(1)プーチン大統領が隣国友好国のベラルーシに戦術核(tactical nuclear weapon)を配備すると表明した。プーチン大統領は米国もNATO加盟国に戦術核を配備しているとして「何も変わったことではない」と普通を強調している。
軍事大国露のプーチン大統領が米国もそうしているのだから何も変わったことではなく、問題はない発言をしているのは、世界の安全保障、平和に責任、影響を持つ政治指導者としてあまりに軽い見識、判断、発言というべきものだ。
(2)むしろ米国のそうした戦術核の域外配備を批判して撤去を求める主張をすべきところを、米国もそうしているのだから露としても対抗して域外ベラルーシに戦術核を配備するでは、軍事大国露の政治指導者としてあまりに不適切、適格性を欠く。
露とベラルーシは隣国同士であり、あえて露の戦術核をベラルーシに配備する意味はなくウクライナ軍事侵攻に圧力を加えるためのものであり、米国をダシにした大ソ連邦構想実現のプーチン流の軍拡、領土拡大主義でしかない。
(3)露によるウクライナ軍事侵攻は1年を経過してウクライナの反抗でこう着状態がみられて、プーチン大統領としては当初の目論みが外れて兵役強化による兵員増強、軍司令官の交代が報じられて思惑違い、あせりがみられる。
プーチン大統領が追い込まれる状況の中で危惧されるのはたびたびウクライナへの核攻撃の可能性を示唆していることであり、ベラルーシへの戦術核配備で「おどし」(threat)をさらに現実のものとして圧力をかけて戦況を好転させたい意向がみられる。
(4)現実論でいえば露の戦術核がベラルーシに配備されなくても、あってはならないことだが露領域から核攻撃することの方がより現実的であり、ベラルーシ戦術核配備はプーチン大統領の隣国ベラルーシを巻き込んだ無責任な責任転嫁論でもある。
戦術核配備を含めて露の核攻撃使用に巻き込まれることになるベラルーシとしては、これまで友好国として露のウクライナ軍事侵攻に参加するよう求められてきたがこれを拒否しており(報道)、露のベラルーシ領内への戦術核配備についてどう判断するのか、あってはならないことだが仮に戦術核攻撃使用がベラルーシから実行されることになれば国際的非難、制裁をどう考えるのか、さらなる最高難度の政治判断に迫られる。
(5)プーチン大統領としては露領内から使用可能が現実的な戦術核を隣国友好国のベラルーシにあえて配備する「おどし」がウクライナ戦争の打開につながるとみているのか、世界の安全保障、平和に責任、影響を持つ軍事大国露の指導者としてプーチン大統領の器の小ささ(small capacity of putin)がみえて、自ら立場を苦しくしているようだ。