(サマワでの自衛隊車両。asahi.com より引用。)
毛利衞さん以来、ものすごい危険業務である宇宙飛行から帰還して、精神的な危機に見舞われた人は一人もいない。彼らには国民の尊敬と歓呼があったからだ。かりに無名の人が宇宙飛行を命ぜられ、若田光一さんのように立てないほどの筋肉萎縮を起こして帰還し、それを誰にも知られず歓迎もされず、「はいご苦労さん、本給プラス危険手当1日2万4千円ね」と渡されてチャラにされたら、その人の精神状態はどうなるか分からない。
イラクのサマワにPKOとして派遣された自衛隊員たちの精神状態を追った、元自衛隊中央病院精神科部長・福間詳氏のインタビュー記事が朝日新聞にあった(2015-07-17 付)。 氏は正しくも、自衛隊員の精神状態は国民のコンセンサスに左右される、社会の理解が不可欠だと指摘している。
ベトナム戦争当時、アメリカ兵がベトナムで熾烈な戦いをやっているあいだに国内世論が反戦へと傾き、ベトナム帰還兵は歓迎されなかったばかりか人殺し扱いを受けたことで、少なからざる兵士が精神的に廃人のようになってしまった。国を背負って戦地に派遣された者には、お金ではなく熱烈な敬意が必要なのである。
(ところで、冒頭の2万4千円とはサマワに派遣された自衛隊員の危険手当の額である。)
※今日、気にとまった短歌
お風呂だけ楽しみなのと言う母の足に老医は包帯巻かず (埼玉県)いのまさし