リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

330万円のアンプと9800円のアンプ(2)

2023年11月30日 09時23分52秒 | 音楽系
件のYouTuberさんの別のクリップでは、「47年前のトリオKA-7500を使ってアンプの音の正体を確認する」というのもありました。このクリップにはブラインドテストがついていました。

1)原音(MOTU M4 --> MOTU M4)
2)アンプの音(MOTU M4 -->Amp(SP端)-->MOTU M4, Load JBL S3100)

この1)の場合と2)の場合とで音が変わるかというブラインドテストです。この「原音」というのがどういうことを意味しているかよくわかりませんが、それは置いておいても、そもそもミュージックインタフェイスにMOTU M4を使っている時点で笑っちゃいます。

このMOTU M4は数万円もしない初級アマチュア用の品です。サウンドハウスで4万4千円で売っています。これに通した時点で少々の音の違いは分からなくなってしまいます。もっとちゃんとした(最低でも10万円台後半からそれ以上)品を使わないとわかるものもわかりません。

こんなレベルの品でいいのならとっくに録音スタジオでこれを使って、音源制作をしているはずですが、残念ながらそんなことはありません。私のCD録音もこれの10倍くらいする品を使っていました。プロのスタジオでは当たり前ですが。

さらに仮に高級オーディオ・インタフェイスをつかって音の違いが出ていたとしても、それをYouTubeで聴いたらやっぱりほとんど違いはわかなくなるでしょう。

330万のアンプと9800円のアンプ(1)

2023年11月29日 16時00分12秒 | 音楽系
YouTubeをみていましたら、こんなのがありました。



これは驚きの内容です。330万のアンプの音は9800円のアンプと音が変わらないというのです。私が驚いたのは、こんなフェイクに84万視聴があり、コメントも賛成のものばかりだったことです。(まっとうなコメントもひとつふたつありました)

私の今までの経験では、今も使っているLuxman L-507fの音を初めて聴いたとき、それまで使っていた山水のアンプ(Luxmanよりは大分お安い品です)の音との違いに驚きましたし、カーオーディオでMINIの標準についているものをAudisonに変えたら音は様変わりでした。

一番驚いたのはドイツでの録音のときです。ドイツでは2回(2009年と2011年)録音しましたが、1回目と2回目とではマイクプリ以外は全て同じ、奏者も楽器も弦もマイクもセッティングも椅子の高さも、もちろんスタジオもエンジニアも同じでした。マイクプリだけ異なっていたのですが、1回目と2回目の録音でではかなり音が異なっていました。マイクプリを変えるだけでこれほど変わるものだと驚いたものでした。

このスタジオで使われている2つマイクプリはもちろんプロユースの高級品です。その2つの間でも音が相当変わるのに、数万円程度の安物に変えてみたら比較にならないレベルの変化はあったことでしょう。

このスタジオで使われている2つマイクプリはもちろんプロユースの高級品です。その2つの間でも音が相当変わるのに、数万円程度の安物を使ったとしたら比較にならないレベルの変化(優劣の)はあったことでしょう。

ヴィーガン・リュート

2023年11月28日 15時44分48秒 | 音楽系
機内食でベジタリアンやらヴィーガンに対応した食事が出るようになって久しいですが、学校給食でもヴィーガン食みたいなものが出た地域があるそうです。日本の仏教の精進料理みたいなものと思われがちですが、精進料理では葱や大蒜も怒りや淫欲がわき修行の妨げになるということで食べないそうです。ただ自分のあずかり知らないものであれば、食することもあるようです。修行の妨げになるかどうかが基準のようで、そういえばお寺に太鼓はありますよね。太鼓は修行の妨げになるどころか必要なものだし、太鼓の革は自分のあずかり知らないところで革になっているのでよろしい、という理屈でしょう。

ヴィーガンの場合は食に関することの他、より厳格なヴィーガン(エシカル・ヴィーガン)だと全てのものに対して動物由来のものを使わないそうです。動物由来の石油が原料の燃料で走る車は使っていいのかな?

