どうしても本を買わなければならない時だった。先延ばしにしてもいずれ買わなければならない。買う本は何でもよいのだ。それでも買うとなると、少しでも「よい」ものを選びたいというわがままが働く。そうして本屋をはしごした。大型の書店の棚が手っ取り早い。流行りの本の他にも、表看板に加えられるひとひねりの本が案外良かったりする。けれども今日はそんな都合の良い本はなかった。又吉直樹の最新刊を並べ、脇を本屋大賞候補で固め、『セガVS任天堂』を挿し色に添えたところで見る気を失い外に出る。ビル一つ丸ごと本屋なので上の階に行けば新しい本はまだある。知らない本もあるだろう。ただ文句の並ぶ背表紙を見比べるだけで目眩がするようだった。
仕方ないのでいくつか買ったものの落ち着かない。『セガVS任天堂』の上下巻を買いそろえて近くの喫茶店でページを捲るも落ち着かない。冒頭からもう肌に合いませんよと買った化粧品が肌を刺すときの刺激を覚えて本を閉じた。二十年以上前のセガのビルに入った辺りで、まだ一章すら終わっていなかった。当面寝かせておくことにして次の本を手に取る。薄い詩集が三冊、私はページを繰る手が震えていたのでもうそれ以上本に触ることはやめた。本に何も罪はないのだが、ときどきこういうこともある。本が欲しい。何の本かはわからないが本が必要だった。
街をふらつきながら最後に百円の古本を二冊買った。ほどよく黄色がかりやわらかくなった岩波文庫のページを淡々と読んだ。電車を降りてその日を終えるころには『本朝二十不孝』を読み終え、何とはなしに晴れた気分で寝床に着いた。注はほぼすっ飛ばしたがもういい、私は読んだんだ。とにかく本を買って読んだ。それだけの日だった。
仕方ないのでいくつか買ったものの落ち着かない。『セガVS任天堂』の上下巻を買いそろえて近くの喫茶店でページを捲るも落ち着かない。冒頭からもう肌に合いませんよと買った化粧品が肌を刺すときの刺激を覚えて本を閉じた。二十年以上前のセガのビルに入った辺りで、まだ一章すら終わっていなかった。当面寝かせておくことにして次の本を手に取る。薄い詩集が三冊、私はページを繰る手が震えていたのでもうそれ以上本に触ることはやめた。本に何も罪はないのだが、ときどきこういうこともある。本が欲しい。何の本かはわからないが本が必要だった。
街をふらつきながら最後に百円の古本を二冊買った。ほどよく黄色がかりやわらかくなった岩波文庫のページを淡々と読んだ。電車を降りてその日を終えるころには『本朝二十不孝』を読み終え、何とはなしに晴れた気分で寝床に着いた。注はほぼすっ飛ばしたがもういい、私は読んだんだ。とにかく本を買って読んだ。それだけの日だった。