リュート奏者ナカガワの「その手はくわなの・・・」

続「スイス音楽留学記バーゼルの風」

ムギノワカフェでコンサート

2023年09月30日 17時26分59秒 | 音楽系
今月の9日にオープンしたばかりのムギノワで11月4日にコンサートをすることになりました。

ムギノワは桑名城のお堀傍に新しく作られ、一階がホテル(多分1組しか泊まれないと思います)二階がカフェで、コンサートをするのはその二階のカフェです。

ムギノワ

窓からは桑名城のお堀を下に長めることができる素晴らしいロケーションです。窓から見えるお堀はオリジナルの石組みが残っているとても貴重な場所です。石垣好きの人にはたまらない眺めでしょう。戊辰戦争で賊軍になってしまった桑名藩はお城の堀の石組みすらほとんど壊されてしまいました。その石垣の石は四日市港を建設するために使われました。

カフェから見えるお堀の石垣は、なんと四日市港に持って行かれず、オリジナルのまま残っているとても貴重なものです。

昨日実際にお邪魔して音響を確認してきましたが、天井が高く床や周りの素材が木質なのでとてもきれいに音が響きます。

早速A5サイズのチラシを作ってみました。



チケットご予約・お問合せ:ムギノワ090-2925-9871 (11:00-17:00 火曜定休)まで。

リュートの調弦の仕方(10)

2023年09月29日 23時35分03秒 | 音楽系
ガット弦を使っている人へ:

総じて張ったばかりの各メーカーのガット弦はナイロン弦より音程がいいものが多いです。(先述のG社のナイロン弦はとても音程は正確です)でもしばらく使っているとガットの1コース~3コースは音程がすぐに悪くなり音色もへたります。1コースだとケバも出てくるでしょう。その点合成樹脂弦は結構長いあいだ音程・音色の性能を維持できます。
性能の落ちたガット弦でいままで述べてきた方法をためしてみても、うなりをカウントができないし、そもそも調弦がうまくできません。ですから新しいものに交換して安定した状態でないと、先述のフレット位置の決定、日常の調弦はできません。

演奏中にチューナーなしで音程を微調整できないのなら、その前に安定性の高い合成樹脂弦を楽器に張って練習し、調弦の能力を底上げすべきです。

古くなりケバが出ているガット弦を使い音が悪くなっている上に、音が狂っているのを直していない演奏はあなたが描いているリュートの音とはほど遠いものです。ガット弦を使うのなら、チューナーなしで素早く弦を合わせられるようになってからでも遅くはありません。

ケバが出ているようなガット弦は使ってはいけません。ケバのせいで音質は悪い、かつ音程も調弦も狂ったままの演奏は、あなたがかつて合成樹脂弦で演奏していた頃の演奏よりずっとヘタに聞こえています。

ガット弦を使っているリュートだから音程の狂いは少しくらいはまけてほしい、というのはプロでもアマでも考え方として間違っています。大変残念ながら私はアマでもプロでもガット弦を使っての演奏会では皆さん狂いっぱなしでの演奏しか聴いたことがありません。そんなことを許容する日本のリュート界の一部ってレベルが低すぎませんか?そもそも「ガット弦を使用」なんて声高にいう時代はとっくに過ぎ去っています。

といって私はガット弦を使うなといっているわけではありません。ガット弦を使うのなら、よく調整された楽器で(もっともこれはどんな弦を使っていても必要ですが)マメに交換している高音弦を使い、素早く調弦の微調整ができる技術を得た上で、湿度や温度の変化が少ない場所で演奏しなければなりません。これはプロもアマも同じです。そうすればガット弦の良さは大きく発揮できると思います。私としては、ちゃんとした音楽ホールであれば湿度や温度は管理できるはずですので、そのうちリサイタルなんかでガット弦を使ってみようかなと考えなくはありません。

まだ暑い!

2023年09月28日 18時17分00秒 | 日々のこと
今日も暑かったです。桑名では35度超えの猛暑日になりました。暑さ寒さも彼岸までとはいいますが、もうそろそろお仕舞いにしてほしい所です。
もっとも夕方からは真夏みたいなことはありませんですが。

半年くらい前から楽器を座奏に変えています。立奏だと体の胸部と楽器の間に防湿の滑り止めを挟みますので、体が汗ばんでも楽器に汗が付くことはありませんが、暑い時期、座奏で体と楽器の間に何も挟まないと楽器に汗がついてしまうことがあります。暑いので薄着だということが一番の原因でしょうけど、もうちょっと気温が下がり、身につける服も厚くなればこういう心配は不必要になります。