ここで気になってくるのは(別に気にしなくてもいいのですが)ヴィーガンの人はリュートを習うことができるかということです。リュートということばの語源は「木」を意味することばだそうで、リュートは基本的には植物由来のもので作られているのでいけそうみたいですが、細かくチェックしていくと結構動物由来のものが使われています。まず確実にアウトになるのは象牙のナットとガット弦。

象牙は生きた象から採取は不可能で、殺してから採取したものなのでアウトです。代わりに使われる牛骨もだめですね。生きた牛や馬から腸をいただいてガット弦を作ることもできないのでガット弦もアウト。螺鈿細工も生きた貝から身を取ってその貝殻を使うのでアウトです。あと、塗装は大丈夫そうですが接着剤の膠は完全にアウト。塗装もセラックニスだと主原料はカイガラムシの分泌物を精製したものらしいのでアウト。

合成樹脂弦も元が石油で動物由来なので厳しいのかも。リュート以外の楽器で、例えば擦弦楽器の弓の毛、これは別に馬を殺す訳ではないのでこれはいいのかな。でも尻尾の毛を切り取られる馬が苦しんでいるんだったらアウトでしょう。

仏教は長い伝統があって、うまい方便的方策を取っています。お坊さんはリュートを弾いても問題ないでしょうけど、20世紀の終わり頃に登場した厳格なヴィーガンだとリュートを弾いてはいけないことになるんでしょう。ヴィーガン・リュートが必要?アホラシ。

音楽を語る(3)

2023年11月27日 20時03分13秒 | 音楽系
ゴーティエの出版物における奏法説明のところにはこんな下りがあります。

「文字の後にカンマがある場合、その弦を左手の指のどれかで引っ張るべきことを示している。すなわち文字の上に八分音符を表すリズムサインがあるときは一度だけ、四分音符なら2回、付点四分なら複数回、そして印のあるカデンツの終わりまでスラーによる装飾(トランブルマン)を行う。しかしそれぞれ作品の旋律とその動きの性質により装飾(アグレマン)の種類を扱ってよいことを心に留めておくべきである」(小川伊作訳をもとに中川が意訳しました)


これもそこそこ具体的には書かれていますが、でも実際はどうするの?というレベルになると、これだけの記述では弾くことができません。きちんと出来る専門家に教えてもらうなり、ちゃんとした演奏家のCDをよく聴くしか方法はありません。

ブサールの論文(VARIETIE OF LUTE-lessonsなどに所収)にも興味深い下りがあります。

「さてこの場をお借りして、皆様方にはリュートで使われる甘美な装飾音、レリッシュとシェイク2に関するルールを知っておく必要があると申し上げたいと思います。とは言うものの残念ながらそれらは口で言ったり書いたりして表すことができないということをご理解頂きたく、一番いい方法としては上手な人の真似をするか、自ら練習を重ねて習得するということになります」(拙訳)


装飾の仕方でさえ、これらの歴史的文献は一番肝心なところには何も答えてはくれません。ましてや音楽全体のことについてことばで表すことは全く不可能です。50年くらい前、リュートに完全に移る頃の短い期間でしたが、師事していたギターの松田晃演先生はこういうふうに仰いました「木というものがどんなものか正確に伝えるには木を見せて触らせるしかない」まさに至言でした。

音楽を語る(2)

2023年11月26日 19時07分39秒 | 音楽系
音楽について語るだけでもこんなにいい加減になりがちなのに、ましてや音楽そのものをことばで語るというのは、これは全く出来ません。音楽は非言語の世界だからです。

私はよくレッスンで「この音をもっと大きくして・・・」なんて言うことがありますが、これはあくまでも例え話、言わば方便です。「もっとその音を大きく」の後には必ずその実例を示すことにしていますが、こちらをつかんで欲しいところですが、実際は「大きく」という語を頭の中に満載させて弾く方が多いです。中には「大きく」と楽譜に書き込む人もいますがそういうことは絶対にやってはいけません。

昔の文献でも、もっとも知りたい肝心なところは何も書いてありません。それは書けないからです。バッハは装飾記号の弾き方をきちんと五線譜で書き表しているではないかと思うかもしれませんが、五線譜に書かれたとおり32分音符などを均等割に弾くものではありません。音符を使って装飾記号の弾き方を書いたのは、あくまで「こんな感じ」ということです。一番重要なところはそれをどう弾くかということです。試しにDAWを使って均等割の32分音符が連なる装飾を入力して聞いて見るといいでしょう。それでは味わいも何もないことがわかります。もっとも50年くらいのピアニストの多くはそんな風に弾いていましたが。

音楽を語る(1)

