(「うつ病」を経験した歌手のマルシアさん。NHK「今日の健康」より。)
子どもを亡くした母親が深く落ち込む。これは正常な反応であって、元来「うつ病」とは呼ばない。子どもを亡くしてにこにこしている母親のほうが、むしろ異常である。
一方、特段のストレスがないのに、自殺願望が起こるほどに落ち込む場合がある。これが本物の「うつ病」である。
ストレスに対する正常反応としての落ち込みと、「うつ病」による落ち込みをマスコミを中心として、世間は混同している。
これは、DSM(アメリカの精神疾患の診断分類マニュアル)の弊害である。DSMの診断基準では、子どもを亡くした母親も「うつ病」ということになってしまうからだ。(ズル賢いことにDSMは死別反応を別扱いにして、「うつ病」に入れないようにと但し書きに書いてあるが・・。)
(DSMの基本姿勢は、現在の病状だけを見てものを言うべきだ。過去のことは考慮に入れないという潔いものだった。それがPTSDを初め、過去を問うようになったのは、大いなる自己矛盾と言えよう。)
上のNHKの番組でも、DSMの診断基準が紹介されていた。マルシアさんは本物の「うつ病」だったと私は思うのだが、DSMの診断基準を「その通りだった」と肯定している。
こういうところから、「うつ病」に関する誤った理解が世の中に蔓延するのだ。
※私の俳句(冬)
かなたまで土蔵造りの雪の屋根
まあマスコミ云々はここで先生がおっしゃるまでもなく「うつ状態」と疾患としての「うつ病」を混同しているのでしょうが…
正直なところ本物の「うつ病」の原因はまだ分かっていません。
すべてを、ストレスのせいにできないことは明らかなのに、マスコミがそういう単純な方向で報道するのを苦々しく思っています。
大正時代の論文で恐縮ですが、うつ病者の病前性格について語られたことがあります。秩序に合わせようとする人にうつ病が多いとされています。当時は、模範軍人などがうつ病になりやすいとされた画期的な論文でした。(こういう性格を執着器質と当時呼んでいました。)
実際、そういう人には三環系の抗うつ剤が著効を示しました。
ところがDSMは現在目前にある病状から、すべての精神障害を診断すべきで、病前性格や成育歴は判断基準に入れてはいけないと宣言したのです。
その結果、SSRIが大流行しました。SSRIは「真正のうつ病」には効きません。その周辺の「うつ気分」に気を取られている人たちには効くかも知れません。
でも私は「本物のうつ病」にはやっぱり三環系の抗うつ剤が効くと主張したいのです。
正直なところ本物の「うつ病」の原因はまだ分かっていません。
すべてを、ストレスのせいにできないことは明らかなのに、マスコミがそういう方向で報道するのを苦々しく思っています。
大正時代の論文で恐縮ですが、うつ病の病前性格について語られたことがあります。秩序に合わせようとする人にうつ病が多いとされています。当時は、模範軍人などがうつ病になりやすいとされた画期的な論文でした。(こういう性格を執着器質と当時呼んでいました。)
実際、そういう人には三環系の抗うつ剤が著効を示しました。
ところがDSMは現在目前にある病状から、すべての精神障害を診断すべきで、病前性格や成育歴は判断基準に入れてはいけないと宣言したのです。
その結果、SSRIが大流行しました。SSRIは「真正のうつ病」には効きません。その周辺の「うつ気分」に気を取られている人たちには効くかも知れません。
でも私は「本物のうつ病」にはやっぱり三環系の抗うつ剤が効くと主張したいのです。
DSMの診断基準では、むかし神経症性うつ状態と呼ばれていた病態や、境界型パーソナリティの人のうつ状態も、みな「大うつ病」に数え得ます。
薬の治験はDSMの診断基準で行われますから、本物のうつ病の特効薬である三環系抗うつ薬と、本物のうつ病には効かないSSRIとで、効き方に有意差はないという結論になってしまうのだと私は考えています。