楽器の塗装の仕方にもよるみたいですが、ラース・イェンソンのバロック・リュートはリブの塗装が温度・湿度に弱く、6年くらい前の春に日本に届いたのですが、その年の夏には少し体と楽器の間に挟んだタオルの柄がついてしまいました。いままでそういったことはなかったのですが。そもそもタオルを使ったのが間違っていて、防湿の薄いゴムを挟んでいればよかったということにあとになって気がつきました。

このゴムはなんでもウェット・スーツの素材だそうで、右膝にのせる滑り止めにも使っています。滑り止め効果は今まで使ったどの素材よりも強力です。

グリップゴム

来年の春にラースの新しいリウト・アッティオルバートが届く予定ですが、今度は同じ轍を踏まないようしないといけません。

リュートの調弦の仕方(9)

2023年09月27日 15時24分19秒 | 音楽系
それでは手順を踏んでいってみましょう。

1)うなりが3個~4個くらいになるよう2、3コース間を合わせます。
ここで全てが決まりますので、慎重にやってください。うなりを平均律の2個以上=メトロノーム60で2連符から4個くらい=4連符くらいにします。

2)3コースの5フレットと2コースの開放の音を比べます。
どちらも楽譜上はレの音ですが、3コースの5フレットのレと2コース開放のレとでは3コース5フレットのレの方が少し低いはずです。ここで音程の悪い3コースの弦を張っているとこの試みはなりたちません。

3)5フレットを平均律の位置からからブリッジ方向に移動して2コースと3コースの音程が完全に一致するにします。
フレットの移動といってもほんの少し、指板の上についている平均律の位置のボチの見え方がちょっと変わったかという程度です。1ミリもいきません。

4)5フレットを高くなる方向(ブリッジより)にずらした分、同じくらいの距離を他のフレットについても動かします。
1,2フレットはほんの少しだけナット方向(低め)に、4フレットもほんの少しだけナット方向(低め)、3フレットそのまま。6フレットは低め、7フレットは低め。いずれもほんの少し。それ以上のフレットはお好み応じて。実際に動かしたあとはオクターブが合うよう微調整します。どんなテンペラメントでもオクターブは合わないといけません。

まとめますと、

フレット 方向(←=ナット方向、→=ブリッジ方向)
1    ←
2    ←

4    ←
5    →
6    ←
7    ←

フレットを上記のように微修正し、調弦をします。手順は連載(5)で書いた方法と同じです。

リュートの調弦の仕方(8)

2023年09月26日 10時33分36秒 | 音楽系
では具体的にどうするかについて書いてみましょう。ドンピシャで「音程間隔は何セントです」と言ってくれる機械はないので、うなりを数えます。

完全4度は498セントですが、平均律では500セントなので、2セント分高く、「妥協」しています。

2-3コースの4度のうなりを平均律のうなりより気持ち多め、1秒間に3個~4個くらいにします。一度平均律できっちり2コース3コースを合わせてみてうなりの数を確認します。平均律は2個ですのでそれより気持ち多くなるようにあわせます。とても繊細な作業なので、音程が揺れる不良弦やペグがスムーズに動かない楽器ではこの作業は不可能です。そもそも不良弦の音程が揺れているその範囲内の調整ですから。

1秒間のうなり回数を数えるのは、ストップウォッチで計測するのではなく、メトロノーム60での2連符(8分音符2個)、3連符、4連符(16分音符4個)のリズムを覚えてそれに合わせます。


ブルーインパルス

2023年09月25日 15時12分09秒 | 日々のこと
昨日鈴鹿サーキットで行われたF1グランプリ決勝の景気づけにブルーインパルスがデモフライトを行いました。

ブルーインパルスが三重県に入った頃私は伊勢湾岸道路を鈴鹿方面とは反対方向に向かっていました。知多半島の某所に行くところでした。その某所に到着して食事をしていると津市に住んでいる知人からビデオクリップがLineで送られてきました。

これがそのビデオです。

ブルーインパルスデモフライト

撮影場所は知人の自宅からなので津市北部の鈴鹿市に近いところです。いやぁ美しいですね。いい天気なのでよかったです。デモフライトがあるとは全然知りませんでした。知っていたらもう少し上空を注意しながら車を運転したのですが。

愛知県の小牧あたりでこういったデモフライトをするとプロの市民数人が町の中で「反対」の行動を起こしてそれをテレビがよく取り上げるのですが鈴鹿市周辺ではそういう動きはなかったようです。そういう人たちって地域とはつながりが薄い人も入っているみたいだし少人数なのでテレビもそんなの取り上げる必要はないのにねぇ。


リュートの調弦の仕方(7)

2023年09月24日 13時08分02秒 | 音楽系
Lehmann氏に触発された訳ではありませんが、私も平均律に近いですがそれを気持ち修正して少しでも長三度がきれいに響くフレッティングを考案して試してみました。平均律は純正5度702セントを700セントにして、2セント分妥協しています。これを699とか699.5くらいの妥協にしたらどうか、という考え方です。

