ある日、ヤナギダは、
「世界中に ヤマイヌがヒトの子を育てたという記録があるが この列島では そういうことはなかった」
言い切った。
おそらく数十名の弟子を動員して調べ尽くしたんだろう、ところが、クマクス、
「チッチッチッ これだから シロウトは こまる」
「うっうっうっ」
「まあ まあ」
「ないからないんだ」
南方熊楠、一冊の古文書を、
「バサリ」
そして、
「ここを ごらんなさい」
そこには、しっかりと、その事実が記述されていた、
「ギャフン」
間引かれた子供を育てた母イヌがいたようだ、
「ほかにも あったかもしれない」
だが、この子供、そんなに長くは生きられなかったようだ、それでも、この山イヌのやさしさはどうであろう、
「神社を作る人の気持ちがわかる」