2023年11月25日 15時48分52秒 | 音楽系
音楽についてある程度はことばで語ることはできても、音楽そのものをことばで語ることは全くできません。

「私はヴァイスのソナタ第32番のクーラントがとても素晴らしいとおもいます。それを聴いていると自分がまるで大きな大きな伽藍の中にいるような錯覚を覚えます」

生成AIが書いたレベルの文ですが、なんとなくわかったような感じになります。ここがくせ者です。もちろんこんな表現はヴァイスの曲とは何も関係のないデタラメです。

ある作曲家の作品について「とても和声的ではあるが、さすが現代音楽の洗礼をうけただけに・・・」なんていうのを某ストリーミングサイトで見つけたことがありましたが、これもとても分かりやすいデタラメです。現代音楽の洗礼って?少しトーンクラスタを使ったからそういうの?なんて突っ込みどころ満載です。

文章の才能があり、かつ音楽が分かっていない人が書いた文章はくせ者です。まぁ基本的にそういうものは読まないことです。でも音楽を聴くときはまず解説からという人は一杯います。わかりたいという欲求が強いんでしょう。でも音楽と向き合って率直にその響きを受け入れてみてはどうでしょうか。いやいやそれでは他の愛好家との音楽談義についていけませんよ、なんて仰るかたもいるかも知れませんが、そんな音楽談義、向こうさんも大して分かってなくて、本で仕入れたことをしゃべっているだけですよ。真摯に音楽に向き合ってそこから何かことばを紡ぎ出すことができたら何と素晴らしいことでしょう。


右直事故

2023年11月24日 14時28分27秒 | 日々のこと
先日うちの近くの交差点でまた右直事故が起こりました。事故多発交差点です。右折する車が勢いを付けて直進してくる車に衝突したのです。

こういう事故を避けるには直進の車は交差点では少しスピードを落とすべきだし、右折する車はよく前方を見る位しか方法はありません。車の進行方向が交差するので、右直事故は必ず起こるのです。その可能性がある事柄は必ずそのことが起こる、ってナントカの法則というがありますが右直事故はまさにそれです。起こるべくして起こります。

その可能性をゼロにするには道を立体交差にすればいいのでしょうけど、現実的ではありません。車の方にセンサーをつけて直進してくる車や右折してくるくるまを素早くキャッチして衝突する前にブレーキ介入をする、あたりが現実的な方法でしょうか。

どっかの地方では右折しようとする車があった場合は必ず直進車が止まることになっている、というローカルルールがあるそうです。現行の道路交通の規則では直進左折優先ですが、右折左折優先ということになります。

これはとてもいいルールだと思うのですが、その限られた地域ならなんとか安定して実施できるでしょうけど全国一律今日から右折左折優先に切り替えるというのは難しいでしょうねぇ。交通流ルールを定めたお役人が最初からそう決めておけばよかったんですよ。でもこれ、交通量が多いところだとどうなるんでしょう。事故は減るけど渋滞は激増ということになるんでしょうか。

優勝記念パレード!

2023年11月23日 13時08分02秒 | 日々のこと
テレビで阪神タイガースの優勝記念パレードの様子を見て驚きました。ものすごい数の人です。よくテレビ報道である20人くらいのデモ行進を人数を多く見せるアングルで撮るヤツとは違います。正真正銘の人の大波!

大阪での阪神圧は違いますねぇ。そういや先日のリュート協会秋の会員コンサート(関西)で全員の演奏が終わった時。司会の方がなんやら仰っていました。「ふつうこういう発表会形式のコンサートではアンコールはないのですが・・・」なんかアンコールでもやるのかな?どなたが?と思いつつ用足しに会場を出てまた戻ってきましたら、ホワイトボードになんやら歌詞らしきものが書いてあります。

そしていきなり始まりました。六甲颪の大合唱です。会員コンサートに参加された方がみなさん立ち上がっての大合唱です。颪という字は「おろし」って読むんですね。六甲颪という歌の題名くらいは知っていますが、聞いたことももちろん歌ったこともない私は唖然として圧倒されるばかりでした。

リュートの発表会でこの圧力でしたから、今日の街頭パレードの圧はいかばかりか。名古屋が本拠地の中日ドラゴンズが日本シリーズで優勝しても、ここまではいかないのではないでしょうか。名古屋市内行われたで野球とは全く関係のない会合で、「それではみなさん最後に中日ドラゴンズの日本シリーズ優勝を祝って『燃えよドラゴンズ』を歌いましょう!」「おー!!!」とは多分ならないと思います。