幸いなことにバロックリュートは前回の(5)で書きましたように1箇所(3コースと2コース間の完全4度)を設定したらあとはすべてオクターブ(こちらは純正8度)で合わせることができるというとてもシンプルな調弦です。4度がいくつもあるルネサンスgチューニングとか5度を3つ組み合わせるヴァイオリン系の楽器よりシンプルといえます。
要するにバロックリュートはこの完全4度をどのくらいにするかで基本フレッティングが決定できるのです。平均律なら500セントです。これを耳で妥協できるギリギリのところまで上げるわけです。(完全5度をギリギリまで下げるわけですから、完全4度は上げることになります)

かなり平均律に近いですが、違っているのは長3度は平均律よりきれい、完全4度・5度は平均律よりは少し劣る(濁る)けど、まぁ納得できるレベル、という感じのフレッティングになります。次回に具体的方法を書いてみます。これを始めから書かんかい!と言われそうですが。(笑)

リュートの調弦の仕方(6)

2023年09月23日 14時17分16秒 | 音楽系
Bradley Lehmann氏が2004年にバッハの調律法に関する論文を発表しました。それによると平均律の自筆譜の表紙ページに書かれているグリグリの図柄が調律の方法を表しているというのです。早速バーゼルにいるチェンバリストたちが反応して、彼の示唆する方法に基づいたチェンバロを使ってコンサート&レクチャーを学内のクライナーザールで開催しました。

興味深い内容なので、私も聴きに行きました。これがそのときに配布された資料です。



それによると1/6コンマ(698セントの5度)、純正(702セントの5度)、1/12コンマ(700セントの5度)と一箇所B-F間が704セントが組み合わされているということを表紙に描かれているグリグリの図柄が表しているというのです。

そういえば思い出すのがロバートダウランドのVRIETIE OF LUTE-lessons(拙訳「とりどりのリュート曲撰」)でリュート各コース間の音程を示している図がありますが、同じ完全4度でも間隔を広めにしてある部分があるということです。

単なる図柄ではなく結構深い意味があるということですね。

リュートの調弦の仕方(5)

2023年09月22日 17時43分42秒 | 音楽系
実はバロックリュートの調弦はとてもシンプルです。唯一重要なポイントは3コースと2コース間の完全4度をどう取るかだけです。これで全てが決まります。

具体的な手順(取りあえず平均律で合わせてみます。3コース2コース間は平均律=500ヘルツ):

3コースをラに合わせる
3コースの5フレットを2コースの開放に合わせる
2コースの3フレットの音を1コースの開放に合わせる
ここまでできたら、実質的にもう終わったも同然です。
あとは1~3コースの音に残りのコース全てをオクターブまたはユニゾンで合わせます。
右手の人差し指で弦をおさえ、親指と薬指で基音になる弦とと合わせるを鳴らして、左手でペグを操作するといいでしょう。

平均律は古楽っぽくない感じがするのか平均律が嫌いな人は一杯いるようですが、平均律の考え方はフレット楽器にとても合致していると思います。V.ガリレイのフロニモでは「均等な半音」について言及している記述がありますし、フローベルガーは平均律で調律していた可能性があるそうです。(音楽の音律:東川清一)

音程の微調整ができないような人が鍵盤楽器用のテンペラメントを引き合いに出したり何分の一コンマだなどとおっしゃってフレットの位置を変更し自慢げに話をするのは噴飯ものです。それは単なるファッションでしょう。そういう人に限って弦の選定も楽器の調整もできていません。もうちょっと勉強し、そして実践を重ねたいものです。

今村泰典講習会

2023年09月21日 23時53分20秒 | 音楽系
名古屋市内の会場で今村泰典講習会が開催されました。いつもは拙宅とか桑名市内で開催が多いのですが、今回始めて名古屋市内での開催に相成りました。

受講生は6名、聴講生が8名+チェンバロ製作家と私と今村氏で合計17名となかなかの盛況でした。受講生の内訳は、アーチリュート1名、バロックリュート2名、クラシックギター3名で、お若い方が多かったのはうれしい限りです。特にギターの3人はまだ高校生です。

途中40分ほどの休憩を挟み、受講生6名のレッスンが終わったあと、今回の「目玉」ともいうべき、テクニック特別講座がありました。



遅い時間だったので、高校生2名は帰宅、あと一人の高校生は父母付き添いです。

特別講座の内容は、主に右手の脱力のためのトレーニングで、50分近い講座のあと、皆さん異口同音に手が軽く動くようになったと仰っていました。これを毎日1時間続けると相当右手の動作が軽くなること請け合い、と今村氏の保証つきです。私は後ろから見ていましたが、右手ではなく左手の問題点が見えてきてしまいました。レッスンではなかなか後ろから見ることはないので、これは新しい発見でした。