いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

近代化の功罪の1年。 merits and demerits of of modernism

2010-12-11 19:37:07 | 日記
 (1)クロスカップリング(有機化合物の合成)で今日ノーベル化学賞を授賞した根岸さんは、こ
の研究の応用学で将来地球温暖化、食糧問題の解決につながる研究果実を目指すことが出
来ると早くも次なる研究目標を述べている。
 こういう見識、能力もあり研究心旺盛な人が先端科学技術を駆使すれば、おのずとゆるぎな
い革新的な果実が生まれる。

 一方今年、高度な科学技術を見識もなく「ねつ造」のために駆使した社会正義(social
justice)維持のパラダイム(paradigm)となるべき検察の捜査能力劣化による誤審、ねつ造が
相次いで起きて、国民の信頼を根底から失墜させた1年だった。
 科学技術(DNA鑑定)を導入した近代捜査も、それを応用する検察、警察の資質、能力に高
い思想、見識、水準、能力が維持されなければ、それに頼り切った安易な体質が初期の地道
で継続的な証拠捜査を放棄して相次ぐ誤審、ねつ造へと突き進んだ1年だった。

 (2)足利事件で死刑判決が確定した受刑者の再審査で、当時の捜査段階での「精度」の低い
「DNA鑑定」と「自白」が決め手となった判決が、裁判では無実を主張する受刑者サイドのその
後の「精度」の向上したDNA再鑑定による地道な努力の結果、現場に残されたDNAはまったく
別人のものと判明しての無罪逆転判決となって、真実は闇の中のままだ。
 ここでは、検察の誘導尋問、恫喝による自白強要の安易な見込み捜査手法が痛烈な社会
批判を浴びて問題化した。

 (3)大阪地検特捜部が、郵便料金不正利用事件では自らの見込み捜査の間違いを正当化す
るため、事実を「ねつ造」しての組織ぐるみの犯罪構成要件によるパラドックス(paradox)として
の事実隠し犯罪行為にまで及んで、検察の信頼を根底から失墜させ、現在、地検特捜部の有
り様、存在意義について第三者機関で検討が開始された。
 社会正義のパラダイム(paradigm)となるべき検察が、事実証拠に迫る地道な努力よりは見
込み捜査による結果重視主義で最後はつじつま合わせの事件「ねつ造」という、あってはなら
ない非条理、非道に足を踏み込んでいた。

 (4)そこへきて、その検察体質が司法(裁判)、裁判員からも痛烈な批判を受けた。昨日の鹿
児島地裁で行われた強盗殺人事件の裁判員裁判で、検察の死刑求刑に対して司法、裁判員
は「無罪」を言い渡した。
 検察の捜査「精度」に対して、「この程度の状況証拠で死刑と認定するのは許されない」と、
検察捜査、証拠、立証能力に手厳しいものだった。

 検察の決め手は、事件現場に残された被告のDNAと指紋だった。司法(裁判)は、弁護側が
検察のねつ造と主張した被告のDNA、指紋は本人のものと認定はしたが、強盗殺人事件概要
から見て、付着部位に整合性が極めて不十分で(凶器には被告の指紋はない)、捜査段階で
も基本となる証拠採取現場の写真撮影もしない等検察、警察捜査の「精度」に疑問を投げか
けての証拠不十分での「無罪」判決だった。

 一方、司法(裁判)は、被告が事件現場には一度も言ったことがないという主張に対しては、
DNA、指紋は本人のものであり、被告は本件にはかかわらずとも現場に立ち入ったと認定し
て、その点では被告は「ウソ」をついていると断定している。

 (5)ここ1,2年の検察、警察の捜査手法に対するあるいはそれ以前の社会正義にもとる捜査
能力の劣化に対する司法(裁判)、裁判員からの痛切、痛烈な検察批判の意思表示であった。

 今年1年、社会は経済不況の回復も鈍く、政治も国民の信頼に応えられずに、社会正義のパ
ラダイム(paradigm)となるべき検察、司法も国民の信頼を相次いで損なってきた。
 高度な先端技術開発に裏打ちされた近代化が、応用する側の見識、思想、水準、能力によっ
て功罪(merits and demerits of modernism)織り成すことを、学術、政治、経済、社会、司法の
場でそれぞれ痛切に実感した1年であった。

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