になります。明日中にでも達成出来るかな?(笑)



実はもう一つシール集めをしていまして、それは小杉食品の納豆シールです。昔ながらの松経木で包んだ製品がその対象です。小杉食品在桑名の納豆メーカーで昔からファンです。小杉クラシック納豆とも言うべきその納豆は近所のスーパーでも販売されていますが。同食品はスチロールケースに入った製品も作っているんですが、それはなぜかよく行くスーパーでは販売されていません。わざわざ遠いところから製品を運ばなくても地元のメーカー製のものを販売すれば、二次的ではありますが、準地産地消になりこれこそエコロジーにつながると思うんですが・・・まぁ、いろいろあるんでしょう。(笑)




右上方にシールが切り取られた跡が・・・

このシールを20枚集めると抽選で納豆セットが当たり、200枚集めるともれなく納豆詰め合わせがもらえるということになってます。もう100枚近くなってきましたが、確か集め始めたときは、100枚で納豆詰め合わせだったと思ったんですが、いつの間にか200枚に!?いえ、記憶違いだったかも・・・。

武満とリュート

2008年11月12日 13時50分28秒 | 音楽系
先日黛敏郎の話をしたので、今度は武満。武満徹の音楽との出会いは、もう40年以上前に、NHKのFMラジオで聴いた小泉八雲の怪談の音楽聴いたあたりが最初だったでしょうか。これはミュージックコンクリートと言われていた、テープを編集した音楽だったと思います。実はどの曲が最初に聴いたのかはあまり覚えてなくて、弦楽のためのレクイエムとかグリーンとかを聴いたのがこの頃です。

先日書きました音楽芸術の付録でサクリファイスの楽譜を見たのはもう少しあとで高校生の頃。リズムがはっきりせず、線を引いて音のつながりが示してある楽譜を見たときはたまげました。でも新しもの好きの私は、なんかすばらしいものを見たような気がしてわくわくしました。リュートはすでに知って興味を持っていたので、現代の音楽にもリュートが使われるのか、と思ったものでした。

でも武満のリュートを含む作品(ソロはありませんが)はこのあとに書いたリングという図形楽譜を使った曲があるだけで、合計2曲です。リュートにとってはとても貴重な作品ですね。この2曲はCDに録音されています。私の知っている範囲では2種類ありますが、お薦めは「Toru Takemitu Works for Flute and Guitar ODE 839-2」です。サクリファイスのリュートパートは残念ながらギターで演奏されていますが、リングはオリジナルの編成です。サクリファイスでリュートの代わりにギターを使ったのは、想定されているリュートの調弦が、ギターの調弦に近いために選択した方法でしょう。でもとてもいい演奏です。1994年の録音。

武満にリュートのソロ作品がないのはとても残念です。武満が亡くなる10ヶ月ほど前、名古屋で彼の作品ばかりのコンサートがありました。その時、彼自身も来ていて、コンサートの休憩のときロビーに出てきていて談笑していました。そのとき、私は作曲を直談判しようかという衝動にかられたんですが、何となくためらってしまいました。超有名作曲家だし、コンサート会場のロビーで作曲依頼しても受けてもらえるべくもなかったと思ったからです。もっともその10ヶ月後には亡くなったので、どっちみち作曲の実現はあり得なかったでしょうが、言っておけばよかったと少し後悔はしています。