喫茶店を出ると三時半を過ぎていた。電車が混みだした。部活帰りの学生が背負う種々雑多な鞄に押されて人数こそまばらだが車内は狭い。混みどきの山手線のように席のない車両があればよいのに、とも思うが、それはそれで席のある車両が混みそうだ。座って鞄の中から本や携帯ゲーム機を出し入れすると期待を含んだ眼差しが刺さる。次の駅で降りるのだろうか、降りてくれ、そして席を空けてくれという目つきが上から降ってくる。あるいは下りないのだろうか、どちらだろうか、と、何も悪さはしていないのに胡乱に見られているようで居心地は悪い。
歩いてどこかで一杯コーヒーをいただくだけなら近所で十分なような気もするが、知った顔や往復する人の多さに息が詰まりそうになるので、もう少し閑散としたところに出たくて電車に乗る。街が離れてゆく。足を動かさずにどこかへ運ばれてゆく。
ただ三十分ほどの手間をかけて街を離れ、着いた先もまた人が行きかう街なのだけれども、喫茶店へ向かうまでの川べりの道は人通りもなく息をつける。ただ、そこまで足を運び静かな時間を得たところで、また三十分をかけて騒がしさに戻らなければならない。それが帰るということだ。散歩を終えながらバスまでの時間つぶしにチェーンのファストフード店に入り、ターミナルのタクシーを見比べながら日が暮れていった。
歩いてどこかで一杯コーヒーをいただくだけなら近所で十分なような気もするが、知った顔や往復する人の多さに息が詰まりそうになるので、もう少し閑散としたところに出たくて電車に乗る。街が離れてゆく。足を動かさずにどこかへ運ばれてゆく。
ただ三十分ほどの手間をかけて街を離れ、着いた先もまた人が行きかう街なのだけれども、喫茶店へ向かうまでの川べりの道は人通りもなく息をつける。ただ、そこまで足を運び静かな時間を得たところで、また三十分をかけて騒がしさに戻らなければならない。それが帰るということだ。散歩を終えながらバスまでの時間つぶしにチェーンのファストフード店に入り、ターミナルのタクシーを見比べながら日が暮れていった。