いやぁ恐れ入りました。

※てっきり阪神優勝のパレードだと思っていましたが、ネットの記事をよく読んでみると、「兵庫・大阪連携『阪神タイガース、オリックス・バファローズ優勝記念パレード』」が23日、兵庫・神戸と大阪・御堂筋で同時開催された、とありますので、オリックスの分もあったんですね。オリックスバッファローズはもと近鉄バッファローズでしょうから、大阪が本拠地なのでついでパ・リーグ優勝と言うことでついでにやってあげたんでしょうか。いやよく分かりません。そういや大阪には南海とか阪急とかありましたが、かつてのこの両チームのファンはどうしたのでしょう。近鉄+阪急=オリックスで、南海ホークスは九州に行ったので、大阪のファンは宗旨替えを余儀なくされ、九州にいた西鉄ライオンズは西武ライオンズになって九州にいたライオンズファンも宗旨替え?なんやよーわかりません。




チラシ印刷出来!

2023年11月22日 21時55分58秒 | 音楽系
チラシの印刷ができあがり、マネジメントをしていただくミューズクリエートさんに送付して頂きました。本日さっそく確認して、自分用の分として1000枚ほど頂いてきました。


すでにQRコードのチケットサービスは始動しています!

印刷は9000枚刷りましたが、本番の日までに開催されるクラシック系のコンサートのプログラムに挟み込んでもらう予定です。あと小さな会とかコンサートは自分で持って行く予定です。私の生徒さんにも渡さないといけません。先日の大阪のリュート協会発表会は、印刷が間に合わずプリンタで印刷した物を用意しました。実は本印刷の方がはるかに安上がりなんですけどね。

印刷は滋賀県のWAVEさんにお願いしました。もう随分前から頼りにしています。一週間で納品というプランでお願いしましたが、3日で仕上げてくれました。両面カラー印刷で一枚あたり紙代込みで3円を切っていますから、いうことありません。

40年くらい前、まだB5のチラシの時代、大学の生協で1000枚1万円で印刷できると聞いて喜んでいました。片面モノクロです。10何年かくらい前まではカラー両面だと安いところでも6,7万はかかりましたが、今回1万枚近く刷って3万を切っていますのでいい時代になりました。もう地元の印刷屋に行くことはなくなりました。以前は懇意にして頂いている印刷屋さんがあり、直接伺って発注していました。そういうのもいいもんですが、今はネットで注文です。イラストレーターで完全な原稿を作る必要はありますが、まぁ時代は変わったもんです。


桑名は関西か

2023年11月21日 13時13分38秒 | ローカルネタ
私の日本語は桑名弁で、ある程度は標準語でしゃべるときもありますが、基本何もアクセントを変えないでしゃべることが多いです。そのためか初めての方は「関西ご出身ですか」なんていわれたりします。私は関西はもう少し西の方だという認識があるので、関西に住んでいるつもりはありません。ですから関西の方ですかという問いにはいいえと答えます。

私の感覚では関西というのは三重県の亀山より西だと思うのですが、なぜか関西じゃないところにJR関西線が通っています。関西線は亀山から大阪までさらに繋がっているので、そちらは実際に関西線でしょう。関西じゃないところを走る列車が関西線というのもおかしな話です。

鉄道では近畿日本鉄道も走っています。桑名は近畿地方なのかという言われると、「関西ちゃうわ!」みたいに明確に否定はしませんが、でも何か違う感じがします。近畿地方とはちょっと違う感じがする場所を近畿日本鉄道が走るのもなんか違和感があります。

言われてすなおにそうだと思う地域名は、中部地方とか東海地方です。これだと納得です。桑名のことばは西日本系のアクセントで、東日本系アクセントとの大きな境界は桑名市に流れ込む揖斐川下流にあります。揖斐川を渡ると(長良川も渡りますが)桑名市長島町は東日本系のアクセント地域になります。ウチから2kmも離れていないところに東西アクセントの大境界線があるのです。(有名な長島温泉がある長島町は現在は桑名市ですが、これは平成の大合併で桑名市になったばかりなのです)

桑名のことばはすぐとなりの四日市とも結構異なりますし、ましてや津、伊勢、奈良とか大阪、京都とはかなりアクセントが異なりますが、これは西日本系のアクセントのネイティブでないと分かりにくいかも知れません。関東の人だと十把一絡げに「関西」でくくられてしまうのでしょう。

桑名は太平洋側から見たら、西日本の東の最前線になるところです。しかし海や川を隔ててはいますが尾張名古屋とは特に近世以降は経済的文化的に密接な繋がりがあります。そういう地理的歴史的経緯から、桑名は関西ではなく近畿だとちょっと違和感、中部、東海ならOKみたいな、微妙というかある意味では多彩な立ち位置にある街です。