最近読んだ本です。著者の岡田暁生氏と片山杜秀氏はそれぞれ著名な音楽学者、音楽評論家です。特に片山氏は音楽以外の分野にも健筆を奮っています。
とても興味深い内容で視点も斬新なので一気に読んでしまいました。対談形式で古楽から現代音楽までを扱っていますのでとても読みやすく構成されています。
特に片山氏の近現代のロシア音楽の造詣には感服しました。ぜひ近いうちに聴いてみたいと思います。ただ古典派以降、近現代の記述がとても充実していて興味深いですが、いわゆる古楽の範疇に入る古い音楽についてはとても見方が偏っていて鋭さを感じませんでした。そのわけについては後述します。
ところで私は評論家や音楽学者の言っていることは基本的に信じていません。というか言っていることに根本的なずれがあると考えています。演奏家や作・編曲家など音楽の「現物」に関わっている人は多大の修練に黙々と時間を費やしています。その時間に彼らはいろんなレコードやCD、ライブなんかを聴いて言いたいことを言っています。
演奏家が3分の曲に何ヶ月もかけて仕上げているのに彼らはそれを3分で聴いてしまいます。作曲家が30分の曲に3年かけてもそれを30分で聴いてしまいます。とても効率的に分かったようなことが言えます。そして演奏家に比べると彼らの声はずっと大きく、音楽界の中では立場が逆転しているようなときも出てきます。